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クエスト2 ハーレム候補たちを口説け 1人目 その5

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神  :メロスに憑りついている。現代知識となろうに詳しい。ハーレムを作りたい。土下座と三下ムーブは得意。

グリ  :王都でスリをやっている孤児の子供。冒険者になってお金を稼ぎたい。

ストア :王都でスラムの子供たちの面倒を見ている少女。順調に好感度を稼げているはず(邪神視点)。

メロスとグリはギルドに着くと正直に邪神教団の幹部の男が自爆装置で勝手に壊滅したと報告した。いかにも嘘くさい話になってしまったのでメロスは話しながらだんだんと冷汗が出てきた。


「ああ、はいはい、あの件ね。もう聞いてるから。はい、これ報酬。」


だが、メロスとグリの予想に反して、あっさりとクエストの報告は受理されてしまった。


「え?君たちちゃんとクエスト票読んだのかい。ほら、ここに邪神教団で変な契約をしようとしている息子を説得してくれって書いてあるだろ。さっきその親子が来たよ。ほら、冒険者が来て契約を止めてくれたって。あれ、君たちなんだろ。」


なるほど確かに、読み返してみるとクエスト票にはそう書いてある。

メロスは寝ぼけてほとんどクエスト票を読んでいなかったが、グリはちゃんと読んでいたはず。横目でメロスが確認する。だが、グリはそっぽを向いて口笛でごまかしている。そうか、読み書きは苦手なのか。

ちゃんと確認しなかった自分にも非があるとメロスは溜息で済ませることにする。




「じゃあ、これがグリくんの分。」


報酬の丁度半分が入った布袋をメロスが差し出す。


「いいのかよ、兄ちゃん。」


口とは裏腹に遠慮なくグリはその袋を受け取った。


「グリくんが詐欺を見破ってくれたし、潜入に使った隠密技術もなかなかだったよ。」

「でも残念だったよなー。教団の名簿が見つかってたら特別報酬ももらえてたかもなのに。」


そう言うグリから見えないようにメロスは教団から偶然持ち出した本を隠す。グリはそれに気付かず小石を蹴っ飛ばした。


「兄ちゃん。やっぱりあの教団が言ってたストアって、ストア姉ちゃんのことだったのかな。」


グリの言葉に建物の陰に隠れたストアがびくついているのがわかる。メロスは体の位置を調節してグリの視線にストアが入らないように隠した。


「違うんじゃないのかな、ほら、ストアなんてよくある名前だし。」

「そうかなー。オイラ、ストアなんて名前、姉ちゃん以外に聞いたことないけど。」


隠れているストアが動揺して木箱につまづきけたたましい音を立てる。メロスは咄嗟に足元の木片を蹴っ飛ばして音を誤魔化す。


「いや、ストアって言ってなかったよ。スオアって言ってたよ、あの教団の人。」

「そうかなー。そうかも。うん、そうだよな、ストア姉ちゃんはいつもまっとうな仕事を見つけなさいって言ってたもんな。邪神教団で人を騙して金稼ぎなんてするわけないもんな。」


ストアが胸を押さえてくずおれる。通りすがりの人々がそれを見て人垣を作りだしたのでメロスはグリをその場から離すことにした。


「ほら、報酬も入ったし、ストアさんにお土産でも買って行ったら。市場に行けばなにかおいしいものがあるかも。早くしないと売り切れちゃうかも。」

「そうだな、兄ちゃん。ありがとな、次もいいクエスト見つけてくるから、いっしょにやろうな。」


グリは元気を取り戻して市場へと駆けだした。




「ふう、何とか誤魔化せたな。」


額の冷や汗をぬぐうメロスの背後にストアは立つ。だが、そこから何と声をかければいいかわからず立ち尽くしていた。


「あの、ストアさん。」


不意にメロスが振り返り、こちらに呼びかけてくる。ストアは完全に気配を消していたつもりだったが、油断できない。身のこなし同様にメロスの周囲の気配を読む力も、もう少し高めに評価しておく必要があるかもしれない。ストアは内心でメロスの評価を一段上げる。


「気付いてたのか。まあ、そうだよね。それより、ありがとう、あの子を誤魔化してくれたみたいで。」

「いえ、いいんですよ。ほら、ストアさんも困るだろうし。」


メロスが人畜無害な顔でこちらを見ているのが油断してはいけない。メロスの手にある、あの名簿は致命的になりうる。衛兵の詰め所にでも持っていかれたら最悪だ。ストアは一瞬、名簿に視線を走らせた。


