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クエスト2 ハーレム候補たちを口説け 1人目 その1

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神  :メロスに憑りついている。現代知識となろうに詳しい。ハーレムを作りたい。土下座と三下ムーブは得意。

グリ  :王都でスリをやっている孤児の子供。冒険者になってお金を稼ぎたい。

ストア :王都でスラムの子供たちの面倒を見ている少女。順調に好感度を稼げているはず(邪神視点)。

「兄ちゃん、兄ちゃん、ここにいるんだろ。」


どんどんと扉を叩く音と元気のいい男の子の声にメロスは眠い目をこすり起き上がる。結局2週間かかってやっと、全ステータスをアップさせることに成功した。10本の指全てを使ってひたすら銀ネズミを連打し、レベルアップ時のステータスを確認するという作業を邪神と交代で不眠不休で行ったメロスは疲れ切っている。同じ作業に付き合っていた邪神と銀ネズミはまだ熟睡している。

宿の扉を開けるとスラムの子供、グリがメロスを訪ねてきていた。耳ざとさはスラム出身故か聞き込みと土地勘でメロスの居場所を調べたようだ。


「兄ちゃん、ほら、約束だろ。冒険者の仕事をオイラにもやらせてくれるって。」


そうだっただろうか、グリに手を引かれ寝ぼけた頭で思い出そうとする。だが、グズグズに溶けた頭ではなかなか思い出せない。


「ほら、オイラ、いいクエストを見つけてきたんだ。これをやろうぜ。」


グリがぽんぽん話を進めるせいでなんだかメロスもそんな約束をした気になってきた。グリに渡されたクエスト票を見る。えーと、邪神教団の討伐クエストか、ふむふむ。どうやらグリはスラム街で暮らす子供だがちゃんと字が読めるらしい。おそらくグリの姉代わりのストアが教育しているのだろう。

メロスはぼんやりとした頭のままグリに連れて行かれるままに歩いていく。気付くと冒険者ギルドまでたどり着いていた。

いまいち文章が頭に入ってこないがグリがメロスを騙すはずもない。メロスはグリに頷く。

グリは喜んでクエスト票を受付に持っていく。一応メロスは周囲を警戒するが幸いというか以前に絡んできたジョルトとその一派はクエストでいないようだ。

そうして周りに視線を配っているとなにやらグリと受付で押し問答が起こっている。仕方ない、僕が行って話をつけよう。


残念ながらメロスはクエスト票の内容をちゃんと理解できていなかった。それぐらい眠かったのだ。もしちゃんと理解できていたら、この後の展開は少し違っていたのかもしれない。




無事にクエストを受領するとグリの提案でメロスは依頼の邪神教団について市場で聞き込みをすることにした。

この辺りは人通りが多く、特に商人や貴族が暮らす上層街とその日暮らしの労働者や冒険者が暮らす下層街、そして、そのさらに下のスラム街から出入りしている人が入り混じっていた。仕立ての良い衣類や新鮮な食材が軒を連ねる表通り。しかし少し裏に潜り込むだけで怪しげな薬を扱う売人に渡りをつけられる、そんな雑然とした活気に満ちた市場は確かに情報収集にはもってこいの場所だ。

「お兄さん、お兄さん、恵んでおくれよ。」

人の良さそうな顔のメロスが少し歩くだけでスラムから出入りしているボロ着の子供たちがまとわりつく。油断すると財布に手が伸びる彼らの相手に困りながらメロスは先に行ってしまったグリを探す。


「お前ら、この兄ちゃんはオイラの客なんだから、ちょっかいかけるなよ。」


ようやく見つけたグリがメロスの周りの子供たちを牽制する。それを聞いた物乞いの子供たちはすぐにメロスに興味を失い、まとわりつくのをやめた。


「なんだ、グリの金づるかよ。」「稼いだら、俺らにも分け前くれよな。」「あー腹減ったな、串肉屋の残飯でも漁ろうかな。」


さっきまで憐れみを誘うほどひもじそうだったスラムの子供たちはたくましい捨て台詞を好き勝手に言い三々五々に散っていく。その中の何人かをグリが捕まえ何かを聞いている。


