第22話 正義の味方……小田?
「うわっ、あいつ本当に学校に来たよ。どんな精神してんだか」
「まともな精神してたらストーカーなんてしないだろ。おかしいんだよあいつ」
「マジで理沙可哀そう~」
翌日、教室に入った瞬間に僕は蔑みの視線と暴言に晒された。
昨日の予想は当たってたみたいで僕はめんどくさそうな問題に巻き込まれてしまったらしい。
にしても、高校生にもなって根も葉もない噂にみんな踊らされて。
いや、嘘と気づいていて僕に暴言を吐いてきている可能性もある。
「なるほど。少なくとも犯人はよくわかったな」
一人でぼそりと呟いて教室に入って自分の席にカバンを置く。
これからどうやってこの状況を切り抜けようか。
ここで騒ぎ立てたら問題は大きくなるばかりでメリットがない。
でも、何もしなかったらこの悪評は学校中に広められる可能性だってある。
下手に動けない以上、これからの行動には気をつけないといけない。
「なんだか、妙な問題に巻き込まれたみたいだな。大丈夫か? 天雲」
「別に大丈夫だよ。今の所は」
クラス中から悪意ある目で見られてはいるけど、実害があるわけでもない。
だから、今の所はまだ大丈夫だ。
でも、実害が出るようなら今後の行動を真剣に考えないといけない。
にしても……
「もう、本当に怖かったんだから」
「理沙大丈夫?」
「私たちがついてるからもう大丈夫だよ」
教室の真ん中でこれ見よがしに理沙は泣きまねをしていた。
なんて白々しいんだ。
この悪評を流した張本人が被害者面とは笑えない。
だが、今ここで僕が何を言おうともストーカーの戯言だ。
何の証拠も発言力もない僕がここで何かを言ったところで無意味だし、何なら僕の立場を悪化させるだけだ。
「お前がストーカーだったなんてな。俺は悲しいよ」
「するわけないだろ。というか、お前までそっち側か?」
「まさか。こんなしょうもない噂に踊らされるほどバカじゃない。少し考えれば何が起こったかくらいわかるしな」
小田はおどけたようにそう言ってから笑って見せた。
相変わらず、口は良くないけど言ってることはある程度正しい。
質の悪い人物だ。
でも、そんな小田が僕の味方で居てくれてるようでありがたい。
クラスで一人という事は無くなったという事だ。
「そうか。僕はこれからどうすればいいと思う?」
「わからんな。こういう噂は信憑性よりも面白さとか話題性が重視される。つまりはお前がどれだけ潔白を証明してもこの悪評が完全に消えることは無いってことだ。残念ながらな」
「やっぱりそうだよな。でも、こんな嫌がらせみたいな噂を流されるなんてお前いったい何したんだよ」
「ああ、それはな」
小田にこの前ショッピングモールであったことを話した。
するとひとしきり笑った後に真顔になってから。
「まあ、お前が悪いとは言えないが多少やりようはあったように思えるな」
「そうなんだけどさ、あんときは幼馴染を悪く言われてついカッとなっちゃって」
聖奈が馬鹿にされてついカチンと来てしまったんだ。
普段ならあんなことは言わなかっただろうに。
でも、あそこで何も言わないという選択肢は僕には無かった。
聖奈が傷ついている姿なんて見たくない。
だから、僕はあの時理沙にああ言った事を後悔はしていない。
もう少しやりようがあったとは思わなくもないけどそれは仕方がない。
過ぎてしまった事なのだから。
「そんなに酷いこと言われたのかよ。まあ、お前はそう言う奴だよな。逆にお前がそこで何も言わないような人間だったら俺はこうしてお前と友達してないかもしれないしな」
「なんだよそれ。でも、ありがとう。味方で居てくれて」
「味方? 何言ってんだよ。俺は常に真実の味方だ。俺はお前がストーカーじゃないと信じているからこうして接しているわけで、もしお前が本当にストーカーだったら話しかけてないって」
真顔で怖い事を小田は言う。
こいつはこういう奴だった。
個人の味方ではなく真実の味方。
いや、正義の味方と形容するほうが正しいかもしれない。
「まあ、ストーカーなんてしてないから安心してくれ。そんな暇ない」
「わかってるよ。だから俺はこうしてお前と話をしに来てるわけだしな」
心強いのかどうか微妙な奴だけど、少なくともこの教室で僕に敵対していない人間であるという事が重要だ。
まあ、今の所実害があるわけじゃないから何か起こるまでは無視していいだろうな。
僕はそう決め込んで一日絶えず向けられる悪意をやり過ごすのだった。
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