13 温泉でリラックス
「はー……やっぱり温泉は気持ちいいなー」
「そうっすねー。疲れが吹き飛びますよー」
どうも、皆さん。タクトです。なんで、俺たちが温泉に入ってるかって?
本当あの後大変だった。俺が結界を解いたらアキトたちと合流できたけど、騒ぎを聞きつけた衛兵がやって来るし、団長はそのまま病院行き。俺の大剣はボロボロになり、使えなくなったので鍛えなおすことになった。
「でも、団長さんはなんで魔王と契約したんすかね?」
「わからないな。もしかしたら皆がやめてさみしかったのかな」
他から聞いた話だが、団長は今も入院しており、魔王と契約したため団長のパーティーは解散となったらしい。
「……まぁ、それでパーティーがなくなってしまったのは、自業自得だな」
「そんなこと言ったらかわいそうですよ」
ツルギとたかしも話に加わってきた。すると、アキトがにやにやしながら俺を見てきた。
「でも、兄貴もすみに置けないっすね。これでアマネさんは兄貴のものなんすから」
「は? なんのことだ」
「とぼけても無駄っすよ。あの勝負、兄貴が勝ったんすからアマネさんは兄貴がもらうってことでしょ?」
「いやいや、アマネは大事な仲間だから、勝負しただけだよ」
「えー、それだけであんなに必死になりますかね?」
「俺とアマネは別にそういう関係じゃないよ!」
俺がそう言うと、向こう側から石けんが飛んできて、見事に俺の頭にヒットした。
「いてっ!」
「今のは確実にアマネさんすね……」
(女性サイド)
「まったく、何を話しているのかしら……」
アマネは頬を膨らませていた。それを見たモラはくすくす笑った。
「あらあら、元気がいいのねぇ」
「男子は変なことで盛り上がるんだから!」
「でも、あなたはタクト君のことになると、すごく感情的になるのね」
「え?」
「だって、タクト君が勝った時、とてもうれしそうだったじゃない」
「そ、それは仲間だからですよ」
「本当にそれだけ?」
「それだけです!」
すると、モラはアマネに近づき耳元で囁いた。
「あなた、タクト君のこと、好きなんじゃないの?」
それを言われたアマネは、途端に真っ赤になった。
「そ、そんなことないです! ありえない!」
「あら? ならお姉さんがもらっちゃおうかしらん」
「それはダメ!」
「あら、どうして? あなたには関係ないんでしょ?」
「そ、それはそうだけど……」
「うふふ。ちょっとからかいすぎたわね」
モラは微笑みながら温泉から出た。そしてアマネに振り返る。
「あなたはもう少し、自分の気持ちに正直になった方がいいわよ?」
それだけ言うと、モラは温泉を後にした。残されたアマネはぽかんとしていた。
それから俺たちは温泉を出て、広いフロアにいた。
「はー、温泉気持ちよかったなー」
「タクトさん、さっきもそれ言ってましたよね」
「だって本当のことだものー」
「……なんだ、その気のゆるみようは」
「まぁまぁツルギ。今はクエストじゃないんだから、羽を伸ばそうよ」
ツルギは何か言いたそうだったが、何も言わず椅子に座った。あれ? なんか機嫌悪い?
「あら、殿方たちはもう出てたのね」
「あ、モラ姉さん!」
女風呂からモラが先に出てきた。アキトはモラに会えたことでテンションが上がっていた。
「そういえば、姉さんが持っていったオークの牙はどうなったんすか?」
「あぁ、あれね。ちゃんと加工してもらってるわよ。タクト君の大剣と一緒ぐらいに出来上がるんじゃないかしら」
「じゃぁ、もう少しかかりそうですね」
たかしの言葉に、モラは何か思いついたように手を叩いた。
「そうだわ! 待ってる間に皆で買い物とかしておきましょうよ」
「あぁ、いいかもな。ちょうど薬とかも少なくなってるし」
「なら、タクト君は食料とかをアマネちゃんとお願いね」
「え?」
「……俺は少し外させてもらう」
ツルギはそれだけ言うと、休憩所を出て行ってしまった。
「あら、なんか怒らせちゃったかしら」
「ツルギはいつもあんなだから、大丈夫っすよ」
「そう? じゃぁあとの2人は私と薬草の調達ね」
「わかりました」
「やっほー! 姉さんと一緒のグループだ!」
モラと一緒でアキトはすごくうれしそうだった。すると、少ししてからアマネが出てくる。
「なんか向こうまで騒がしいのが聞こえたんだけど、何を話してたの?」
「あぁ、アマネおかえり。今皆で買い物に行こうかって話をしてたんだよ」
「そうなの?」
「あなたはタクト君と一緒ね」
「は?!」
アマネが驚いていると、モラが近づいてまた耳元で囁いた。
「ちゃんと自分の気持ちを伝えるのよ」
モラはくすりと笑ってアマネから離れた。言われたアマネは顔を真っ赤にする。
「どうした、アマネ。顔、真っ赤だぞ?」
「う、うるさい!」
アマネはそのまま休憩所を出て行ってしまった。俺も慌てて後を追った。