第37話 頼れる藤波さん
「それで? 話って何なの?」
悩んだ結果、僕は藤波さんに頼ることにした。
少し話をしたいとメッセージを送ると前の公園に来てとい言われたため、僕たちは二人でバスケをした公園に来ていた。
「いや、今日の昼に話した信憑性のある噂の件なんだけどさ」
「流石にまだ進展はないよ?」
「違う違う。藤波さんの方の進展を望んでるんじゃなくて、まずはこれを聞いてほしいんだけど」
小田にも聞かせた理沙の発言の録音データを藤波さんにも聞いてもらう。
聞き終わってすぐに藤波さんは顔を上げて、僕の顔を覗き込んでくる。
可愛いけど、いきなりこんなに見つめられるとドキドキしてしまう。
「これ、今日撮ったの?」
「うん。放課後に呼び出して話をしたらこんな発言が撮れてさ。この音声と一緒に噂を流せれば僕の悪い噂は払拭できるんじゃないかと思って」
「なるほどね。それで私には女子にこの音声と噂を流してほしいって事?」
「その通りです。嫌な役回りをお願いするようで心苦しいんだけどお願いできる?」
正直に言ってしまえば、こんな得のないない損な役回りを頼んでしまうのは心苦しくて仕方がないけど、この状況で頼れるのが藤波さんしかいない。
プラスして、藤波さんが協力してくれるかしてくれないかで夏休み前にこの問題が片付くか片付かないかが決まるといっても過言ではない。
「それはもちろんだよ! 天雲くんは何も悪くないわけだし。ちゃんと協力するからさ」
藤波さんは笑顔でサムズアップしてくれている。
ありがたい事この上ないけど、何かお返しをしたい。
「本当にありがとう。藤波さん」
「別に気にしないでいいよ。でも、一つ私のお願いを聞いてもらっても良いかな?」
「僕にできる範囲の事なら何でもするよ」
「何でもって……そんなことを言ってもいいの? やばいお願いをしちゃうかもしれないよ?」
藤波さんに限って倫理観に反したことをお願いすることもないだろうし、そう言った点では藤波さんは常識人だと思う。
多少、大変な事をお願いされてもできる限りこなす気ではいる。
「藤波さんならそんなに変なお願いをしないことくらいはわかってるし、何よりも僕は結構大変なお願いをしてる側だからね。さっきも言った通り僕ができる範囲で最大限藤波さんのお願いを聞くよ」
「ふふっ、天雲くんは結構私のことを信用してくれてるんだね?」
「学校で僕があんなに酷いことを言われてるのにそれでも関わってくれるんだから、信用しないわけがないよ。あの状況の僕に関わるメリットなんてないのにさ」
学校ののけ者に関わってメリットなんて無いだろう。
むしろデメリットしかない。
なのに普通に接してくれた人を疑ったりするほど腐った人間にはなってない。
「人と関わるのにメリットデメリットなんて考えないよ。私は関わりたい人と関わるし関わりたくない人とは関わらないからね」
「そっか。なんか、ありがとね」
「じゃあ、お願いを聞いてもらおうかな~」
藤波さんはニコッと微笑んで首を傾げる。
満月の月明かりが彼女を照らす。
息を飲むほどに綺麗な金髪が月の光を反射してより一層美しさが増す。
「今度から私のことを名前で呼んでよ! 天雲くんとは推しの話とかいっぱいしたいしさ!」
「……そんなことでいいのか?」
「だって、こうでも言わないと天雲くんは名前呼んでくれないでしょ? ほら、早速呼んでみてよ。まさか、名前を忘れたとは言わないよね?」
「それはもちろん」
最近はずっと一緒に居るから忘れてしまいそうになるけど、藤波さんは学校で知らない人がいない程の有名人だ。
可愛いし性格もいい。
だから、僕ももちろん名前を知っている。
「じゃあ、早く呼んでよ!」
「えっと、葵さん」
「ええ~さん付けしなくても良いけどな~」
「流石にそれは勘弁してください」
女の子をあまり呼び捨てで呼んだことが無い僕にはいささかハードルが高い。
さん付けで勘弁してほしいところである。
「しょうがないな~まあ、名前を呼んでもらえて嬉しいから良いけどさ。じゃあ、噂の件は任せておいてよ」
「ありがとう。本当に助かるよ」
「気にしないで。天雲くんは何も悪い事してないんだからさ」
これで僕の悪い噂は夏休みに入る前に払拭できそうだった。
小田にも今度何か埋め合わせをしないとな。
そんなことを考えながら僕は家に帰るのだった。
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