第14話 ギャルとバスケ
「まあ、Vtuberとかが出してる基本的なやつとかだとアクリルスタンドとか、アクリルキーホルダーとかかな。ちょっといいやつとかだったらマグカップとかタペストリーとかね」
「そう言うの詳しいんだな。聖奈は」
「仕事柄そう言う奴の絵を描いてるからね。収益化記念とかだったらアクリルスタンドとキーホルダー。あとは、マグカップかタペストリーとかそういうちょっと大きいのを出せばいいと思うよ」
「そか。やっぱり聖奈は詳しいな。本当に頼りになるよ。ありがと」
聖奈がこういう知識に明るくて本当に助かる。
今度聖奈にもちゃんとお礼をしないといけないな。
助けられてばっかりだしさ。
「全然いいよ。そういう事なら新しいイラストを用意するね。二、三種類用意するから一週間くらい待ってもらってもいい?」
「もちろん。というか、むしろそんなに早く描いてもらってもいいのか? 他にも予定とかあるんじゃ」
「大丈夫。この前も言ったけど、他の予定がギチギチとかそう言うことは無いし。無理ならハッキリ無理って言うし、心配しないで」
聖奈はそう言ってくれるけど、いつまでもこの優しさに甘えていてもいいのだろうか。
聖奈だってイラストレーターとしてちゃんとした仕事をしている。
僕の我儘をこうやって聞いてもらっていくのは、いつか確実に聖奈の負担になる。
報酬だってちゃんと支払えていない。
このことについてはちゃんと考えなければいけない。
「そ、そうか。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うけど本当にきつかったら言ってくれよ。聖奈が無理して体調を崩す所とかは見たくないからさ」
「う、うん。ありがと。でも、本当に大丈夫だから。心配してくれてありがとね」
「わかった。じゃあ、お願いするね」
「任せといてよ! 数日後にはラフとかを送るから確認して」
任せっきりになって申し訳ないけど、僕が協力できるような事はあんまりない。
せいぜい、いつものようにここに来て聖奈に夕飯を作ったり掃除をしてあげたりするくらいだ。
学校も同じじゃないし、普段から聖奈の助けになるようなことはできない。
もっと頼ってほしいと思うんだけど、それを正面から言うのはなんだか気持ち悪い気がしてなかなかいう事が出来ないでいる。
「頼んだ。じゃあ、僕はそろそろ戻る」
「うん! 私も今からイラスト描くからじゃあね! 浩人」
「ああ。また明日な」
考えることは多いけど、今ここで深く考えたところで解決はしないし聖奈に不安そうな顔を見せるわけにもいかない。
僕がいま出来ることと言えば、このまま真っすぐ家に帰る事くらいだろう。
自分の無力さにため息が出る。
「でも、今は聖奈に頼るしかないな。次からは記念グッズを他のイラストレーターさんに描いてもらえないかの交渉もしてみないといけないな」
やはりやることは山積みだった。
でも、応援してくれている人のためにも頑張ってイラストを描いてくれている聖奈のためにも僕はもっと配信を頑張らなくちゃ!
次の配信は収益化記念配信にすることをツッタカターで告知した。
「よし、とりあえずはこれで良いかな」
ツッタカターに投稿をして、スマホをしまう。
なんだか、真っすぐ家に帰る気分にもなれなかったから近くの公園で一休みすることにした。
勿論、莉乃姉さんにはあらかじめ連絡を入れておいた。
じゃないと心配させちゃうだろうからね。
「本当に考えることが尽きないんだな。Vtuberって」
自分が考えているよりも考えることが多くて、そろそろパンクしそうだ。
聖奈のこともそうだし、グッズのこともそう。
だけど、Vtuberとしてコメントと会話をするのは凄く楽しい。
応援してくれる人がいるって言うのも嬉しい事の一つだ。
だからこそ、見てくれるみんなが楽しめるような配信を心掛けたい。
「ふぅ、歌枠は本当に気持ちよかったな」
皆に歌を褒めてもらえるもの嬉しかったし、歌っていて気持ちよかった。
今度から定期的に歌枠は取り入れるとして他のジャンルの配信もしていきたい。
他のVtuberさんはどんな配信をしてるんだろう。
気になった僕はスマホを取り出して、ヨーツベを開く。
普段から僕が配信を行ってるサイトで莉乃姉さんのチャンネルを見る。
「なるほど。ゲーム配信とか雑談配信か。ゲーム自体は僕も好きだから配信してみるのもいいのかもしれない」
他のVtuberさんの企画を見てみても大体ゲーム配信や雑談配信、歌枠が多かった。
コラボ配信などもしてみたいけど、今の所声をかけられる人が莉乃姉さんしかいないから断念することにした。
こうやって他のVtuberの配信を見ていると自分も不思議とやる気が出てくる。
人に元気を与える配信とでも言うべきか。
やっぱり世のVtuberはすごい。
「ん?」
既に暗くなっている公園でボールをつく音が鳴り響いている。
時間は夜9時くらいなのにバスケでもしてるのか?
練習熱心なのか暇なのかどっちかわかんないな。
「え?」
少し気になってバスケットコートの方を覗いてみたらそこには藤波さんがいた。
熱心にドリブルをしていて、真剣に練習をしているという事が見て取れる。
試合が近いと言っていたから練習をしていたのだろう。
あまりの真剣具合に声をかけてもいいのか不安になるくらいに、真剣にバスケに打ち込んでいた。
「あれ? もしかして天雲くん? どうしてここにいるの?」
「えっと、気分転換に夜の散歩をしてたんだよ。そしたらボールをつく音が聞こえてきたから気になって見に来てみたんだ」
「あ~そういうこと。確かにボールが跳ねる音って結構響くもんね」
「そうそう。にしても、本当に熱心に練習してるんだね。真剣すぎて声をかけていいのか迷ったよ」
あの時の藤波さんはなんだか鬼気迫るような雰囲気を醸し出していて、非常に声をかけにくかった。
真剣にバスケに打ち込んでる藤波さんはなんだか美しくて、邪魔をしてはいけないと本気で思ったんだ。
「そうなの? 全然声かけてくれてよかったのに。大会が近いのもそうなんだけど、さっきの推しの配信が最高すぎて体を動かしたくなっちゃったんだよね」
「へぇ~そこまで推せる人がいるのってなんだかいいな。そんなにいい配信だったの?」
「もう最高だった! 本当に見てて癒されたし、やる気が出ちゃってさ。いてもたってっもいられなくなってこうやってバスケしてたんだ! よかったら天雲くんも一緒にどう?」
「僕なんかじゃあ、藤波さんの相手にならないと思うけどそれでもいいなら」
現役バスケ部にバスケで勝てるなんて全く思ってないし、そもそも僕の運動神経は良いほうじゃない。
相手にはならないと思うけど、こうやってやる気を出してる藤波さんの役に少しでもたてるなら喜んで相手になろうと思う。
「全然良いよ! 一人で練習するのもなんか味気なかったし。じゃあよろしくね」
「任せてよ」
こうして僕と藤波さんの1on1の試合が始まった。
結果としてはもちろん全く相手にならなかったけど、久しぶりに全力で体を動かしてすっきりした。
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