「あ、これ。一応取っておきました。ほら、あの瓦礫の中から出てきたら困るかと思って。」


だがメロスはあっさりとその名簿を手渡してくる。ストアは虚を突かれて思わず聞いてしまう。


「な、何が目的なの。これと交換に要求するつもりなんでしょ。」


自分から言い出さなければうまく誤魔化せたかもしれない、いやここで全力で逃げてもすぐに追いつかれていたか。


「?いえ、特に要求とかはありませんけど。あの、ほんとに困るかと思って持ってきちゃったんですけどまずかったですか?」


メロスは一転して心配そうな顔をする。それを見てストアは思った。

そうか、そういう奴だったか。こういうのは初めてではない。特に年頃の男はこちらの好意を稼ごうとしてカッコつける。そういう下心のある善意なら利用しない手はない。今更、慣れっこだ。


「そうだったのね。ごめんね、疑っちゃって。それでさ、あの、一応感謝の印を示しておきたいんだ。ほら、何にもしないのは悪いしさ。メロスくんもさ、そういうことに興味があるんだろ。」


こうやって体よく利用できる人間を作っておくのは悪いことではない。大丈夫だ、少しの間我慢すれば済むことだ。


「そうですね、それじゃあ。お願いします。グリくんの良いお姉さんでいてください、これからも。」

「え?」


ストアにはメロスが言う言葉が理解できなかった。いや、言いたいことはわかるがこの場で言うようなことではない。


「あの、これは交換条件ですよ。ストアさんがグリくんの良いお姉さんでいる限り僕は黙ってますし、ストアさんが悪いお姉さんになれば僕もしゃべっちゃいますからね。」


それは交換条件になんてならない。あたしは孤児たちのために後ろ暗い仕事に手を付けている。あの子たちを裏切るなんて考えられない。いや、あの子たちを見捨てるならそんな仕事に関わる必要なんてない。だからこれは交換条件になんてならない。


「いや、違うでしょ。交換条件っていうのは、ほら、あたしの体を好きにするとか、恋人になれとか、そういうものでしょ。なんで、」


なんで、そんなお人好しなことが言えるのか。


「僕にも故郷にお姉ちゃんがいました。小さな村だったから血が繋がってなくても年長の子供は小さい子の面倒を見るものでした。僕のお姉ちゃんも血は繋がってなかったけど僕にとっては本当のお姉ちゃんで、大好きでした。そのお姉ちゃんに言われたんです小さい子は守ってあげなさいって。だからグリくんが傷つかないようにするのは僕にとってはお姉ちゃんとの約束なんです。絶対にやぶっちゃいけない約束なんです。」


メロスの話を聞いて、あの孤児たちのたくましく、無邪気で、脆い笑顔を思い出した。あたしが見捨てたらすぐに死んでしまう。腹を空かせたり、病気にかかったり、悪い大人に使い捨てにされたり、だからあたしにとってはあの子たちの面倒を見るのは絶対に破ることができない義務みたいなものだ。だって自分はそうされて育ったから。


「僕のお姉ちゃんはもういなくって、だから恩返しはもうできないけど、でももし、同じことをしている人がいたら代わりの恩返しになるかなって。だからもしストアさんが困っていたら、僕に何でも言ってください。僕の恩返しに利用されてください。」


そんなことを言う人間は今まで会ったことが無かった。大抵の人間は目を逸らすか、余計なちょっかいをかけてくるか、施しをして気持ちよくなって直ぐに飽きるか。だから、なんて言えばいいのかわからなかった。

結局何も言えないまま立ち去ってしまった。だから、口の中でつぶやいた一言は伝えられずじまいだった。いつかちゃんと伝えたい。それまでは、素直になれるまでは、秘密にしておこう。


「ありがとう。」





(なあなあ、メロス。俺はいいことを思いついたんだ。ほら、あの孤児の面倒を見ている女。あれ絶対なんか悪いことして金稼いでるよな。)

「あの、邪神様。そういうことはもうちょっとオブラートに包んでくれませんか。」

(いや、重要なのはここからで、その悪事をな、こう、暴いて、脅すのよ。最初は嫌われるかもだけど、なに途中から優しくすればいちころよ。)

「あの、邪神様。台無しなのでちょっと。」

(なにー、もしかして俺が寝てる間になんかあったんじゃないのか、おい、証拠は握ってるんだろうな。)

「あの、邪神様。僕、昔を思い出してちょっと感動してるので、あの、その話はやめてくれませんか、ほんとに。」

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