第42話 夏休みの計画を
「やっぱり、バレちゃうんだ。浩人も私のことをよく見てるね」
「ま、たった一人の幼馴染だからね」
聖奈が僕のことをよく見てくれているように、僕だって聖奈のことをよく見てる。
彼女が頑張っている時の顔も辛そうな時の顔も楽しそうな顔も。
かなり長い時間一緒に居るから大体何を考えているのかわかる。
それは彼女も同じだろうけど。
「悩みとかじゃないんだけどね。最近浩人がどんどん遠くに行っちゃうみたいで拗ねてただけ」
「遠くになんか行かないさ。僕はできる限りいつまでも聖奈と一緒に居るからさ」
「……そう言う割には前に彼女を作ってたみたいだけど?」
それを言われると中々反論できない。
一時の気の迷いとまでは言わないけど、確かに聖奈を放って勝手に付き合っていたのは事実だ。
痛い目を見たから当分恋愛する気はなくなったけどな。
「それはその……ごめんなさい」
「別に怒ってるわけじゃない。今はこうして戻ってきてくれたわけだし。でもね、その、今度からは付き合うにしても相談してほしいかな」
「わかった。肝に銘じておくよ。というか、そんなことで怒ってたのか?」
「私にとってはそんなことじゃないの。浩人がいなくなったら私はどうやって生きて行けばいいの」
流石に言い過ぎだとは思うけど。
僕自身聖奈と一緒にいる時間は嫌いじゃないし、当分恋愛をする気もない。
だから、聖奈が一人で生活できるようになるまで……いや、聖奈が僕の存在を必要としなくなる日まで一緒に過ごせたらと思う。
料理を覚えたり、家事を覚えたりしたら案外すぐに僕の存在なんて必要じゃなくなると思うけどね。
「僕がいなくても生きていけるさ。聖奈はさ」
「そんなことないよ。私にとって浩人の存在はかなり大きいってことを忘れないでいてね。昔から君は自己肯定感が低いんだから」
「わかった。聖奈も何か悩んだら相談してくれ。僕たちは幼馴染なんだからさ。変に気を使って隠すより相談したほうが色々うまくいきそうだし」
「それを浩人がいうのはどうかと思うんだけど」
確かに聖奈の言う通りだ。
僕が最初に学校での問題を隠していたわけだし、どの口が言うんだと言われたら黙るしかない。
でも、今回の一件で変に隠したほうがより一層心配させるって事に気が付けたから今度からはしっかり相談しようと思う。
◇
「ただいまぁ~疲れたよぉ」
「おかえり莉乃姉さん。仕事の方はどうだった?」
「別にいつもと変わらない出張だったよ。案件先の人と話したりそんな感じ。普段あんまり外に出ないから一気に疲れちゃった」
時刻は既に午後九時を過ぎている。
ここまで遅いのは久しぶりな気がするけど、莉乃姉さんの顔を見れば仕事は順調であったことが分かる。
その点は心配ないんだけど……
「莉乃姉さん夕飯は済ませてきた?」
「いいや、時間なくて。なんも食べれなかったんだよね」
「やっぱりね。何か軽く作ろうか?」
「じゃあ、お願いしようかな。何作ってくれるの?」
何を作ろうか。
冷蔵庫の中身はちゃんと確認したし、具材も充実してる。
どんなものでも作れるけど、その中で僕が選んだのは……
「オムライスでいい?」
「うん! ひろくんが作るオムライス本当に美味しいから嬉しいなぁ。最近作ってもらってなかったし」
「ん。じゃあ、ちゃっちゃと作るね。莉乃姉さんは風呂でも入ってきなよ。温めておいたからさ」
莉乃姉さんからは事前に帰ってくる時間を教えてもらっていたのでそれに合わせてお風呂を沸かしておいた。
帰ってからお湯が沸くまで待つのは時間の無駄だしね。
「ありがと! 流石はひろくん気が利くね! いいお嫁さんになれるんじゃない?」
「僕は旦那さんになると思うんだけど? 性別変わってない?」
「じゃあ、いい主夫になるね!」
「どうだろうね。それよりもほら。入ってきなよ」
莉乃姉さんが浴室に行ったのを確認してから僕はキッチンに移動する。
夏休みに入って時間もたっぷりできたし、そろそろ本格的に配信活動の事を考えたい。
お風呂上がりに莉乃姉さんに相談に乗ってもらおう。
莉乃姉さんは大人気のVtuberだし、いろんな経験をしてるだろうから相談相手としては申し分ない。
それどころか最良の相談相手と言って差支えないだろう。
「次はやっぱり、ゲーム配信がしたいよなぁ」
桔梗さんもゲーム配信をしていたし、視聴回数もすごい事になっていた。
それを目指してというわけでもないけど、最初のうちはいろんなことに挑戦していきたい。
なんなら夏休みの宿題をみんなで終わらせる配信なんかをしてみてもいいのかもしれないな。
「なにはともあれ、何とかなってよかったぁ」
学校のこともそうだし。聖奈とのことも。変にすれ違う前にちゃんと相談できて本当に良かった。
「ひろく~んバスタオル取ってくれない? 忘れちゃって」
「わかったから絶対に風呂場に居てね? 脱衣所に置いとくから」
「りょ~かい。ありがとね」
バスタオルを持っていって再びキッチンに戻る。
風呂から出てくる時間を見計らってオムライスを完成させてテーブルの上に置いておく。
「ああ、そう言えば三人でどこかに遊びに行く計画も立てないといけないんだった。ついでに相談するか」
僕はそんなことを考えながらオムライスを作るのに使った食器を洗うのだった。
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