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クエスト2 ハーレム候補たちを口説け 2人目 その1

メロス   :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神    :メロスに憑りついている。現代知識となろうに詳しい。ハーレムを作りたい。土下座と三下ムーブは得意。

ルート姫  :邪神を偶然に馬車で轢きかけたことで知り合う。王都の民に人気がある。脈あり(邪神視点)

内務卿   :王都の内政を取り仕切る不気味な老人。スラム街の子供に執着している。

スクート王子:石化した王の代行。生意気系プリンス。

汁字ジルジ教、救世主ジルジが起こしたその宗教は今やアーカディア大陸に広く布教され一大宗教となっている。

これはまだジルジが丘で処刑される以前、まだ弟子の数も少なかった頃の逸話です。ジルジの直弟子である兄のシモーンと弟のヤンデレがその教義を巡って争っていました。


「弟よ、お前は全くわかっていない。重要なのは新父ニューファーザー配信ミサを聞きお布施をすることだ。この善行によって人は救済され天へと導かれるのだ。」

「兄さんこそわかっていない。大事なのは作品だ。作品に善音よいねし信仰する。人が天へと至る道はこれしかないよ。」


二人は人が死後に天国へと導かれるにはどうすべきかを言い争っていました。


「ふん馬鹿らしい。弟よ、お前が言っている作品に善音よいねしている連中というのは、あのジルジ様の話された龍探記第5章で幼馴染のリリンカと実家が太いイヴーラのどちらと結婚するかでもめている連中のことだろう。あんなものが天に通ずるものか。」

「兄さんこそ、新父ニューファーザーなんてただの画じゃないか。神ではなく紙にお金を貢いで何が善行になるんだい。」

「お前え、言っていいことと悪いことがあるだろう。」

「兄さんこそ、あれが作品史上、最大の選択なんだよ。」


ついに二人の争いは取っ組み合いの喧嘩にまで発展しました。やがて血を見ることになるのは明らか。そこに救世主ジルジが仲裁に入ります。


「こら、だめでしょ。二人とも兄弟なんだから仲良くしなきゃ、めっ。はい、ごめんなさいして仲直りしましょうね。」


ジルジの言葉に直弟子の二人は仕方なく頭を下げます。


「・・・、すまなかった。」

「僕こそ、ごめん。」

「BOOOOOOOOM、最後に謝った方が負け、最後に謝った方が負け。」

「違うし、兄さんが謝ったから、仕方なくだし。ほんとは謝ってないし。」


二人の争いは結局ジルジの仲裁にもかかわらず続きました。それは二人が天に召された今日こんにちでも。

兄シモーンが興した新父ニューファーザー派と弟ヤンデレが興した善音よいね派に別れ汁字ジルジ教の正しき教理がどちらにあるか日々争いが尽きることはありません。


******


「それで、僕は何をすれば。」


城に呼び出されていたメロスは遠慮がちに内務卿に質問する。

ここは王都ニューアルセスの中心に位置する王城の更に中心部、王子の執務室だ。なぜ田舎から出てきたばかりのメロスがそんな重要な場所に足を踏み入れられるのかと言うと、メロスが王都に来たばかりの頃に姫が乗っていた馬車に轢かれかけたことがあるからだ。その際に知り合ったルート姫のつてで今回は王城よりクエストの依頼が来たのだ。

今回の依頼は高度に政治的な宗教内の対立が関わっているということで、その手の話に詳しくないメロスに内務卿は歴史の話を始めたのが冒頭の話というわけだ。

内務卿はこういった解説が好きなのか、さっきから身振り手振りに台詞の演技も交えて説明してくれる。メロスは初めて聞く話に興味深く頷いていた。


「内務卿、そろそろ本題に入ったらどうだ。」


しかし、もう聞き飽きたスクート王子はうんざりした声で話を中断させる。


「きっしっし、左様ですね、殿下。この両派はどちらが正統かで常に争っておりましてな、しかし最近では平和的に競うことが盟約で決まっております。そう再誕祭で信者獲得競争が行われるのです。」

「信者獲得競争、ですか。」


そういうのを競技にしていいのかメロスは疑問に思った。何というか一生を左右しかねない選択な気がするのだが。


「きっしっし、メロス殿は真面目でいらっしゃる。この再誕祭で入信したものは一年縛りで乗り換えることが許されております。それゆえに毎年競技として成り立つのですよ。」

(そんな携帯電話じゃあるまいし。)


邪神が呆れ気味に言うがもちろんその言葉はメロス以外には届かない。メロスに取り憑いている邪神の声は宿主であるメロスにしか聞こえない。


ばちあたりだとおっしゃる人もおりますが、しかしそうでもしないと両派の争いは歯止めが効きませんので、苦渋の選択なのですよ。」

「内務卿、話が脇にそれているぞ。」


いらいらした様子で王子が言う。随分と短気だがそのような気質で統治者としてやっていけるのだろうか。メロスは故郷の村長ののほほんとした顔を思い浮かべるが村と国ではその重責も心労も桁違いだろうと思い直す。


「お兄様、よろしいではありませんか。メロス様には事情を知っていただかないと、これから大事な御役目をお願いするのですから。」

「ふん。」


脇に控えていたルート姫のとりなしにを王子は不満気ながら矛を収める。


「きっしっし、それでは続けさせていただきます。再誕祭では両派がそれぞれ信者勧誘のため催し物をいたします。それが何分、近年先鋭化を始めまして。争いを抑えるためのもののはずが、この前は黒騎士団が動かねばならなくなりました。」

「前回はそれで善音よいね派が大勝したのだ。当然、今年は黒騎士団が目を光らせているから二度目は無いだろうが。問題は新父ニューファーザー派だ。前回の雪辱を晴らすためにより過激な行動に走るかもしれない。いや既にその動きがある。もし今回、新父ニューファーザー派がその方針で勝つことがあれば、来年は善音よいね派がやり返す。そうなれば最早収拾はつかなくなるだろう。今年、なんとしてでも新父ニューファーザー派の動きを抑えねばならない。」


王子が内務卿の言葉を引き継ぎ一息に言い切る。メロスがこの執務室に入ってから終始いらいらした様子に見えた王子はよく見れば唇が振るえているのがわかる。

王子はメロスに苛立っていたのではなく怯えていたのだ。その心のうちを隠そうとして周囲に攻撃的になっていたのだ。


「王子様も大変ですね、邪神様。」


メロスにはわからない重責があることを理解して、そう邪神へとこっそり言う。しかし、邪神はもっと別のことに夢中のようだ。


(むふふ、これから姫ちゃんの護衛か。これはかっこいいところを見せないとな。むふふ。)


邪神はハーレム候補の姫にお近づきになれるチャンスに妄想を膨らませている。


「だめですよ、邪神様。王子の護衛も忘れちゃ。」

(大丈夫だ、メロス。ちゃんとわかっている。だが不可抗力で邪魔者が消える分には問題ないだろう。)


ほんとにわかってるのかな。メロスは不安になった。

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