episode 18
どうも、ノウミと申します。
まだまだ作品数、話数としては少ないですが、これから皆様の元へ、面白かったと思って頂けるような作品を随時掲載していきますので、楽しみに読んでいただければと思います。
沢山の小説がある中で、沢山の面白い作品がある中で私の作品を読んでいただけた事を“読んでよかった”と思っていただける様にお届けします。
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流川さんと会う、そんな当たり前だけど、当たり前じゃない日常に突然の終わりを告げられる。
「えっ?」
「もう会えなくなるんだ、暫く…」
「ずっとじゃないんだよね、いつ会えるの?」
「分からない、もう会えないかもしれないけど」
流川さんは、生きるためにアメリカに行くと。
心臓の移植手術が出来る目処が立ちそうなので、向こうで準備を始めるらしい。
「いつからいくの?」
「準備が出来次第かな、だから今日で最後」
「今日で…最後……」
「そんな顔しないで、また会えるよ…きっと」
そう言った顔は、笑ってすらいなかった。
心配と不安が大きいのだろう。
遠い異国の地で、心臓の手術をするのだ。
怖くないはずがない。
「また桜が見れたらいいなって思うの」
「僕も、そう思います」
「ねぇ、また会えたら一緒に見てくれる?」
「僕も…お願いします…」
泣くな、ここで泣くな。
悲しい顔を向けるな。
最後なのだから、笑って見送りたい。
「最後に一つ、お願いがあるんだけどいいかな」
「なんでも言ってください、僕に出来ることなら」
「この桜の鉢ね、最後まで持っておきたいの」
「それはもちろん…」
「そして、この桜を取りに来て欲しい、しばらく時間が経ってから。ここの看護婦さんに預けるから」
「…わかり、ました」
「桜がまた見れますようにって想いを込めて、最後まで見ておきたいの。そしていつの日か、私が戻ってきた時に、桜が咲いてるところが見れたら嬉しいな」
流川さんの声も、肩も震えていた。
顔をこちらに向けないが、泣いているようだ。
僕だけは泣くわけにはいかない。
笑って今日の日を別れたい。
「では!泣かずに別れましょう!」
「………」
返事がないが構わない。
「僕は流川さんに救われました、流川さんの魔法の言葉に、その笑顔に、何度も救われました!」
「………」
「流川さんを救えない、無力さはありますが、これだけは伝えさせてください“ありがとう”」
「………」
「またいつか会いましょう」
最後まで、流川さん振り返ることはなかった。
ただ、病室にすすり泣く声が響き渡る。
それだけでも良かった。
きっとまた会えるから。
そうして、僕は病室を出ていく。
次に来るのは、病室ではなく受付までだ。
確信のない、祈りのような思いを抱える。
時として、人は何かにすがりたくなるものだ。
また次話でお会いしましょう(^^)