「なあ、お前ら。この辺で邪神教団って聞いたことないか?」


グリの一言で子供たちが次々に自分たちが知っている情報を言い始める。


「肉屋の息子が嵌ってるんだって、なんかかわいい娘に勧誘されたとか言ってた。」「女の子がデートに誘われたらおばちゃんが出てきて勧誘されたって。」「なんか不思議な水道管を買わされたって、馬屋のおっさんが愚痴ってた。」「それ取り付けてたの、飲んだくれの大工のおっさんだろ。」「そいつならよく、下層のほら、この前潰れた機織り工場の空家によく出入りしてたぞ。」


みるみるうちに邪神教団のアジトが判明する。さすがは耳ざといスラムの子供たちといったところか、いやもしかしたらそれぐらいはしっこい子供でなければ生き残れないのかもしれない。メロスは情報料として小銭をたかられたが、気にもせずに感心した。


「すごいね、君たちは。」

「何言ってんだ、兄ちゃん。こんなの普通だろ。それよりさっさと邪神教団のアジトってところに行こうぜ。」


グリが当然のように言うと、例の織物工場だった空家へと向かう。




「おら、お前。店の邪魔してんじゃねえぞ、餓鬼が。」


市場の人々の話し声の中で一際大きな怒鳴り声が響いた。メロスはびくりとしてその声の方を向く。


「ごめんなさい、ごめんなさい。お腹が減ってたんです。ごめんなさい。」


肉屋の主人の前で縮こまるみすぼらしい姿の子供が見えた。とっさに何があったのかを察する。メロスは何かを考える前に腰の剣に手が伸びた。大柄な肉屋の主人の手が拳を作り今にも振り降ろされそうだったからだ。


「やめときなよ、兄ちゃん。」


そんなメロスを意外なほど冷静なグリの声が止める。冷めきったその声音に一瞬ぞっとしてメロスは動けなくなった。


「兄ちゃんがさ、騒ぐと、オイラたちもうこの辺に来れなくなっちまうんだ。面倒事の原因になるって。だから皆見て見ぬふりをするんだ。それでうまく回るってんだよ、オイラたちもここの連中も。」


腹をすかせて縮こまっていた子供は他のスラムの子供に引っ張って行かれる。それを見た市場の店員や客たちは何もなかったかのように自分たちの用事に戻っていく。メロスだって今すぐに何かできるわけではない。自分が彼らと同じように振舞うしかないことにやるせなくなって暗い表情になった。


「オイラもさ、難しいことはわかんないんだけど、今の王さまが石にされて王子さまが代わりをやってるんだけど、ますます発言力が無くなったから、なんかぜーきんとかをやすくしなきゃいけなくてさいぶんぱいってのができないだって。だから、オイラたちみたいなのは這いつくばって生きてくしかないんだってっさ。」


グリは自分でもよくわかっていない言葉でメロスに説明する。よく酒場で飲んだくれているおっさんたちが政治が悪いとか騒ぎながら言っている言葉をなんとなく覚えていたのだそうだ。そんな暗くなった雰囲気が嫌になったのか元気を出したグリが気分を変えて話し始める。


「でもさ、ストア姉ちゃんが来てからは、大分マシになったんだぜ。ストア姉ちゃんがさ、オイラたちにいろんな生きるための技術を教えてくれてさ、まっとうに生きろって教えてくれたんだ。それまでは犯罪の肩棒担いだりさ、それで仲間を売ったり。でもストア姉ちゃんが変えてくれたんだ。」


グリの表情が明るくなる。ストアへの感謝の念とまだ淡い思慕がメロスに伝わり、冷えた心が少しだけ温かくなった。そう言えば、僕にもこんな年頃の時があったなと、ふとメロスは思い出した。村の年長のお姉さんの後をついてまわって、そんな幸せな頃のもう思い出せない感情をグリに見出して、少しだけ救われた気がした。


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