髑髏の行進……
まだ歩き始めたばかりの道のりを振り返る
遠くまで来たもんだ…
意外にもそう思う……
エンドレスに続く砂漠の道
灼熱の太陽
サボテンたちが群生している……
鳥たちは何処からやって来たのだろうか…
歩けども歩けども遠い
目的地がどこかなんて忘れた……
何のために来たのかなんて忘れた……
ただ遠いこの砂の地を踏みしめたかったのだ
焼けるほどに太陽に焦がされてみたかったのだ
ただただそこに生きる者たちに会いたかったのだ
故郷の空を想う
何もかもを置いてきた
けれどもここで屍になろうとも
水分の一滴もなく
乾いた大地が
灼熱の太陽が
焼いてくれる
熱すぎるほどの風に吹かれて
骨まで散り散りに
我が髑髏は生者に生きることの意味を問い
なんとしても生きねばならぬと
旅人を奮い立たせるだろう……
熱く割れた我が髑髏
しかし
歩かねばならぬ
まだ果てない果てるべき理由など見当たらねば
立って歩くより仕方ない……
天国とも地獄とも目指してはいない……
ただ立って歩くことを諦めずに進むだけ……
それを幽霊だの成仏だのと言われることに筋合いなどない……
生きて歩いて来たことを死んで辞めねばならぬのか……?
否
神も仏も知らぬが
命が途切れたからといって
辞める道理はない……
進む道が何なのか
何のために生きるだとか
愚問はもはや頭にはない
別に神様仏様が一番偉いなんて思ってはいない
愚かにも意味もなく踏破せんとする
死んでも諦めない
誰が笑う者がいようか
人のために生きれなかった
ただそこに自分は無かった
自分自分とは結局は尊大だ
他人他人と慈愛にも限りのあった我が心
それでも人を救うことが人生の目的だと
強く生きる人 人 人……
疲れ果てても休まずに歩く……
俺は
自分だけのために
人のためではなく
自分だけのために……
人のために生きれず
救うことをしなかった生き方に
愚かだと自分でも思う……
それは
何千何万と積み上げられた石板を見上げるように
自分には果てしなく遠かった……
その石の塔をみるまでは……
果たしてこの上に
自分も石板を積むことができようか?
否
出来ぬ…
これほどまでに人を愛した魂たちを
みたことがあろうか?
否
今の自分には…無い……
石板を叩く……石板を蹴る……
崩れることもないビクともしない石板
石板の塔は高く積み上げられたままビクともせず
その遥か重い重量を地面に突き刺している……
その高い塔の上に
今日も重い石板を積む者たちがいる……
遥かなる道のりを
灼熱の地に太陽に身を焦がされ
髑髏となった者たちが
遥か重い石板を背負い
塔の上に積み上げる……
髑髏の参列
積み上げられるほどに
現世での生きる人びとが幸せになれるという……
まだ足りぬと髑髏の参列は重い石板を背負い
積み上げることを辞めぬ
死者の願いは
現世で生きる者達の幸せ
少しでも
幸せになれるようにと
屍に石板を背負う
その参列に
加わる……
この砂漠の
どこかに落ちている石を拾い集め
両の手ですくう
背負えるほどでもなく
たったこれっぽっちの石の欠片を
少しでもと
持って歩く……
幸せになれることに尽きることはない
救われることに尽きることはない
そうやって
髑髏の行進は熱い砂の上
極寒の日の昇らない夜の闇も
途絶えることなく続く……
鳥たちが歌う天使のように
今日を積み上げた分だけ
明日が幸せになるのだ……と
生者の幸せを願う……
髑髏の行進は止まらない……
その先に何があるともしれず
考えることもなく
とどまることを知らず
拾い集められた石ころと
何処にあったのか石板を
背負いながら
集めながら
歩く……
荒涼とした赤い大地
灼熱の大地
極寒の大地
あちこちに立ち並ぶ異形の石の塔群
死者の祈りが
生者の足どりを背負う苦しみを軽くする
死者が祈りを
生者に必ず届くようにと
少しでも幸せになれるようにと
今でも石を積み上げる
わずかでも……わずかでも……
我を忘れて積み上げる………
死者たちの行進は止まらない……
髑髏の行進は止まらない………
昼も夜とて
生ける者たちへの祈りが止まらない………
新米の俺は
適当に石ころを拾い集めては
列に並ぶ……
ご苦労様と挨拶をかわしながら……
生きてる間に出来なかった分を
少しでも積み上げる……
ご苦労様……と
挨拶が返ってくる……
今日も石の塔を見上げる……
列に並ぶ……
愛した人が…幸せになれるようにと……
列に並ぶ………
髑髏の行進は止まらない……