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クエスト2 ハーレム候補たちを口説け 1人目 その3

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神  :メロスに憑りついている。現代知識となろうに詳しい。ハーレムを作りたい。土下座と三下ムーブは得意。

グリ  :王都でスリをやっている孤児の子供。冒険者になってお金を稼ぎたい。

ストア :王都でスラムの子供たちの面倒を見ている少女。順調に好感度を稼げているはず(邪神視点)。

この邪神教団はただの似非魔法商品を売りつける詐欺集団ではないのか?

メロスが悩んでいるうちに壇上の話は一段落したらしい。『邪水じゃすい装置が撤去される。代わりに表彰状とメダルが続々と用意されている。


「それでは、ここで今月のランクアップ邪教徒の紹介を始めます。」


どうやらあの真偽不明の邪神グッズを売りさばいている邪教徒はその成績に応じてランク分けされているらしい。

司会が名前を読み上げていく。


「こちらの皆さんが今月のブロンズ邪教徒です。さあ、壇上にどうぞ。」


呼ばれた邪教徒たちが壇上で邪神に直接メダルをかけてもらっている。感極まって涙を流している邪教徒は本当に邪神とその商品を信じているのだろう。

順にシルバー邪教徒、ゴールド邪教徒が発表された。会場の空気が緩む。本来ならばここで終わりなのだろうが、しかし今回は続きがあるようだ。司会がおごそかに口を開く。


「さて、今回はついに、ついに、あのプラチナ邪教徒が誕生します。」


会場がどよめく。口々に邪教徒たちが隣と話し始める。


「まさか、あの。」「だって、邪神グッズの売り上げが1000万ゴールド必要なんでしょ。」「なんて熱心な邪神教徒、あこがれちゃうなー。」


どうやら、プラチナ邪教徒というのはそれだけ特別な存在らしい。会場が息をのんでその名前が発表されるのを待つ。


「ドゥルドゥルドゥル、ジャン。新しいプラチナ邪教徒は、スラム街にお住いの、ストアさんです。さあ壇上へどうぞ。」

「え?」

「え?ストア姉ちゃん?」


メロスとグリがその名を聞き同時に驚く。二人ともその名前に心当たりがあるからだ。でも、まさか、スラム街で孤児たちの面倒を見る、あのストアさんのはずがない。


「ストアさん、どうされました?スラム街で、孤児たちの面倒を見ているストアさん?」


いくら待っても当人が現れないことに焦れて、司会が詳しい個人情報を垂れ流していく。とても栄誉なことなのに、まるで恥ずかしいことのようにスラム街のストアさんが出てこない。会場がざわつく。


「髪は赤みがかった茶髪、身長は160センチ後半、スリーサイズは上から95、60、90.体重はヒミツの18才の女性のストアさん?」


もうごまかせない。間違いなく僕らが知っているストアさんだ。驚くメロスの隣でグリが動揺する。


「嘘だろ、姉ちゃん。だって、悪いことしてお金儲けしちゃいけないって。ストア姉ちゃんが、そんな。」


結局プラチナ邪教徒のストアさんは現れることなく、邪神教団の集会は終了した。最後には司会の男が会場にいるはずのストアを草の根分けても探し出そうとしたが、邪神がなぜかそれを止め、邪教徒たちは不完全燃焼のままお開きとなった。




一時的なショックから立ち直るとメロスとグリは退場する邪教徒たちに紛れ邪神教団のアジトの奥深くまで侵入していた。邪神教団の会員名簿を見つけることができれば、それをギルドに提出することでこの教団を壊滅に追い込むことができるからだ。


「兄ちゃん、真っ暗だけど、大丈夫か。行き先わかるか?」


暗闇が占める通路の中でグリの声が後ろから聞こえてくる。


「大丈夫だよ、それより静かに。見つかると、親玉に逃げられちゃうかもしれないから。」


見えないグリに指示をだすとメロスは息を潜めて進む。グリは盗賊見習いの職業のおかげか、ステータスの速度と技量が高めのおかげか、かなりの潜伏スキルで背後から気配を一切感じさせない。

これならまず見つかることはあるまい。メロスは安心して前方に集中すると先を急ぐ。





「グリくん、大丈夫かい。急ぎ過ぎたかな。」


背後があまりに静かなためしばらく進んだところでメロスは不安になり声をかける。だが返事はない。

当然のことだがはぐれた後に声をかけたところで今更だ。メロスは一人での活動が長かったのでこういったところでミスが出る。大丈夫だ気配はわずかだが、ちゃんと背後に感じる。メロスは引き返してグリを捕まえることにした。


「グリくん。ごめんね、ちゃんと声をかければよかった。」


メロスは謝罪しながら影の肩に手をかける。


「きゃっ。」

だが返ってきた声は少年にしても高いものだった。聞き覚えがある。そうだ、この声は。


「メロスくんか?見つかっちゃったか、気配を隠すのには自信があったんだけどね。もしかして、メロスくんも何か訓練でも受けてたの?」


驚きから立ち直ったストアが額に手を当てて困った気配をしている。


「あ、あの、すいません。僕は、その、そんなつもりじゃなかったんですけど。あの、グリくんには黙っておくので。」


会場でのプラチナ邪教徒の剣を思い出しメロスは慌てて言う。そんなメロスにストアはため息をつくと気を取り直したように言った。


「いや、いいんだよ。これはあたしの問題だから。いつまでも隠しておけるとは思ってなかったし。本当はもっと早く足を洗うべきだったんだけど、あの子を置いて行くわけにもいかないしさ。」


