影の薄い王太子とゴージャスな婚約者
三人称に初めての挑戦です!
「皆さん、おはようございますわ」
豪奢な縦ドリルの金髪に宝石のような赤い目のリーズ・キャスマン公爵令嬢が教室に入ってくる。
・・・・隣に薄茶の髪に緑の目をした穏やかそうな青年を伴って。
「おはようございます、リーズ様」
「おはようございますわ」
次々と挨拶を返す生徒たち。
その中で、隣の青年には声をかけないのか?そんな疑問を持った生徒がひとりだけいた。
黒髪に青の目をした可愛らしいがあまり目立たない、レイルア・ロークス子爵令嬢だ。
他の生徒たちは彼の存在に全く気づいていない。
レイルアは彼が誰なのかはわからないが、存在には気付いていた。
レイルアはリーズがよく彼と一緒にいるところを目撃していた。
目立ちまくりのリーズはいれば必ず目に入ってしまうのだ。
最初はリーズの従者か何かかと思っていたが違和感も感じていた。
そんな時リーズ・キャスマン公爵令嬢には王太子の婚約者がいるという噂を聞いた。
他のものが王太子を躍起になって探している中、レイルアはあのいつも隣にいる青年が王太子でリーズの婚約者だったのかと気が付き、1人青くなった。
存在に気付かないだけでなく、今まで自分も含めて誰も挨拶をしてこなかったのだ。
だが、王太子の存在は今まであまり知られていなかった。しかも肝心の本人は影がとても薄い。
誰も気が付かないのは、ある意味当然と言えるのかもしれない。
♢ ♢
「それにしても誰もシュラウドに気付かないのね」
「そうだねぇ。でも実際僕は影が薄いからしょうがないよ」
「そんなこと言ってあなた、優しすぎるのよ。やろうと思えば不敬罪で処罰することもできるのよ?」
「僕にはそこまでできないよ」
そんな会話があったとかなかったとか。
♢ ♢
そして学園卒業後、王太子と公爵令嬢の結婚式が盛大に行われた。
みんなに祝福されながら幸せそうな表情で手を振る公爵令嬢の隣には薄茶の髪に緑の目の青年が同じく幸せそうに微笑みながら手を振って寄り添っていたという。
「やっとみんなに認識してもらえたんだ〜。よかったね、王太子様」
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