16話
受付の人の名前は知らなかったな。
「呼び方は?」
「受付の人でいいですよ?」
「受付の人よろしくお願いします」
そんなわけで格闘術の訓練が始まる。
格闘術のスキルは存在しているが、スキルという名の補助道具なしで体を動かすための訓練のようなものだ。
戦い方の基礎や型の反復練習なんて存在しない。ただの殴り合いの組み手を連続で行うだけだ。
手の甲を弾くことで攻撃を無効化したり、避け奥に腕を引くことで追撃をさせず懐に入るといった行動をしてくるのだった。
「攻撃に手を伸ばしすぎている。防がれないように攻撃をしなよ!」
そういいながら全ての攻撃を捌いてくるのだった。弾かれない距離感で攻撃をしろということだ。攻撃をした後にすぐに引くことやフェイントを混ぜろといったものだろう。
(それができれば苦労はしてねえよ)
心の中で悪態をつきつつ、再び構えをとり奇襲を仕掛けるのだった。
まずは、左手での顔への簡単なジャブだ。受付の人の右手が動きそのジャブを受け止めようとする。だが、そのジャブは寸前で止まり、掌の面を向ける。
要するにフェイクでの視界搾取だ。そして、右手で腹を殴りかかろうとするのだった。
「うん、うん!いい感じ、いい感じ」
ジャブを止めようとしていた受付の右手は、コールの奇襲をしようとしていた手を掴む。
「もっと、いろんなものを使おうか」
フェイクがフェイクで終わっている。他にもすべき方法はある。例えば、手のひらの中に土を入れておくことや、金属の残骸を入れることだ。それにより、目潰しとなりフェイクの重要度が上がる。そのことを伝えているのだった。
掴んだその手を引っ張ることで再び、背中を取り押し倒すのだった。
「ダメダメ。それだけじゃ倒せないぞ〜?一旦休憩かな。休憩が終われば、攻撃を捌く訓練だね」
コールは肩で呼吸をしているのだった。スタミナ不足だ。4戦連続で行うとスタミナが切れる。
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呼吸を整え、準備ができた時だ。起き上がり、構えをとると同時に戦闘が始まるのだった。先ほどまでの俺の動きを模倣するように動く。その対処法は見ているため、簡単に防ぐことができるのだった。
ただ、攻撃の威力があり重たいのと、一回ミスをすれば重症になる。こんな緊張感から、集中力が極限にまで上がっているのだった。
その攻撃を捌いている途中で受付の動きが止まる。
「飽きたから訓練を弓に変えるね」
自分勝手だと思いつつも、この人から戦闘を教わるしか方法はない。そのため、無視できるわけないのだった。
「あの的に当ててね?」
そういいながら指をさす。その的を1発で射抜くのだった。
「お、1発命中かー。なら走りながらとかは?」
走りうちは命中力が悪いがなんとか当てることができるのだった。命中率は4割といった所だ。
「格闘術よりも弓の訓練が優先となります」
テンションが落ち着いたのか受付の人は冷静になり、対処をしてくるのだった。