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クエスト1 ハーレム候補を見つけ出せ 1人目 その8

メロス :主人公の少年、邪神が宿っている。職業は『奴隷』。

邪神  :メロスに憑りついている。現代知識となろうに詳しい。ハーレムを作りたい。土下座と三下ムーブは得意。

グリ  :王都でスリをやっている孤児の子供。冒険者になってお金を稼ぎたい。

ストア :王都でスラムの子供たちの面倒を見ている少女。順調に好感度を稼げているはず(邪神視点)。

ジョルト:荒くれぞろいの冒険者たちの顔役。巨漢の実力者でギルドでメロスに絡んだ。

ジョルトの一際高い場所にある禿頭はあばら家の天井を擦りただでさえ危ういバランスを更に危険にしている。

「いいから、出てって下さい。あなたたちの手助けなんて必要ありません。」

「なんだあ、ストアよお。お前ん家からあの気味の悪い内務卿が出てきたから心配してやったっていうのに、その態度は。」

これ以上はまずい。ストアは自分よりも二回りは大きな男たちにも臆することなく追い出そうとしているが、冒険者たちも面子があるのか引く様子は無い。ここは俺が一計を案じなければ。流石の邪神も今回は下心なく争いの仲裁に入った。

「まあまあまあまあまあまあまあ、いやーそれにしても冒険者の方々は立派なご体格をしてらっしゃる。いや、こんな狭いところではご不自由でしょう、ささ、まずは広いところで話し合おうじゃありませんか。」

邪神は冒険者ギルドで見せた揉み手でまとめ役のジョルトにすり寄っていく。ギルドの一件で邪神を気味悪がっているジョルトはついのけぞり気味になった。その股の間にすかさず邪神が足を入れどんどん後ろに後退させる。そのままあばら家の外までジョルトを誘導すると残りの冒険者たちも慌ててジョルトを追い出ていく。

「おい、てめえ、気持ち悪いから、すり寄ってくるんじゃねえ。」

外に出た後も邪神はジョルトに揉み手でご機嫌をとっている。ジョルトにとっては気味が悪いだけだったが邪神はそんなこと気にしない。服の汚れを払う姿はまさに奴隷そのものだ。そんな邪神の様子をスラムの子供たちも見下げ果てた目で見ている。

「何あれ、かっちょわりー。」「あんなのについってって大丈夫かよ。」「ストア姉ちゃん、ああゆう、かいしょーなしとけっこんしちゃ、だめだぞ。」

好きかって言う子供たちを拳骨で叱ってやりたかったが今はジョルトの隙を窺うので忙しい。だがその甲斐あってジョルトが一瞬スラムの浮浪者に気を取られ邪神から気がそれる瞬間を見逃さなかった。

「ジョルトさま。大変です。あなたさまの財布があのネズミに。」

わざとらしく邪神が慌てたように指さす先には銀色のネズミが自分の3倍はあろう大きな財布を頭の上に器用に乗せて座っていた。銀ネズミは邪神の声に億劫そうに腰を上げると、スラム街から下層街の方へと走っていく。

「待て、それは俺の今月分の生活費なんだぞ。」「兄貴、待って下さーい。」

ジョルトが慌ててネズミを追う。すばしっこいネズミは時折振りかえるとちゃんと冒険者たちがついて来ているか確認し一定の距離を置きながら走って行った。

不可思議な幸運から厄介な冒険者たちが去っていき、スラムの子供たちとストアはぽかんとした顔でそれを見送っている。その背後で邪神はグリの手に銀貨を数枚握らせた。もしかしたらジョルトが今追っている財布は少し軽くなっているかもしれないが、ジョルトが財布を取り返した時にはきっとどこかで落としたものと諦めてくれるだろう。邪神はグリに秘密にしておくようサインを送り、こっそりとその場を離れた。


「邪神様、あれで良かったんですか?」

(ふうわかっていないなメロス。ああやって何も言わずに去るのが一番恩を着せられるのさ。あの口の軽そうなガキのことだからすぐに俺の鮮やかな手並みを喧伝してくれる。そうすればあのストアちゃんのおっぱいは、デュフ、デュフフ。)

「いえ、その、ストアさんは子供たちにあんまり悪いことはさせたくなかったみたいですけど。それに、あの冒険者の人達もあんなふうに追い払って恨まれないですか?」

(ばっか、お前。いいか、ああいう如何にも悪そうな顔の冒険者っていうのは主人公に成敗されるためのやられ役なんだ。むしろああいうのを放置していると読者のストレスになるからこうやってちくちく嫌がらせするのが正義なんだ。)

「はあ、そうなんですか。」

メロスは邪神の言葉を半分も理解できなかったがとりあえず相槌を打つ。

(どーせあいつらはあの小汚いガキどもを利用して甘い汁を吸おうなんて考えてる連中だ。そんな奴らをな、俺がかっこよく成敗してストアちゃんにアピールするんだ。そのためにもガキどもには愛想を振りまいておかないとな。)

「あんまり汚いとか言っちゃだめですよ、邪神様。あの子たちも苦労してるんですから。」

(言っておくがな、俺にとっては風呂に入る習慣のないこの世界のガキは全員小汚いガキだからな。貴族だろうが王族だろうが関係ないからな。)

相変わらずの邪神の発言に苦笑しながらメロスはスラム街の通りを抜けていく。下手に絡まれないように気配を消していたのだが、そんなメロスの肩に銀ネズミが戻って来た。

「あ、お疲れ様ですネズミ師匠。」

適当なところで財布を捨ててきた銀ネズミは報酬のチーズを貰うとメロスのポケットに入りのんびりと食事を始める。とりあえず何事も無く、誰も傷つくことも無かったのでメロスは機嫌よくスラム街から下層街へと出ていくのだった。

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