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呪文の癖

研究室に一人。

今日は、エルンストは別の仕事で来れない。


私は、帳面を、いくつも机の上に広げていた。


一冊ずつでは、見えなかったもの。

並べて、行き来して、初めて浮かび上がるものがあるかもしれない。

そう思って、実験ができない時間を、見比べることに充てていた。


沈石粉が描いた線を、順に目でなぞっていく。


——それだけの作業。


けれど。


「……」


視線が、止まる。


暖房用魔石。

少し前に記録した頁と、その隣。

用途も型も近い、別の個体。


流れの輪郭が、似ている気がした。

枝分かれの数も、集束の位置も一致しない。

それでも、全体の向きと、力のかかり方が、どこか重なる。


偶然だろうか。


別の頁を開く。

さらに、もう一つ。


今度は、ひっくり返せば、ほぼ同じ形になる。


「……?」


用途が同じ。

形状も近い。

なら、似ていても不思議じゃない。


そう思いかけて、欄の端に視線が引っかかった。


——呪文名。


同じだった。


私は、近くに置いてある別の帳面を引き寄せた。

照明用、防湿用、簡易加熱。

用途も形も違う魔石。


それでも、同じ呪文が使われているもの同士は、流れの“癖”が似ている。


完全に同じではない。

石ごとに、細部は違う。


それでも。


「……決まった形を、はめ込んでる?」


流れが、その場その場で組まれているというより、決まった形を、呪文で石の中に重ねているように見える。

逆に、似た形状の魔石でも、呪文が違えば、全体の流れは別物になる。


——それって、本当に無理が出ないのだろうか。


魔石の状態や個性を細かく見ずに、呪文の形を押し付けているような違和感を感じた。


——このことは、後で報告しておこう。


私は違和感を感じたまま、帳面を閉じた。

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