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クエスト2 ムカつく冒険者の狼藉者をわからせろ  その3

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。王都に来て冒険者になった。

 メロ 奴隷 Lv.30 双剣『艶肌あではだ』『巌肌いわはだ

 HP40 筋力30 守り30 技量30 速度30 MP30 知力30 悟り30 運否30


邪神  :ハーレムを作りたい。スラム街のストアに一目惚れ。王城のルート姫に一目惚れ。商館でラミスに一目惚れ。

ジョルト:荒くれぞろいの冒険者たちの顔役。冒険者ギルドで鼻にかかる態度をしたメロスを夜中にわからせにきた。

 ジョルト 斧戦士 Lv.40 

 HP60 筋力45 守り30(20) 技量30 速度15 MP3 知力30 悟り20 運否5

「ひゅー、兄貴、舐めプなんて相手がかわいそうですぜ。」「いたぶってないで、さっさと決着付けてやれよ。」「得意技を封印なんて、坊やのプライドが傷ついちまうぜ。」

日が落ち、灯りも少ない下層街では地味な技量がぶつかる戦いはほとんど何をやっているのかわからない。周りの冒険者はジョルトが遊んでいると受け取ったようだ。得意のスタイルを捨てた戦い方をするジョルトが余計にその勘違いに拍車をかけている。そのジョルトが遂に必殺の構えをとる。圧倒的な筋力を活かした横なぎの構え。焦らされた冒険者たちはいやがおうにも盛り上がる。

「「ジョルト!ジョルト!ジョルト!」」

その声援を背中に受けてジョルトが構えを深くする。さあ、来い。お前の弱点はもう割れている。

そんなジョルトと冒険者たちを眺めてメロスは満足気に頷く。

「よし、いい感じでしたね邪神様。」

そう言うと、メロスは両手に持った剣を下ろした。

「そうですね、普通に不利な戦い方をしても勝てそうですし、これならいつも通りで問題ないですよね。」

メロスが何か独り言を言っている。内容は聞き取れないが剣を下ろしやる気を見せないメロスに対して冒険者たちが野次を飛ばす。

「おう、降参するなら、ちゃんと態度で示せよ。」「冒険者やめて、田舎に帰るんなら。俺たちは許してやるからな。」「俺たちはやさしいからな、1人じゃ怖くて帰れねえってんなら、送ってってやるぜ。」「まあ、その時はたっぷり礼を貰うがな。がはは。」

そんな言葉にも、特に気分を害した様子もないメロスにジョルトは構えを解き尋ねる。

「なんだ、降参か?」

「?いえ。でも、もう終わりにしようかと思いまして。」

メロスはそう言うと両手にぶら下げた剣を勢いよく真上へと投げる。剣はくるくると回転し夜空へと消えていく。

「なんのつもりだ。まさかあの剣が俺に落ちてくるように投げたとでも言うつもりか。」

ジョルトは若干頭上を警戒しながらメロスに聞く。

「さあ、どうでしょう。でも、もうこれで僕は勝ちです。どういう風に勝つのかは僕も知りませんが。」

「何を言っている。そんな簡単に当たってやるわけがないだろうが。」

もうやることは無くなったと両手を組んで立ったままのメロスにジョルトは若干イラだったように言った。


メロスが投げた剣はそのまま高く帝都の上空まで達した。たまたまそこを通り過ぎようとしていたキマイラが、剣に驚く。キマイラは避けようとして爪で掴んでいた獲物を落としてしまった。惜しいものを見る目で落ちていく獲物を見ていたが、やがてキマイラはあきらめ飛び去る。


「そうですね、少し説明しましょうか。僕の運否のステータスはジョルトさんよりも25上回っています。20以上運否に差がある相手にはスキルの『運否天賦うんぷてんぷ』が発動します。」

メロスが話し出すと同時に先ほど投げた剣が落ちてくる。剣はきれいにメロスの足元に突き刺さった。それを見ていた冒険者たちは笑い出す。

「ぶふっ、スキルが何だって?」「おいおい、笑ってやるなよ、あんなに自信満々なんだぞ。」「げらげら、だってよ。うんぷてんぷなんて聞いた事ねえぞ。」

ジョルトも遂に警戒するのを止め、笑い出す。だが、メロスは気にせず話を続けた。


キマイラが落とした獲物、角ネズミの死体は帝都の馬宿へと落下した。屋根の上で水道管に何かを設置していた工事業者の男が驚いて瓦礫の上に落ちる。


「『運否天賦』は他のステータスが介在しない完全に運任せの攻撃をすると運否のステータス差に依存した命中率とクリティカル率で相手に攻撃が飛びます。」


けたたましい音に馬泥棒を疑った宿の主人が料理の手を止めて包丁を片手に外へ出る。


「計算式にすると運否の差に4をかけた数字が命中率とクリティカル率になります。」


宿の主人が居なくなったのをいいことに、馬に馬蹄を取り付けていた小姓が仕事をほっぽり出してつまみ食いをする。


「ジョルトさんとの運否の差は25ですから、命中率100、クリティカル率100の攻撃があなたに飛んでくるわけです。」


日ごろから馬蹄が気に入らなかったその荒馬は小姓の手が離れたのをいいことに、馬蹄を後ろ足で蹴っ飛ばした。


「だから、何だって言うんだ。その攻撃とやらはいつになったら来るんだ。」

ジョルトの言葉にもメロスは剣を地面に突き刺したたまま動かない。とんだ口だけ野郎だな。ジョルトは思った。せっかく久しぶりに歯ごたえのある相手だと思ったが、不利になると口先だけでその場を逃げようとしやがる。

「俺の目も曇ったもんだ。」

ジョルトはメロスの口車に飽きて、もう終わりにすべく不用意に前に出る。もはやメロスは脅威ではない。斧が届く距離まで近づけばそれで終わりだ。ジョルトは歩きながらつまらない結末を確信した。

そのジョルトの顎を凄まじ速度の何かが打ち抜いた。まるでジョルトがその場所に歩いて移動するのを待っていたかのように馬に蹴られた馬蹄がすさまじい速度で飛んできたのだ。顎への一撃で脳を激しくシェイクされたジョルトはあっさりと気を失い倒れる。

「兄貴?どうしたんですか、兄貴!」

突然倒れたジョルトに冒険者たちが駆け寄る。何が起こったのか誰にもわからない。ただ突然ジョルトが殴られたように倒れ気を失ったのだ。一部始終を見守っていたメロスは、もう終わったと剣を鞘に納める。そのまま立ち去ろうとしたメロスだったが一応挨拶だけはしておかないと、誰かにそう言われたようにメロスは思い直し振りかえった。

「それでは、先輩方。お先に失礼します。」


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