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逆転【???視点】

【全知の大鏡視点】


「盗むも何も、これはもともとお前のものじゃないだろう。全知の大鏡」

「なっ!? その声は!」


 突然かかった声に、バッと客間の入口を振り返ると


「フィーロ!? お前もこの世界に戻って来ていたのか!?」


 どうやってマラクティカに来たのか、央華国に置き去りにしたリュシオンと、神の宝物庫に戻ったはずのフィロソフィスがそこにいた。


「人間の体に入ったデメリットだな。全知の大鏡から出たお前は全知の力を失った。だから、それ以降の俺の動きまでは分からなかった」


 フィロソフィスは小さなコンパクトの中でニッコリすると


「でも全知の力が無くたって、自分が人間を誑かして早々にこっちに戻ったくらいのことは、俺にもできると予想してしかるべきだ。どうやらお前は全知の力に頼るあまり、自分自身の知恵を育て損なったようだな」


 相変わらず嫌みったらしい物言いに、私は彼を睨みながら


「それであなたは適当な人間を利用してリュシオンと合流し、ここに来たということですか?」


 具体的に何をどうしたか、今の私には分からない。だが全てを見通す力があれば、央華国にいたリュシオンを拾って、この場に来ることも可能だろう。


「俺が来たからには、お前の企みは終わりだ。お前の本体である鏡を壊されたくなければ、我が君たちの体を元に戻すんだな」


 私の荷物を奪ったのはフィロソフィスだった。だとすれば確かに全知の大鏡も、今はリュシオンの手にあるのだろう。


 しかし私は


「ハッ、それで私を追い詰めたつもりですか?」

「グァッ!?」


 レオンガルドの体で、ミコトの体に入った獣王を締め上げる。


「やめろ! 彼女に何をする!?」


 私は叫ぶリュシオンを無視して


「あなたは本体を壊すと言ったが、そんな脅しは全く無意味だ。鏡を割られても、私は神の宝物庫に戻るだけ。一方あなたの大切な彼女はどうでしょうか?」


 私はミコトの体を拘束しながら


「どうせこの人間は、死んでもまた別の何かに生まれ変わる。だから構いませんか? どうせこの女も、あなたが無数に誑かして来た愚かな人間の1人に過ぎませんしね」


 ギリギリとレオンガルドの魂が入ったミコトの首を締め上げる。この体を殺すだけで、レオンガルドとミコトは同時に死ぬ。


「やめろ! ミコト殿を離せ!」

「やめて欲しければ、さっさと私の鏡を割ったらどうです? 私を神の宝物庫に送り返せる代わりに、いま鏡の中にある人間の魂も道連れですが」


 しかし私はフィロソフィスが、私の本体を壊して終わりにできない理由を知っている。


 彼は警戒しているのだ。本体を破壊したところで、私は神の宝物庫に戻るだけ。必ずこの世に舞い戻って、また自分たちを狙うだろうと。


 だから私はフィロソフィスの懸念どおり。


「それと1つ宣言しておきましょう。あなたたちが本体を壊せば、神の宝物庫に戻った私は、再び人間を操って必ずこの世に舞い戻る。そして今度は、あなたたちへの復讐を最優先にします」


 しかも、その復讐の方法は


「直接あなたたちを狙うのではなく、悪人に知恵を与えて、罪の無い人たちを殺し奪い犯させる。その全ての悲劇が、私をここまで怒らせたあなたたちのせいになるのですよ」


 聖人気取りのミコトは、自分よりも人が傷つけられることを悲しむ。そしてフィロソフィスにとっての最大の苦しみは、自分のせいでミコトが不幸になることだ。


 私の提案に、リュシオンはますます憤って


「この化け物! どこまで性根が腐っているんだ!?」

「そういうなんの役にも立たない罵倒は、自分には他に打つ手が無いと言っているようなものですよ。さぁ、どうしますか? 全知の賢者・フィロソフィスよ。鏡を割って彼女を護るか? 彼女を見捨てて私を封印するか?」


 まだ私が人間だった頃。神のように神秘的な姿と全知の力を持つフィーロは憧れだった。けれど、私も同等の存在になった時。同じ姿と力を持ちながら、まるで私を意識しないフィーロが憎くなった。


 そう。かつてエーデルワール城でミコトが言ったとおり。


『気にしないで。フィーロはどっちが上とか先とか気にしないと思うし、私もそうだから』


 私が人の身を捨ててまで得た力を、軽んじるフィーロが許せない。


 いつか私の上に立つ目障りなアイツを引きずりおろして、あの余裕ぶった笑みを崩してやりたい。


 それがミコトという弱みを得たおかげで遂に叶う、はずだったが


「さっきのお前の台詞を、そのまま返してやろう。それで俺を追い詰めたつもりか?」


 この期に及んで余裕ぶった笑みに私は驚いて


「なぜ、この期に及んでそんな台詞が吐ける? 大事な彼女がどうなってもいいんですか?」

「君は全知の力を持っているくせに、彼女を過少評価したな。彼女は助けを持つお姫様じゃなくて、自ら状況を打開する英雄だ」

「まさかあんななんの取り柄も無い女に、そんなことができるわけ……」


 フィロソフィスの言葉を否定した瞬間。


「な、なぜ体から急に力が……」


 レオンガルドの体から急速に心身の力が失せる。その理由は

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