その少女トリア
まず最初にこの作品は作者が遊びでAIに手を出した最初の作品です。
なので内容はあまり期待できないと思っておいてください。
設定だけ作者が考えてAIに丸投げしてしまったらどうなるのかと言う実験をお楽しみください。
「はぁ...はぁ...」
赤毛の少女は汗を滴らせながら追ってから逃げまどっていた。
「おい! 奴はどこに逃げた!?」
「あっちを探せ!!」
などと言われているので早めに退場願いたい。
私が名家のフィストレイン家に盗みに入ったのは他でもない妹のユシアの為だ。
私とユシアは有名な貴族の娘だったが、ひょんな事をきっかけに親と財産を失ってしまった。
幸いにも貴族として生活していたおかげか庶民に比べて貯蓄があり、かつ私は幼い頃から冒険者という荒事に関わってきたので戦闘力には自信があった。
だから、危険と隣り合わせの冒険者を仕事にしてユシアを守るために頑張ったのだ。
この盗賊家業だって必要悪だが私は妹が助かるなら罪悪感は無かった。
しかしそんなときにあいつらは現れた。
最近急成長している奴隷商人、【ナイトメア】。
闇ギルド【ナイトメア】の幹部と名乗るあいつらの言葉はとても信じられるものではなかった。
あの男から聞いた話によると親や家族を失った貴族、もしくは貴族の地位を奪われて落ちぶれてしまった家を狙い子供を誘拐して奴隷にして売っているとか。
なんて非道だろう。
許せないと思ったし、実際に証拠を集めて突き出そうと思っていたのだが……。
「まさか【ナイトメア】が私の家を嗅ぎつけるとはね……!」
おそらく私達がいなくなった事で捜査網が【ナイトメア】にまで伸びてしまったに違いない。
「もうすぐ裏通りに入る! そうしたら物陰に隠れないと……!」
こんなとき冒険者として鍛えてきた経験が生きる。
追ってくる男たちの注意を引くようにあえて人通りの少ない裏路地に逃げ込んで、そこに隠れた。
「ふぅ~……ようやく撒いたかな?」
男達は後ろを見ていないか確認するとゆっくりと進んでいく。
油断してくれたみたいだ。
(よし、これでしばらくは大丈夫)
あとはこの壁を乗り越えればなんとかなるはず。
「さっさと妹を助けに行かないと……ッ!」
体力があまり無いために息を切らせて壁に手を付いた瞬間だった。
ドン!! という音がしたかと思うと急に全身から力が抜けていく感覚に陥り地面に倒れ伏す。
「ぐ……こ、これは……毒?……いや……麻痺!?」
体には一切の痛みが走らずに痺れるような脱力感が襲ってきた。
急いで立ち上がろうとしても指先すら動かなかった。
声を上げようとしても口も上手く動かない。
目だけを動かして何が起きたのか確かめるとそこには白衣を着た研究者風の男が立っていた。
「ああ、申し訳ありませんフィストレインさん。あなた方のご両親は大変素晴らしい研究材料でしたのでこちらに引き渡させていただきました。娘であるお二人も今後の実験の為に頂いていこうと思いましてこうして手を施していたのです。さすがですなぁ。即効性の致死性毒で殺さず生かすことは中々難しい。特に抵抗してきた場合では尚更ですよ。それに加えて対象物を無力化する魔法を付与した特注品なのでね」
男は自慢げに話すと動けない私を一睨みして脇を通り過ぎようとする。
しかし私が目に涙を浮かべて必死に訴えかけると歩みを止めてくれた。
「くっ……くく……。あははははは!!!」
男が突然笑い始めた理由がわからずに戸惑うと、彼は心底嬉しそうな笑顔で私達を見た。
「馬鹿な女め。お前の事を誰だと思っている。フィストレインの娘の一人、トリア・フィストレインだろう? その美貌、体つき、髪色、そして特徴ある顔……調べさせてもらったよ。俺は君たちがよく知っている男から依頼されてここに来たのだよ。まあ簡単に言えば『フィストレイン家の娘を引き渡す代わりに金を払ってやる』と言われたわけだな。まったく、この国の貴族は本当にバカしかいないようだ。自分の血筋が優秀だと思い込みたがるのかね?……まあいいや。とりあえず引き取り手が見つかるまでは可愛がってあげるよ。【ナイトメア】のためなら命ぐらい簡単に捨てられるように教育しないとねぇ。……それにしてもまさか本当に娘を差し出すとは……! 愚かなことをしたものだぞ、アルフォードよ……」
アルフォード……その名を聞いた瞬間に私は理解してしまった。
目の前にいる男こそ私たちを捨てた父の名前だと。
やはり……あのときすでに父親は既に【ナイトメア】の手中で、貴族としての地位を捨ててまで行った行為はすべて裏切られるどころか利用されていたのだ。
悔しかったけど同時に安心した。
これで私たちは父の悪事とは無関係だったことが確定したからだ。
だが、今は安心できる状況じゃない。
一刻も早くこの状況を脱しなければ最悪殺されてしまうかもしれない。
「ああ、心配しないでも君は良い素材になるんだから傷つけるつもりはないよ。せいぜい、我々が開発した精神支配薬の実験台になってもらおうか。なに、後遺症や副作用はないから死ぬこともないだろうさ。ただし、その時の精神状態によっては壊れるかも知れないが」
精神の支配というだけでも恐ろしいのにこの男の眼は明らかに狂っていた。
こいつは危険すぎる。
今まで見てきた犯罪者の中でも段違いの悪意を感じた。
「トリア、ユシア、すまなかった。お前たちの親としての責任を果たせなかった私を許してくれ……。だが、これしかなかったのだ……。せめて、最後の願いを聞いてくれ」
男はそう言い残すと裏通りに止めてあった馬車へと向かい、私たちを置いてどこかへ行ってしまった。
(このままじゃ……!)
おそらくこの場には警備の人間が来るだろうがそれまで私は保たない。
妹が、あの子が私の代わりに捕まってはいけない! 必死に足掻こうにも指先はピクリとも動かず次第に意識が遠退いていく。
「ゆ、しあ……逃げなさい……貴方だけは……どうか……幸せに……」……そして私の意識は完全に暗転した。
―――――
―――
―
「うっ……」
目覚めると、そこは檻の中。「な……にが……どうなって……ッ!」
慌てて立ち上がろうとしても体が言うことを聞かない。
まだ麻痺が治りきっていないのだろうか。
「あぁ起きたかい。調子は……まあ聞くまでもないか」
声のする方向を見ると白衣を着た男が檻の前にいるのだった。