07 前の仲間がやってきました
俺たちが話していると、モラがボスの頭を布で包んでいた。その近くにもさっき切ったであろう首を入れた包みが2個ほどある。
「よし。私の仕事はこれで終わり。じゃぁ、私はここで抜けさせてもらうわねん」
「うわっ! モラ姉さん、その頭どうするんすか?」
「私が欲しかったのは、頭じゃなくてこの牙よ」
そう言うと、モラは牙を指さした。確かに大きな牙である。
「これを加工して装備にしてもらうのよ」
「あぁ、そういうことっすか」
「だからここでお別れね。じゃぁねー」
そう言って手を振りながら、荷物を持って去ってしまった。俺はさっき倒したオークを見た。オークの体はボロボロに崩れていっていた。
「よし。俺たちも村に戻るか」
それから俺たちは村に戻り、村長に報告をするとすごく喜ばれた。そして少しばかりの報酬をもらう。
「本当に助かりました。これで村は平和です」
「それはよかった。では、俺たちは急いでますのでそろそろ出発します」
「それは大変ですね。ではお気をつけて」
俺たちは、村長や村の女性たちに見送られながらアジャケ村を出た。
「兄貴、次のクエストはなんすか?」
「うーん、どうしようか。いくらかチラシは持ってきたんだけど」
「あっ! これなんかどうすか? スライム大量発生。場所もこの近くみたいですし」
アキトが選んだのは、この近くの森で大量発生しているスライムの退治であった。これなら歩いてでも行けるだろう。
「そうと決まれば早く行きましょうよ!」
「はいはい。じゃぁ行こうか」
アキトが子犬のようにはしゃぐので、俺とツルギは呆れながら歩いていった。
「やっと見つけたわよ、タクト……」
俺は知らなかった。空から誰かに見られていることに。
それからしばらく歩いていると、例の森が見えてきた。オークの時とは違う森だ。
「さて、ここだな」
「スライムなら簡単っしょ!」
「……油断はするなよ」
「わかってるっすよ。でも、スライムって1番弱いから俺でも倒せますね、兄貴」
「それはそうだけど、ツルギの言う通り油断は禁物だよ」
「はーい、わかりましたよ……」
少しアキトのテンションが下がってしまった。まぁ、いいか。これで少しは大人しくなるだろう。
俺たちが森の中を歩いていると、広い場所に出た。しかし、そこは花畑とかではなく、青い物体で埋めつくされていた。全部スライムである。
「まさか、これ全部スライムっすか?!」
「思ったより多いな……」
俺はその多さに少し引いていた。しかし、クエストである以上倒さなければいけない。
「とにかくやるぞ!」
俺たちはいっせいに攻撃したが、その柔らかいフォルムにはじかれてしまう。
「うわっ! なんすかこれ。剣がきかないっすよ! 全部はじかれちまいます!」
すると、スライムが何匹か集まりキングスライムになった。
「でかっ!」
アキトが驚いていると、キングスライムは大きく飛び上がりこちらにふってきた。
「危ない! 2人とも避けろ!」
俺たちは間一髪で避けたが、他のスライムたちも集まっていき、キングスライムがどんどん増えていった。
「兄貴、どうしましょう。どんどん増えてきてるっすよ」
「どうしたらいいんだ……剣もきかないし……」
「どうやらお困りのようね」
俺が考えていると、背後から声をかけられた。振り向くと、白いローブを着ている人物が立っていた。顔はフードで隠れていてわからない。
「だ、誰っすか、あんた!」
その人物はフードを取った。それは俺が知っている顔だった。
「あ、アマネ?!」
アマネと言われた少女はにこりと笑う。
「久しぶりね、タクト」
「兄貴、知り合いっすか?」
「前にいたパーティーの仲間だよ。でも、どうしてここに?」
「話しは後よ。このスライムは私に任せなさい」
アマネはそう言うと、俺の横を通り過ぎ俺たちの前に立った。そして、持っていたステッキを空に向けた。
「空に轟く雷よ、この者たちを焼き尽くしなさい。シャイニングサンダー!」
アマネの呪文とともに、空からいくつもの雷がスライムたちに落ちてきた。そして、跡形もなく消しさってしまった。
「あらまー……一瞬で終わっちまいましたね」
「アマネ、相変わらずすごいな」
「そうかしら。でも、やっと見つけたわよ! タクト」
アマネは俺に近づくと、いきなり怒り始めた。
「一体今までどこで何をやってたのよ! すっごく探したじゃない!」
「ご、ごめん。でも、団長に追い出されたからいろんなところに行ってたんだよ」
「あのー……」
俺とアマネが話していると、アキトがすまなそうに口を出した。
「それでアマネさんは兄貴を心配して探しにきたんすか?」
「べ、別に心配だから探してたんじゃないんだからね!」
アキトの言葉にアマネは慌てながらそっぽを向いた。それにアキトは、にやにやしながら俺に耳打ちした。
「兄貴、あれは俗にいうツンデレってやつですよ」
「ツンデレ?」
「ちょっとそこ、聞こえてるわよ! 誰がツンデレですか!」
「まぁ、いろいろ聞きたいことはあるけど、まずは腹ごしらえしないか?」
「賛成っす!」
それから俺たちは休憩もかねて食事をすることにした。