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クエスト1 ハーレム候補を見つけ出せ 2人目 その2

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神  :メロスに憑りついている。ハーレムを作りたい。上層街で出会った姫に一目惚れ。

姫   :邪神を偶然に馬車で轢きかけたことで知り合う。王都の民に人気がある。

内務卿 :王都の内政を取り仕切る不気味な老人。スラム街の子供に執着している。

(すごいですよ、邪神様。王族の方とあんなに簡単に知り合えるなんて。)

「ふふっ。俺にかかればあれぐらい造作もない。誰もあれが演技だなどと気付いていなかっただろ。」

(でも邪神様、これからどうするんですか?)

「・・・。」

邪神は無事に城に運び込まれたが常駐している医師団から異常なしの診断が出されあっさりと城から追い出された。

これで姫とお近づきになれたと言えるのだろうか?いやもうひと押し欲しい。邪神はそう考えさっきから城の周りをぐるぐると歩いていた。門兵は不審に思いながらも城から出てきたメロスは誰かの関係者と考え注意はしてこない。

「邪神様、あれなんでしょう?金色の馬車?」

体の支配権を邪神から戻されたメロスは、ふと遠くから王城へと近づく馬車に気付いた。太陽の光をぎらぎらと照り返し、王家のものより倍は大きくそして目立つその馬車は土煙を派手に立てながら門の前で止まる。門兵は知った馬車なのか慌てる様子も無く、だがどことなく嫌そうな顔で応対に向かう。

「なんだ貴様ら、さっさと門を開けんか。商売とはな一秒が聖金貨にも勝るのだ。まったく。」

馬車から顔だけ出すでっぷりとしたその男は馬車と同じ金髪を大仰にかき上げながら門兵に指図する。贅肉を揺らしながら響かせるその声は男の乗る馬車のイメージと同じくどこか下品だ。

「むっ、貴様、そうだ、そこの薄汚れた貧乏そうな貴様だ。大通りで王家の馬車に引かれたというのは貴様だな。よしよし、間にあったな。貴様ついて来い。」

そう言うと強引にメロスの腕を取り、馬車の中へと引きこむ。脂肪に埋もれた指輪がごつごつとぶつかりメロスは不快感で顔を歪める。思わず手を振りほどこうとしたところで邪神がそれを押しとどめた。

(待て、なんかムカつくやつだがここはこいつに乗っておこう。むふふぅ、こいつはチャンスだ、もう一度あのお姫様の顔を拝めるぞ。)

「でゅふふぅ、これはまたとないチャンス。今度こそ王子にねじこんでみせるぞ。」

邪神と商人、それぞれが鼻息荒く悪だくみでほくそ笑む中でメロスだけが一人困惑していた。


中庭を馬車で駆け抜けると本城に商人は乗りこんでいった。メロスはずっと腕を掴まれたままだ。

「ええいどかんか、貴様らでは話にならん。王子殿下に会わせろ、これは大事な商談だ。貴様らのような小童役人なんぞではこの重要性が分からんのだ。」

「そうだそうだ。俺は姫殿下に命を救われたんだぞ。直接会って、手を取って、お礼を言わなければ、不敬だろう、不敬。」

商人はそれなりの重要人物らしく相手をしている文官も先ほどメロスにしたように簡単につまみだすとはいかず困っている。それをいいことに便乗した邪神はメロスの体を使って好き勝手に主張している。

「きっしっし、これはこれはバーザンさま。此度はどのような用向きで?」

騒ぐ二人の背後から枯れ木のような声が話しかけてくる。その呼びかけにバーザンと呼ばれた商人は振りかえると大仰なしぐさで返事をする。

「おお、内務卿ではありませんか。ちょうどいいところに、なに、今日は先日から申しておる王陛下を呪いからお救いする薬の話をするために参ったのです。」

スラム街ではあれだけ怪しげな雰囲気だったが見た目にそぐわず信頼されているらしい内務卿の登場にバーザンに手を焼いていた役人たちは安堵する。それなら最初からこいつに話を通しておけと邪神は心の中で毒づいたが話はどうやらそう簡単にはいかないようだ。

「きっしっし、その件でしたらお断りしたはず。なにぶん国庫に余裕がございません故、王陛下もご健在ならご自分のことよりも民草のために財貨を投じろとおっしゃいますでしょう。」

「何をおっしゃる内務卿。そこは忠臣として陛下の意に背いても陛下の身命を優先するものではありませんか。きっと王子殿下もそうお思いのはず。ぜひともスクート王子にお取次を。」

「きっしっし、それには及びませんぞバーザン殿。スクート王子殿下は大変お忙しく、その件はわたくしめからお伝えいたしますのでどうかお引き取りを。」

2人は互いに下手に出ながらもバチバチと火花を散らしていた。どうやら話はこう着状態のようだ。

「あ痛たた。なんだか足の傷が痛むなー。」

すっかり2人に無視されていた邪神がわざとらしく足をさすり、会話に割り込む。

「おおっ、そうだ忘れていた。こいつ、あぁ名前は何と言ったかな、まぁどうてもいい。こいつは先ほど王家の、ルート姫の馬車に引かれたと、そう町の連中が噂しておりましてな。なに、王家に悪い噂が立たぬようワシが確保しておいたのですよ。しかし、心やさしい王子殿下のこと、こいつにひとこと声をかけねば気が済みますまい。そう愚考し連れてまいったのです。」

「メロスと申します。以後お見知りおきを。いやーでも足が痛いなー。」

このままだと一生こいつ呼ばわりされそうなため一応名乗っておく。

(邪神様、なんだか悪い商人に協力しているみたいになってますよ。親切にしてくれた姫様に悪いですよ。)

「これもハーレムのため、致し方なし。」

心の中で訴える本物のメロスを説き伏せると邪神は痛い痛いと演技を続けた。

「きっしっし、バーザン殿も悪いお人だ。」

「いやいや、内務卿も謙遜する柄ではないでしょう。」

どうやら二人の間で邪神=メロスの存在が決め手になったらしい。邪神は正直まさか上手くいくとは思っていなかった。むしろここから不敬罪で牢屋にしょっ引かれてそこから上手く逃げだしてラッキースケベイベントに繋げる算段をしていたくらいだ。

はっはっは、笑う二人に挟まれとりあえず合わせる邪神。なんだかわからないがどうやらうまくいったらしい。

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