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盗賊ちゃん3話

 それから数時間後、私は不思議な夢を見た。


 暗い闇の中に浮かび上がる、小さな灯。


 近寄ってみるとそれは私の姿だ。


 しかしその姿を見るだけで不思議と元気が出てくる。


 私はその灯に向かい歩を進めると光に包まれる。


 暖かく優しい、そんな気分になれる光景。


 これは一体……? ふと、隣に誰かがいることに気がついた。


 視線を向けるとそこには妹がいた。


 幼い容姿をしており、体も一回り小さい。


 服装も薄汚れていて髪もぼさついている。


 それでも瞳に宿した意志の強さは変わらない。


 まるでこの世界を変えたいと願っているかのように。


 私が手を伸ばすと少女も同じように手を伸ばした。


 一瞬だが、しっかりと繋がったような気がした。


 ……ああ、そうか。


 きっとこれが絆というものなんだ。


 たとえ血の繋がりがなくたって私たちは姉妹。


 お互いがかけがえのない存在であり大切なものなのだ。


 私たちはお互いに離れないように手を繋ぎあったまま意識を失った。


 ―――

 ――

 ― 目を覚ますと、そこは檻の中。


 あの時見た夢は何だろう。


 とても懐かしくて温かいものだった。


 私は繋いだ妹の手の温もりを感じる。


 大丈夫。


 私たちには絆がある。


 きっと運命だって乗り越えられる。


 例え、どんな困難が立ち塞がっても私は妹を守ってみせる。


 この身に代えてでも。


 あれから数週間が経過し、ようやく体の麻痺が完全に治った頃だった。


 私を落札したのはまだ若い男の冒険者パーティのようだ。


 人数は五人でリーダーと思われる男は見目麗しい美青年だった。


 仲間の女性陣も同様で男性女性共に容姿のレベルが高い。


 一人を除いては。


 その一人とは私を買った奴隷商人の隣にいた女だ。


 いかにも我欲が強く傲慢さがにじみ出ている顔つきをしていて正直なところあまり関わりたくない人種だと思った。


(さて、どうなることやら)


 これから彼らと一緒に過ごすことになる。


 とはいえ、いきなり襲い掛かってくるということはないだろうがなるべく従順な態度で接しようと心の中で誓った。


 だが、私の予想は大きく外れることになった。


 まず、全員が私に対して笑顔を向けてくれたのだ。


 まるで、家族に向けるような優しい笑顔。


 なぜ彼らは私のような境遇の人間にまで優しくしてくれるのだろうか。


 疑問を感じつつも数日間お世話になった牢屋から離れる日が来た。


 少し寂しさもあるが檻から出て彼らに付き従うことにした。


 移動の際、馬車に乗せられたが特に何もされなかった。


 ただただ和やかなムードのまま時間は過ぎていった。


 目的地に到着するまでずっと私は彼らに質問をしたのだがやはり答えてくれることはなかった。


 ただ、私はその態度でなんとなく察していた。


 多分、私を助け出した理由は何かしら理由をつけて売るためだろうと。


 恐らくは私だけではなく姉であるトリアの方を売りたいはずだ。


 だが、それをすると貴族としての生活ができなくなる可能性が高くなるから断念したといった感じだろうか。


 そしてついに町へと着いたのだった。



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