ストアが独り言のように事情を話す。メロスにはいまいち事情がわからないが、ストアはそもそもメロスにわかるように話しているわけではないようだ。これはあくまでも自分の問題だと、そういう口ぶりだった。自分でけりをつけるからこれ以上は詮索するな、と言外にストアは言いたいのだ。


「わかりました。とりあえず、僕が受けた依頼はこの邪神教団を潰すことなので、ストアさんの件には関知しません。」

「助かるよ。」


ストアの表情はとてもそう思っているようには見えないが関わって欲しくないという空気は充分に伝わってきたのでメロスはそれ以上言うことは止めた。そんなことより急を要するグリの探索を二人で協力して行う。


「ここは、金儲けに関してはそれなりに悪どい真似をしているけど、人攫いなんてことは許されてないからグリも無事だとは思うんだけどね。」


ストアが言うにはこの邪神教団はそれなりに金のある連中を騙して彼らにとっては小銭程度の金銭を巻き上げることを生業としているらしい。ぎりぎり合法といえるラインでしか活動していないようだ。そのため人攫いの様な強力なバックが居ないと即座にお縄に着くような危な橋を渡るようなことはしないからグリの身の危険は少ないはずだ。それでも、万が一を考えると早くグリを見つけた方がいい。

急ぐメロスとストアだったが一歩遅く、そんな二人にグリの叫び声が聞こえる。


「くそ、やめろ。離せ―。」

「くっくっく、俺は本物の敬虔な邪神教徒だ。ここにいる金に目がくらんだ連中とはちがーう。これからお前を生贄にして本物の邪神を降臨させるのだ。」


イキリ散らした自称敬虔な邪神教徒がグリを羽交い絞めにして危険なことをのたまっている。エンジョイ勢の中に紛れ込んでしまったガチ勢は孤独から極端な行動に出てしまったようだ。メロスがとっさに剣を抜こうとするがそれをストアが制止する。


「待って、あれは薬をやってる。ここでは禁止されてるはずなのに、どうして。」


メロスが視線で説明を求めると、ストアが詳しく教えてくれた。


「あれは精神をブーストさせるタイプの薬でやりすぎると幻覚が見えてくるの。問題はあれをやっていると常に頭が興奮状態になるから打撃耐性が異常に上がって制圧が難しくなるのよ。」


剣の峰で意識を刈り取りグリの安全を確保しようしていたメロスは考えを改める。いっそ殺してしまうか。物騒なことを考えるが、しかし薬で妙な強化をされていると死んだ後もしばらく動ける可能性が高い。できれば邪神にステータスを調べてもらえると確実な手段に出られるのだが、邪神は連続の徹夜でしばらく起きられそうにもない。

メロスが迷っている間にも邪教との目の動きが徐々におかしくなりグリに危険が迫っていることがわかる。


「あたしにまかせて、ああいう手合いには慣れてるから。隙ができたらグリを連れて逃げてね。」


ストアが覚悟を決めるとメロスの返事も聞かずに邪教徒の前に姿を見せた。


「ねえ、ちょっとそこのお兄さん。そんな坊やと遊んでないで、あたしといいことしない?」


男に媚びを売ることを生業にしている者特有のしなだれかかるような艶めかしい声の出し方。服装は一瞬で胸元と裾を切り裂いて扇情的な衣装に変えてしまっている。声色すら切り替え、くねくねとした体の動かし方も相まって暗闇で顔が見えないこの環境ではとっさにその商売女がストアだとは気付かないほどの変貌ぶりだった。


「ほら、あたし、ここのお偉いさんに呼ばれたんだけど、すぐに役立たずになっちゃったから、持て余しちゃって。お兄さんは強そうだから、あたしを満足させてくれるでしょ?」


匂いが漂ってきそうなしぐさに敬虔な邪神教徒がごくりと生唾を飲み込む。


「そ、そうか。そうだな、まあ、確かにこんなところでガキと遊ぶよりは楽しめそうだな。」


邪神降臨よりも大切な用事ができた自称敬虔な邪神教徒は、大切な生贄をさっさと捨てるとアラクネに誘われるモスキートのごとくふらふらとストアに近づく。


「さあ、行って。」


メロスはストアに促され喉を抑えて苦しそうなグリを連れてその場を離れる。だがストアの身を案じて一瞬ためらい後ろを振り返った。


「そ、それで、お楽しみってのは何をするんだい。へへ。」

「そう、急かさなくっても、時間はたっぷりあるんですから。」

「へへ、そうだな。お、俺はその手のには強いからな覚悟しておけよ。」

「まあ、楽しみ。でもあたしも大分強いのよ。このデュエ門、邪神モンスターズは。」


ストアがカードの束を持つと邪神教徒に突きつける。


「あたしの邪神デッキでお偉いさんの黒騎士デッキはすぐに役立たずになっちゃったんだから。あなたはどこまで持つかしら。」

「え、いや、え?」

「あら、何か勘違いしちゃったかしら。邪神教徒がお楽しみって言ったらこのデュエ門バトルって相場が決まってるでしょ?もしかして、エッチなお誘いと勘違いしちゃったのかしら。」

「ば、馬鹿言え。俺は最初っからそのつもりだったさ。いや、本当だぞ。」


どうやら、メロスの心配は杞憂だったらしい。メロスは知らないことだがデュエ門は邪神教団の主要な収入源の一つで、カードを刷るだけで金貨を無限に鋳造できると評判のあこぎな商売なのだ。


「なあ、兄ちゃん。さっきの人は。」

「あれは、通りすがりのカードゲーマーだから気にしなくていいよ。」

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