盗賊ちゃん第二話
その隣には見張りらしき男が二人いてまるで囚人に対する態度ではない。
「なぜ……こんなことを……!」
「言っただろ。俺は奴隷商人の奴隷さ。主人の意向に従うしかないんだよ」
奴隷商人? 何を言っているのだこいつらは? まさか……私達はこいつらに奴隷として売られたというのか。
「なんで、どうして! 父に売られたのならわかるわ……。だけど私達は盗賊に攫われて連れていかれたのよ!? なのにそれがどうして奴隷として売られているの!?」
「……お前を拐った奴らが何者か知らんが大方依頼主から『捕まえて売ってくれ。できれば高い金を出して買う』とでも言われたんじゃねーかな?」
そんな話聞いたことがない。
ただ分かる事は、私たちはもう元の世界に戻ることはできないと言う事だ。
例え、奴隷商から逃げる事が出来たとしても、今度は何処に行っても狙われるかもしれない。
それに、また同じことを繰り返す可能性も高かった。
奴隷という身分では冒険者としての活動もままならない。
結局は、何もせずに静かに生活しなければならない。
つまり、詰んでいるということだ。
これから一生をこの場所で過ごすなんて到底受け入れることができない。
「……一つだけ……あなたたちに質問があるわ」
「ん? 何だい」
「お願いだから私達を解放して。お金が必要ならば払うから……私は冒険者として稼ぎたいの」
男は呆れたように首を振って私の提案を否定する。
「バカ言っちゃいけないぜお嬢ちゃん。確かに俺に君たちを買うだけの金はあるけどそれはできない相談だ。悪いことは言わねぇから大人しくしときな。まあ、お前らみたいな美人の姉妹なら別嬪の娼婦くらいにはなるだろうよ。そういう目的で人買いに売り払われるよりはマシだと思えよ。運が良ければ性病にはならないだろうしな。じゃあな」
それだけ伝えると彼らは行ってしまう。
私は、悔しさと悲しみで胸が張り裂けそうになった。……せめて妹だけでもここから逃してあげなければ……。
そんな思いを抱きながら再び眠りについたのだった。