4.恋の芽生え
今回は当初の予定通りヒロイン視点となっております。
高評価してくださった方ありがとうございます。
嬉しかったので予定より早めに投稿します。
さくら視点
いつもと違って目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた私は、思い切って布団から出ます。今日は楽しみにしていた入学式でしたので、遅れることがないようにと、早めに寝た甲斐がありました。窓の外を見ると、まだ暗い空が広がっています。今朝は少し寒いようでしたので、毛布を羽織って部屋を出ました。
トイレに行き、歯を磨いた後に、制服を着始めます。白いブラウスと紺色のスカートを履き、髪を整えて鏡を見ます。私は、自分の顔を見て微笑みました。新しい学校でも新たな友達ができることに期待し胸を躍らせます。
朝ごはんを食べて準備を済ませると、学校指定のバッグを持って家を出ました。空は気持ちのいいほど晴れ渡る青。歩いていると、ある香りがただよってきます。それは、春になるとよく香る桜の香りでした。私は、私と同じ名前をした木の香りを胸いっぱい吸い込みます。
「今年も桜が咲く季節かぁ」
この香りを嗅ぐと、新しい季節の到来を実感することができるから大好きなんですよね。桜が咲いている景色も、私の名前も。
私はそんなことを思いながら、通学路を歩いていきます。
高校でも同じ学校に通う陽子との待ち合わせ場所に着くと、陽子がすでに待っています。彼女は、私に気が付くと笑顔で手を振ってきました。
「おはよう、咲ちゃん!今日から高校生だね!」
「おはよう、陽子!学校楽しみだね!」
陽子は初めての高校生活に浮かれているのかこんなことを言い出します。
「もう高校生だし、そろそろ彼氏欲しいよね!」
確かに彼氏は欲しい。でも、私はちょっと不安でもあります。
「そうだね。でも、男子とお付き合いするのって、私にはハードルが高いんだよね。男子と話すだけでも、めちゃくちゃ緊張しちゃって。それに、好きな人に告白するっていう勇気もないし…」
「大丈夫!咲ちゃんは可愛いんだし、もっと自信をもってアタックしなきゃ!あたしたちに彼氏ができたら、一緒にダブルデートとかしようよ!楽しいことが待ってると思えば、勇気も湧いてくるでしょ!」
陽子は積極的だなぁ。私も見習わないと…
私は、陽子の言葉に少し救われたような感じがしました。
「ありがとう、陽子。私、頑張ってみるね」
「うん!一緒に頑張ろ!」
学校に着き、私達はクラス分けの結果を見に行きます。たくさんの生徒が集まっている中で、私と陽子は自分の名前を探し始めました。すると、私達の名前が同じクラスに書かれているのを見つけました。私は陽子と顔を見合わせました。
「やったー!陽子、同じクラスだよ!」
「ほんとだ!やったね、咲ちゃん!」
私たちはほっとした表情で、クラスの場所に向かいます。同じクラスになって本当に良かった。これで、少しは不安な気持ちも和らぐかもしれない。
「じゃああたしは近くの席の人に挨拶してくるから!」
そう言って陽子は私から離れていきました。私も挨拶してこなきゃ!
ちゃんと話せるかな?隣の人が怖い人じゃなければいいんだけど…
今になって緊張してきちゃった…
ダメダメ!陽子もいないんだしこれくらい一人で乗り切らないと!
私は気合いを入れ直し、思い切って自分から挨拶をしてみることにします。
隣の席の人はまだ来てないようでしたが、何とか無事に周りの人と挨拶することができました。
隣の人、一体どんな人なんだろう…
そう思っていた時、教室のドアが開く音が聞こえました。
「おはよう!みんなこれからよろしく!!」
その男の子は元気に挨拶をしながら入ってきます。
かっこいいな…
素直にそう思いました。
身長は大きめで、体型はやや細身だけどスポーツをしているのか引き締まっています。顔立ちもよく、明るく大きな瞳が印象的です。黒髪を短く切っており、前髪は流し、後ろ髪は少し立ち上がっているのが分かります。
そして何より、男子なのに物怖じせずに堂々と入ってきたのに驚きました。
大体の男子は目立つことを嫌い、挨拶なんて軽く済ませて同性同士で集まって話していますからね。
みんなもそう思ったのでしょう。彼は周りの視線を独り占めしています。
彼は一緒に来ていた男の子と軽く話した後、まっすぐこちらに向かってきます。
えっ!?私!?
