第47話 聖奈を追って
僕たちが一階のバスケコートを見ていると、両校の選手達が出てきて試合が始まる。
うちの高校はバスケの強豪校と聞いたことがあるし、その中で背番号10番を貰っている葵さんの実力は相当なものなのだろう。
そう考えていると、早速葵さんにパスが回ってきた。
彼女はボールを受け取ってすぐに素早くドリブルをして相手選手の間を縫うようにして突き進んでいく。
「……すごいな」
語彙力が無いと自分でも呆れてしまうけど、本当に葵さんはすごかった。
全力で走りながらドリブルをして、相手選手にボールをとられないように躱しながらゴールへと近づいていく。
次の瞬間には華麗なレイアップを決めて、うちの高校に先制点をもたらしていた。
「あの金髪の子凄くうまいね」
「ああ。あの子が僕の知り合いで藤波葵さんだよ。学校で孤立してた時に助けてくれたんだ」
「ああ、あの子が。前に付き合ってた子も金髪だったし、ひろくんって金髪の子が好きなの?」
「浩人……そうだったの?」
好奇心旺盛で僕に質問を投げかけてくる莉乃姉さんとなぜか僕を侮蔑の眼差しを送ってくる。
本当に僕が何をしたというんだ。
今日の聖奈は普段と様子が違う気がする。
体調でも悪いのかな?
「違うから。好きとかでもないし。もう、恋愛系は当分こりごりだって」
「それもそっか」
「浩人、後でお説教」
「なんで!?」
僕たちがこんな風にふざけている間も葵さんたちは着々と点を決めていく。
気が付けば点差は二桁になっていた。
「でも、本当にあの金髪の子凄いね。群を抜いてるっていうかさ」
「聖奈もそう思うか? なんというか、動きが違うよな。早いって言うかなんて言うかさ」
「うん。瞬きすると相手選手を抜いてる感じ。どうやって動いてるんだろ?」
「お姉ちゃんにはなんもわかんないな~すごいってことはわかるんだけど。シュート打つときの姿勢めっちゃ綺麗だし」
先ほどから葵さんは休むことなくドリブルを続けているし、シュートもたくさん打っている。
だけど、独りよがりなプレイというわけでもなくしっかり周りを見たプレイをしていた。
空いている選手にパスを出したり、自分からボールを取りに行ったり。
そうこうしているうちに第一クォーターが終了した。現時点で点差は24対10。
「かなり点差が開いたね」
「うん。浩人が応援しに来た子めっちゃ強いね」
「お姉ちゃんもあんな風に体が動かせたら楽しいんだろうな~」
流石は葵さん。
普段から欠かさず努力をしているだけのことはある。
本当にうまいし、周りが見えている。
僕がそんな風に思考を巡らしていると、休憩時間にベンチに向かっているであろう葵さんがこちらに向かって微笑みかけながらピースをしてきていた。
「相変わらず、明るい子だな」
僕自身がそこまで明るくないこともあって、葵さんのああいう元気で明るいところは素直に好感が持てる。
僕は自然と自分の頬が緩むのを感じながら、ピースを返す。
「……本当に仲がよさそうだね」
「そうか? 積極的に関わるようになったのはここ最近なんだよ」
「へぇ~にしては妙に仲がいいような気がするけどね! ちょっと私外の空気吸ってくる」
聖奈はそう告げて足早に一階に降りて行った。
一体どうしたって言うんだ。
本当に……
「ひろくん、追いかけてあげて」
「う、うん」
少し呆れたような莉乃姉さんに背中を押されながら僕は聖奈の向かった方に小走りで向かう。
この状況はなんだかよくない。
喧嘩とは違うけど、なんだかすれ違っているというか拗れている。
そんな感じがする。
「こういう時に取るべき行動なんて決まってるよな」
何が良くなかったか。
何が聖奈を不快にしてしまったのかを教えてもらう。
わかってあげられるのが一番いいんだろうけど、僕にはそれができないから。
真正面からぶつかって聖奈と向き合いたい。
彼女との縁は手放したくないから。
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