第15話 ギャルの推しは僕!?
「いやぁ~久しぶりにプライベートでこんな風にバスケをしたね。付き合ってくれてありがとうね」
「いやいや、相手にならなかったし。僕なんかが力になれたとは思わないけど」
「楽しかったよ! 真剣にバスケをやってくれてるのはよくわかったし」
「ならよかったけど。藤波さんはもう帰る?」
流石にもう遅いし、この時間に女の子を一人で帰すのは心苦しい。
出来れば、送っていきたいんだけどそう言ったら気持ち悪がられるかな。
う~む。
「うん。流石に遅い時間だけど、なんで?」
「もし、藤波さんが嫌じゃなければだけど送って行こうか?」
「へ? いいの?」
「うん、こんなに遅い時間に一人で帰すのは心苦しいし。それに何かあったら大変だからね」
藤波さんは凄く可愛い。
こんな可愛い女の子が一人で歩いていたら、襲われるかもしれない。
僕が送っていくことでそれが完全に防止できるなんて思ってないけど、ここで何もしないで何かあったらと思うと提案をせずにはいられなかった。
「そ、そっか! ありがと。じゃあ、お願いするね天雲くん」
「頼りないだろうけどね」
「そんなことないよ。心強い。ここから15分くらいの道のりお願いね」
月明かりが照らす彼女はあまりにも美しくて、その姿はまるで妖精のように美しかった。
日中に見せる太陽のような顔と今見ている妖精の妖精のような顔。
どちらも美しくて見入ってしまう。
「う、うん。任せといてよ」
「えへへ。なんか不思議な気分だね。こんな風に男の子と遅い時間に歩くなんてさ」
「それを言ったら僕だってこんな時間に女の子を送ったことなんて無いからドキドキしてるよ」
それどころか、こんな風に女の子と歩くなんて聖奈か理沙くらいだ。
でも歩いたの明るい時間帯だったし、こんな風に暗い時間帯に一緒に歩くのは初めてだ。
だから、かなり緊張している。
「送り狼にならないでよ?」
「ならないよ。というか、藤波さんは毎回こんなに遅い時間まで練習してるの?」
だとしたら、少しだけ心配になる。
どれだけ運動が出来ても不審者数人に襲われたらひとたまりもないだろう。
「ううん。流石にそんなに不用心じゃないよ。普段はこんなに遅い時間まで練習はしてないんだけど、今日はなんだか動きたくて仕方がなかったんだ~」
「それはどうして?」
「帰るときにも言ったけど、推しの配信があってさ。それを聞いてたらいても経ってもいられなくなって気が付いたらバスケの練習してた」
「へぇ~そこまで推してる人がいるんだね」
僕は配信してる側しか経験したことが無いから誰かを推している人の気持ちがあまりよくわからない。
でも、そういう気持ちもわかっていかないとよりいい配信はできないと思う。
やっぱり問題は山積みだけど、僕が出来る範囲から少しずつ取り組んでいきたいと思う。
「うん! 最近デビューして一気に人気になったすごい人なんだ。明るくてすっごく歌が上手くてさ」
「歌を歌う人なんだ」
「いや、歌メインというかデビューしてすぐだからまだ何をメインにするかわかってないんだよね。今日が初めての歌枠ですっごく歌が良くてね! しかも、私のリクエストに応えてくれて本当に嬉しかったんだ~だからちょっと嬉しすぎて、体を動かしたくなった感じ!」
「そ、そうなんだ」
あまりにも早口でまくし立てる藤波さんにたじろいでしまう。
な、なんかオタクっぽい……
推しの事を語るときはなんだか小田に似たような雰囲気を感じる。
いや、藤波さんと小田を比べるのはあまりにも酷いと思うが。
「そうだよ! 絶対にハマるから天雲くんも見てみてよ! というか、私の推しと名前似てるね!」
「そうなんだ。まあ、僕の名前なんてありふれてるでしょ」
浩人なんて名前はそこら中にいる気がする。
絶対数が多い以上Vtuberの名前として採用されてもおかしくない。
「まあ、名前もそうなんだけど苗字が一緒なんだよね~あっ漢字は違うけど!」
「みょ、苗字? ちなみにどんな?」
「う~ん、普通なら教えないんだけど送ってもらっちゃってるし特別に教えちゃうね」
「いや、まあ送ってるのは僕の自己満足なんだけどね」
そう言えば、帰りの時に秘密って言ってたな。
まあ、藤波さんから教えてくれるって言うんなら参考までに聞いておきたい。
藤波さんみたいに明るい人が好きになるVtuberだ。
僕もその配信を見てみて勉強したい。
「私の推しの名前はね……甘雲ヒロって言うの! 最近デビューした新人でめちゃくちゃカッコよくて声もいいんだよね! めちゃくちゃおすすめだから今度見てみてよ」
「あ、うん。時間があったら見てみることにするね」
え……ちょっと待って!? 藤波さんの推しって僕なの?
