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流れを問われる

右手の指には、白い布が巻かれている。

市場で応急手当てをしてもらい、戻ってきてから、母にもう一度、きつく巻き直された。


動かすと、まだ熱が残っている。

痛みは、はっきりある。


今は工房の奥、作業台から少し離れた椅子に座っている。


近くで、ルーカスが立っていた。

何も言わず、ただ、私と包帯を交互に見ている。


市場での噂を聞いて、見に来たのだという。


無事だと分かっても、帰らなかった。


ルーカスは、こちらに手を伸ばそうとして、途中で止めた。

指先が宙に残り、何事もなかったように腕を下ろす。


「……まだ痛む?」


静かな声。


「うん。少し」


ルーカスは、それ以上聞かなかった。


危険なことをして叱る目ではない。

それでも、ルーカスの視線は重かった。


そのとき、扉がノックされた。


「入るぞ」


低い声。


エルンスト。


扉が開き、背の高い男が入ってくる。

外套を脱ぎながら、視線が一直線にこちらへ向いた。


私。

包帯。

そして——ルーカス。


ルーカスは一歩下がり、壁際に寄った。

立ち会う、という意思表示だった。


「治療はしてもらったようだな。回復するまでは動かさないように」


「…はい」


私は、目を伏せた。

叱責ではないのに、裁かれているような気がした。


エルンストが、私の前の椅子に座った。


「単刀直入に聞く。爆発寸前まで行った魔石を、魔法以外の処置で止める方法はないはずだ。どうやった?」


言葉に詰まる。

エルンストはその様子を見て、言う。


「魔石には穴が開けられ、そこに沈石粉が詰め込まれていた。しかも、大量に、だ。」


顔を上げて、なんとか言葉を口に出す。


「あの、詰まりが、そこにあって…力が集まっている気がして」


呼吸をしていなかったのか、途中で息が苦しくなって、言葉を切った。

息を吸いこむ。


「穴を開けて、流そうと思ったんですけど…ダメそうだったので。…沈石粉を、たくさん入れたら流れるかな、と思って」


沈黙。


「…君は、流れが見えるのか?」


エルンストが訝しげにこちらを見る。


「流れ?」


ルーカスが、我慢できないように口に出した。


エルンストは、ルーカスをちらりと見る。


間があく。

その後、息を吐いた。


「魔法の本質は1種類だという話を聞いたことがあるか?」


私とルーカスは首を振った。

エルンストはそれを見て、頷いて続ける。


「魔法とは、世界全体を循環している魔力の流れを方向や密度、速度で制御し、さまざまな出力で使用しているものだ。

魔法使いや魔石は流れの通り道だ。魔法使いは、自分の中に流れる魔力を呪文で制御し魔法を使っている。

魔石も同じように、魔石内部を魔力が通り、その流れを魔法使いが呪文で制御していると言われている。

ただ、魔石の流れを見たものはいないから、真偽は定かではない。」


私は、そこで慌てて口を挟んだ。


「あの…沈石粉に少し油を含ませたら、魔石の上で、動くんです。それが…流れだと思うんです」


エルンストが少し眉をあげ、考え込む。


「では、この魔具でやってみてくれないか」


そう言って、胸元から、魔石が露出している計測用の魔具を取り出した。


私は頷いて立ち上がった。

同時にルーカスが前に出てくる。


「フィーネは手を怪我してるだろ。俺がやる。フィーネは指示して」


ルーカスは工具袋を素早く掴んで、沈石粉と油を取り出した。


「…でも」


「沈石粉はフィーネのところにたくさんあったから、触ったところで今更なんにもならないよ。それに、別に今は魔法を使うわけじゃないだろ」


ルーカスは私が思ったことに答えた。


エルンストも言う。


「実施できるならどちらでも良い」


私はそれに頷いた。


「ありがとう、ルーカス。お願いする」

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