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Vtuberの姉が配信切り忘れた結果、失恋弟としてトレンド入りした僕もVtuberになることになった  作者: 夜空 叶ト


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第36話 信憑性のある噂

「で? わざわざ放課後に私を空き教室なんかに呼び出してなんなの?」


「まずは来てくれてありがとう理沙」


 放課後、僕の目の前には元恋人であり、噂を流した張本人である秋田理沙がいた。

 僕が二人の話を聞いてすぐに彼女に連絡をしたからだ。

 もしかしたらメッセージを読まれないかもしれない。

 ブロックされているかもしれない。

 だから、彼女が今こうやって僕の目の前に来てくれるかは半信半疑だった。

 どうやら僕は賭けに勝ったらしい。


「そう言うのどうでもいいから。用件はなんなの? 私、速く帰りたいんだけど?」


 物凄く不機嫌そうに彼女は吐き捨てる。

 それもそうだろう。

 どうでもよくなって捨てた元恋人にこうやって呼び止められているんだから。


「いや、理沙が流した根も葉もない噂を撤回してほしくてさ。正直、あんな噂を流されたままじゃ溜まったもんじゃないからね」


 別れた後に、僕のことをどう思おうがどうでもいい。

 好きに嫌ってくれて構わないし、憎むのなら憎んでくれたっていい。

 だけど、こういう風に変な噂を流して僕の立場を悪くするような事はやめて欲しい。


「根も葉もないって……まあ、あんたがそう思うのは勝手だけどね。もうこんなに広まっちゃったし、手遅れじゃない? 今更私が撤回してもさ」


「どうだろうね。それはやってみないとわからないかもしれない。だから、素直に撤回してくれると嬉しいんだけど?」


「嫌よ。あんたはせいぜい苦しんで残りの学校生活を送ると良いわ。そうしたら多少は私の気分も晴れるってもんよ」


 どうやら、藤波さんが予想した通り単なる嫌がらせだったみたいだ。

 女子って言うのは本当に恐ろしい。

 いや、理沙だけを見て女子全体にレッテルを張るのは良くないか。


「じゃあ、理沙は僕に嫌がらせをするためだけにあんな噂を流したって言うのか?」


「そうだったら悪い? 気に食わなかったからあんたの悪い噂を流したってわけ。噂を撤回する気もないし、あんたは卒業までは針の筵で生活してればいいの。じゃ、私は帰るから」


 理沙は終始不機嫌な態度を崩さずに空き教室を後にしていった。

 機嫌が悪いとついつい余計なことまで言ってしまう癖は直ってなかったみたいだな。

 それにしても……


「残念だよ。素直に噂を自分の手で撤回してくれたら僕はこんなことをしなくても済んだのにな」


 ついさっき、録音を停止したスマホの画面を眺めながら僕は呟く。

 これで、信憑性のある噂の出来上がりだ。

 理沙には少し悪いけど、これも因果応報かな。

 やめてってお願いしたし、僕が彼女をストーカーしていたなんて言う事実もない。

 それに加えて、単なる嫌がらせでこんなことをしでかしたんだから。

 勿論彼女も報復されることくらいは覚悟の上なんだろう。


「とりあえず、どうやってこの音声と一緒に噂を流すのかを小田と一緒に考えるかな」


 そうして僕はスマホで小田に連絡を取る。

 すぐに連絡がついて近くのファミレスで集合することになった。


 ◇


「にしても、そんなにすぐ決定的な証拠を持ってくるとは思わなかったぞ? 案外すごい奴なんだな。お前は」


「別にそんなんじゃないよ。偶然ああいう発言をしてくれただけだよ」


「嘘つくなよ。わざわざ空き教室に呼び出して話をしてる時点でお前はこの発言を引き出せる自信があったんだろ?」


「自信というよりはこういう話をしたら理沙が勝手に話してくれるだろうな~って予想してただけだから」


 これでも、僕は理沙の元恋人だ。

 彼女が何を考えていて、どのタイミングで何を言おうとするかくらいはある程度の想像がつく。

 今回はその想像通りに彼女が動いてくれただけだ。

 次同じことをやれって言われたらできる気がしない。

 本当に運がよかっただけ。


「予想してたんなら同じだろ。まあ、いいや。この音声と一緒に噂が嘘だってことを広めれば、今流れてる噂は完全に払拭されるだろうな。問題は方法なわけだけど」


「そこなんだよな~ここで僕があの音声を流したら合成だって疑われて確固たる証拠が揺るぎかねない。一体どうしたらいいと思う?」


 僕はこういうSNS関連の噂の広げ方に詳しくない。

 今までそう言ったものに触れてこなかったし、自分から触れたいとも思わなかったからだ。

 誰かを貶める方法なんてそこまで知らなくていいし、できることならそんな方法を使わなくてもどうにかしたかった。


「俺だけじゃあどうにもならんな。男連中にだけならこの音声付きで本当の事を話せば信じてもらえるだろうが、女子には無理だろうな。秋田は女子の中でそれなりにカースト上位の人間だからな」


「難しいな。でも、女子にこの噂を信じてもらわないとどうにもならないしね」


「いっそのこと藤波さんを頼ればいいんじゃないか? 彼女は女子の中でもカースト最上位の人間だしお前にも好意的に接してくれてるだろ?」


「それは確かにそうなんだけど、巻き込んでもいいんだろうか?」


 藤波さんにそんなことをさせるのは少し気が引ける。

 だけど、現状では藤波さんを頼る以外に解決方法が思い当たらない。

 きっと小田も同じなのだろう。

 腕を組んでうなっている。


「良いんじゃないか? 頼れる人は頼れるうちに頼っとけよ。これが何の証拠もないデマならまだしも音声付きのれっきとした証拠もあるんだし。真実を広めるだけだろ?」


「確かにそうなんだけどね。ちょっと考えてみるよ」


「好きにしな。俺はお前からもらった音声を家に帰ってからでも広めるからな。男子の方は任せとけ」


 小田はそれだけ言うと立ち上がってファミレスを後にした。

 藤波さんに頼るかどうか。

 それを悩みながら僕も家に帰った。



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