ええ~全然想像してなかったから驚きまくってるんだけど。
マジのマジでマジなの?
いや、ここでわざわざ嘘をつく意味がない。
つまりはマジって事?
「絶対だよ。今度の試合終わりに感想聞くからね!」
「……マジ?」
「大マジ! やっぱり自分の好きな事は人と共有してなんぼだよね!」
それは正論なんだけど、僕は自分の配信の感想を言わないといけないってこと!?
何その羞恥プレイ。
最高に恥ずかしすぎるんだけども。
「だ、だね。試合の時にちゃんと感想伝えるよ」
「楽しみにしてるからね! と言うか、絶対勝つから応援してね」
「楽しみにしとくね。バスケの試合とかって見たことないからすっごく楽しみ」
スポーツの試合とかは今まで見たことが無いから本当に楽しみだ。
それに加えて、強豪バスケ部のエースの活躍がどんなものなのか。
見てみたい。
「楽しみにしておくといいよ! 絶対にいいとこ見せるから」
「そこまで気負い過ぎなくても……僕が見に行くだけで」
「いや、私は絶対に勝たないといけないの。せっかくエースとしてみんなに期待してもらえてるし」
「そっか。うん。本気で楽しみにしてるね」
少し背負いすぎな気がしなくもないけど、それで本来の実力が発揮できるのならいい事なのかもしれない。
少なくとも、僕が言うような事ではないな。
「任せといて! あっ、ここが私の家だからここまででいいよ。今日は送ってくれてありがとね」
「うん。試合がんばってね」
藤波さんの家は僕の家から30分くらい離れた場所にあった。
一軒家でめちゃくちゃいい感じの豪邸だった。
なんか、すごかった。
うん。
まあ、ここから家に帰るまでにいろいろなことが考えれそうだ。
「まずは、身バレしないように振舞わないとな」
幸いなことに配信中の声は普段よりも明るく話してるからすぐにバレるような事はないと思う。
僕が身バレしてしまったら連鎖的に莉乃姉さんの正体もバレてしまう。
それだけは避けなくてはいけない。
莉乃姉さんに迷惑をかけるのは絶対になしだ。
「てか、待てよ……藤波さんの言ってた事と配信の事を照らし合わせるにふじみんさんの正体って……」
世界はあまりにも狭いらしい。
僕の好きな絵師が幼馴染で超人気Vtuberが僕の姉さんで、クラスで話すくらいの仲のギャルが僕のことを推してくれてる。
一体どういう展開なんだよ。
色んなことが起こりすぎていて、頭が痛くなってくる。
「今度からは配信で話すことの内容とかも気をつけとかないと、すぐに藤波さんにバレちゃうな。気をつけないと」
ああやって真っすぐ応援してくれる人がいるってわかって嬉しい。
応援してくれるリスナーのみんなのためにも、ちゃんと配信を頑張らないと!
まずは目先の収益化記念配信だな!
グッズは聖奈にお願いしてるし、僕がいま考えるべきことはどんな内容の配信をするかだな。
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