「おはよう!隣の席の人でいいかな?俺の名前は太陽 光。これからよろしく!」
「あ、はい。さくら 咲です。こちらこそよろしくお願いします」
なんと、こんなカッコイイ人が私の隣の席の人ですか!?緊張して無難な返事しかできませんでした…でも、これはもしかすると、私の青春も少しは期待できるものになるかもしれません。
そのまま流れで彼と話していると、あっという間に時間が経ってしまったようで、すぐに担任の先生が入ってきて、入学式へと案内されることになりました。
…校長先生の話って長かったはずだったんですけど、彼との今後について考えていた私にとっては、あっという間の出来事でした。
気が付いたら学校の施設を案内されていました。
残念ながら近くに彼の姿はありません…
正直学校の施設なんてどうでもいいので、彼について知りたいです。
そんなことを考えながらも表面上はうまく取り繕いながら、先生の指示に従って歩いていきます。
………取り繕えてるよね?
そうこうしているうちに、ついに自己紹介の時間がやってきました!
彼のお友達と思われる方(月城くんというらしい)や、陽子の挨拶を聞きながら、私は自分の自己紹介を考えます。
彼はどういった女の子が好みなんでしょう。どうせなら彼の印象に残るような自己紹介をしたいものですが、彼の好みがわからないので下手なことも言えません。
結局答えは出ないまま私の番となってしまいました。
「みなさん初めまして、私はさくら 咲といいます。少し人見知りな一面もありますが、少しでも早くみんなと打ち解けることができるように頑張って話していきたいと思います。これから一年間よろしくお願いします」
仕方なく私は無難な自己紹介をすることにしました。他の人と話したいとさりげなくアピールすることも忘れません。
そして待ちに待った彼の番がやってきました。
「はじめまして!太陽 光です!身長は173cm、趣味は体を動かすのが大好きです!みなさんと一緒に色々な事を経験したいなと思っています!好きな色は赤色です!たくさんの友達を作りたいので、じゃんじゃん話しかけてください。これから一年間よろしくお願いします!」
趣味なんかは先ほどお話ししたときに聞くことができていたのですが、まさかこんなにも女の子が周りにいる状況で、話しかけてほしいなんて発言するとは、彼には危機意識というものが足りないのかな…
しかも色々な事を経験したいなんて、そんな大胆な…
私の頭の中はその色々な事でいっぱいになりました。そのせいで、気が付いたら休み時間に突入していたようです。
ボーっとしている間に陽子が彼に話しかけていました。私も頭の中を切り替えて会話に加わらなくては!
「陽子は私と同じ中学から来た親友なんですよ」
あくまでも私が紹介したという形にしたくて、とっさにこんなことを言ってしまいました。…ごめんね、陽子。
しかしそんな謝罪の気持ちは吹き飛んでしまいました。その後事件が発生したのです!
「はい、そうです!咲ちゃんにはいつもお世話になってます。太陽くんも仲良くしてね♪」
陽子はニヤニヤと笑いながら彼に近づき、そして、彼の腕をとりました。突然のことで止める間もありませんでした。
しかも事件はそれだけではありません。
「苗字呼びだと距離感じちゃうから光くんって呼んでいい?あたしのことも陽子って呼んで♪」
「お、おう!」
「えっ!?」
ま、まさかの名前呼び!?しかもOKされちゃってるし!?思わず声出ちゃったじゃん!!私だって名前で呼び合いたいんだケド!!
「光くん、今度一緒になにか運動しよう!私と一緒なら、もっと楽しく運動できるはずだよ♪」
ちょっと待って、運動ってそれ絶対変なこと考えてるよね!?
「うん、いいね!陽子と一緒なら、いつもより楽しくなりそうだよ」
ああ、ダメだ。純粋そうにしている彼の眼を見ると、私は何も言えなくなってしまいました。
これから先、多数の女子から狙われるであろう彼の貞操を、私はどうやって守っていけばいいんだろう…
さくらとひまわりは、モヤモヤしてしまうけどギスギスはしないような関係にしていきたいですね。
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