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Vtuberの姉が配信切り忘れた結果、失恋弟としてトレンド入りした僕もVtuberになることになった  作者: 夜空 叶ト


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第21話 逆恨みの悪い噂

「お待たせ。ごめん遅くなって」


「いやいや、私の方こそ急に呼び出してごめんね」


 待ち合わせ場所の公園に行くとベンチに座っている藤波さんがいた。

 藤波さんとは今までプライベートで関わったことなんてほとんどなかったし、連絡先を交換したのだってつい最近だ。

 そんな彼女が一体僕に何の用があるというのだろうか。


「それで、急に呼び出して何かあったの?」


「いや、そういうわけじゃないんだけどね。これ見てもらってもいい?」


 そう言って、藤波さんは僕にスマホを見せてくる。

 画面には見覚えのないグループチャットが映し出されていて、書き込まれている内容は僕が理沙との関係を無理やり迫っただとか、ストーカーをしていただとかそんな感じの誹謗中傷ばかりだった。


「これは?」


「クラスのグループチャット。といっても、入りたい人だけ入ってね~て感じの奴だけどね。それで、こんなうわさが流れてるの知ってるのかなって思って聞いてみたんだけど」


「やってないね。そもそも僕は一方的に振られただけだし。ストーカーをするほどに未練を抱いてはいないよ」


 あいつの事を考える余裕がないほどに最近の僕は無かった。

 だから、完全に根も葉もない話なわけだけどクラスのみんなは僕の事を攻撃したいらしい。

 楽しくメッセージに暴言を書き込んでいる。

 誹謗中傷もいいところだ。


「まあ、だよね。天雲くんってそんなことをするような人に見えないし。じゃあ、なんでこんな噂が広められてるんだろ?」


「それは僕にもわからないかな。まあ、噂を広めてる人がわかればわかるかもしれないけどね」


 でも、心たりならある。

 あの時冷たい対応をした理沙に逆恨みで妙な噂を流された可能性がある。

 だとしたら厄介極まりない。

 本人はクラスの中でも発言権を持っている人間だ。

 彼女が噂の発信地であれば僕が何をしても無駄の可能性が高い。

 先生にすぐに相談するのも一つの手だが、それでは誰が僕にこのメッセージを見せたかという犯人探しが始まってしまう可能性がある。

 そうなってしまったら藤波さんに迷惑が掛かるから無しだ。


「ごめん。私はそう言う噂にあんまり詳しくなくて」


「全然謝られるような事じゃ無いよ。教えてくれてありがとうね。あと、学校で変な空気になっても庇ったりしなくていいからね。藤波さんには藤波さんの立場があるからさ」


 わざわざ僕のために自分の立場を危うくする必要は無い。


「でも……」


「大丈夫。これくらいなら自分で何とか出来るからさ」


 精一杯の強がりをして見せて笑って見せる。

 僕は何とかする。

 もし、学校での居場所がなくなっても僕にはVtuberの甘雲ヒロとしての立場がある。

 そっちで楽しく配信活動をすればいい。


「うん。わかった。辛くなったら相談に乗るからいつでも連絡してきてね」


「ありがとう。わざわざこのことを教えてくれてさ」


「全然、むしろこれくらいしか力になれなくてごめんね」


「気にしないで。じゃあ、僕は帰るね」


「また明日ね。天雲くん」


 藤波さんと別れて家に戻る。

 なんだか気分がモヤモヤした僕はパソコンをつけて配信を開始する。

 突然のゲリラ配信にも関わらず、それなりの人物が見に来てくれた。


「という事で、今日はゲリラ歌枠をしていくぞ。高評価とかチャンネル登録よろしくな」


 甘雲ヒロになりきって僕は歌を歌う。

 モヤモヤした気持ちを晴らすように精一杯歌った。

 かなり、コメント欄も早く流れてたくさんの人が見てくれているのだと思うと嬉しかった。


「今日は聞きに来てくれてありがとな! 今度は収益化記念配信があるからそっちも見に来てくれよな! それじゃあおつヒロ~」


 ひとしきり歌ってから僕は配信を終了させた。

 多くの人に自分の歌を聞いてもらえてうれしくて、さっきまで抱えていたモヤモヤが少しだけ霧散していった。

 おかげで明日もある程度晴れやかな気分で学校に行くことが出来そうだ。


「にしても、噂か。どうやったら収拾をつけることができるのかな」


 明日の学校は面倒なことになりそうな予感がする。

 というか確実に面倒なことになるだろう。

 本当に僕が一体何をしたって言うんだよ。


「ひろくん配信お疲れさま。いい歌枠だったね」


「莉乃姉さん。ありがとう。今日はなんだか歌いたくなってさ。ゲリラ配信ってあんまりよくないのかな?」


「ううん。そんなことないよ! 見て欲しい配信は告知とかをするべきだけど、したい時にできるのが配信だからさ。そういう配信も私はいいと思うよ」


「ならよかった。莉乃姉さんから見ても良かったなら少しだけ自信が持てるよ。本当にありがとう」


 Vtuberとして大先輩である莉乃姉さんから褒められると否が応でも自信がつくというものだ。

 それを抜きにしても莉乃姉さんに褒められるのは純粋に嬉しい。


「ひろくん、学校でなんかあった?」


「……なんでいきなりそんなことを聞いてくるの?」


「いや、雰囲気がいつもと違うなって思ってさ。それに、ひろくんって昔から機嫌が悪かったり嫌なことがあったりすると、歌いたくなる人じゃん。いきなり歌枠始めたから何かあったのかなって思ったんだけど」


「莉乃姉さんには隠し事ができないな」


 昔から僕が悩んだりしていると、真っ先に相談に乗ってくれる。

 困っていると助けてくれる。

 莉乃姉さんはずっと昔から僕にとっての救世主だった。


「やっぱり何かあったんだ。迷惑をかけたくないとかそういう考えで隠そうとしてるならやめて欲しいかな。ひろくんが困ってるなら助けたいし、ひろくんのことを迷惑だなんて思わないからね」


「ありがとう。莉乃姉さん。実はさ……」


 それから僕は莉乃姉さんにさっき藤波さんに見せてもらった事を話した。

 学校で妙な噂が広まっているかもしれないこと。

 そして、僕が話している間莉乃姉さんは静かにうんうんと頷いてくれた。


「なにそれ! 許せない! なんでひろくんがそんな目に遭わないといけないの!?」


「それは僕にもわからないよ。でも、拡散した人が元カノかもしれない」


「あ~逆恨みみたいな感じか。ひろくんも大変だね。じゃあ、私ができることはなさそうだけど。明日学校に行ってみて何かあったらすぐに言ってよ?」


「わかった。聞いてくれてありがとう」


 莉乃姉さんにお礼を言って今日は寝ることにした。

 これからどうなるかはわからないけど、僕にも味方がいることはわかったので頑張れそうだ。

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