一応小説って体なので(しおりさんビギンズ)回
(・3・)〈どうも、『お地蔵様ブースター』の異名を持つ男、やっ太郎です。
今回は、ru-pasko様からキャラクター原案を頂いた、ノベルギルドの受付嬢・『しおりさん』の短編ストーリーをば。
しおりさんがノベルギルドの一員になった時のエピソードでございます。
(・3・)〈一応小説って体なので(←体って言うなし)たまには小説っぽい事もしておきましょう!!(笑)
〜〜〜〜〜 それではスタート!! 〜〜〜〜〜
私の名前は《御掛 しおり》……現在、絶賛就職活動中だ。
私は、三度の飯より本が好き、子供の頃から本が好きで好きでたまらない、いわゆる本の虫である。
そんな私は、魔物と戦う戦士が集うギルドへの就職を試みていた。
え? 本が好きなら本屋や図書館、出版の仕事じゃないのかって?
ギルドでは、一般には出回っていない不思議な力を持つ魔法の本を取り扱っているからだ。
私は……常に未知なる名作を求めているのだ。
しかしながら……現状、私の就職活動はあまり上手くいっていない。
内定が出ないのではない、むしろ内定は多数の大手ギルドから頂いている、ただし、本の管理ではなく……『戦闘要員としてならば』だ。
要は、新人冒険者の教官や、冒険者同士がギルド内で乱闘騒ぎを起こした際に鎮圧する警備員、果てはギルド職員の用心棒などの仕事をしろという事だ。
何故私のようなうら若き乙女が戦闘要員なのかと言えば……数年前、地元の村に魔物の大群が襲来したのだが……
待ちに待った大好きな作品の最新刊を読むという至福の時間を邪魔をされた私は、怒りのあまり、狼牙棒……いわゆるトゲ付き金棒片手に暴れ回り、気付けば魔物の大群を全滅させていた。
後から知った事だが、倒した魔物の中にとんでもなく強い魔物がいたらしく、知らぬ間に私には『黒き旋風』だの『狂乱の戦乙女』だの『妖怪惨虐狼牙棒』だのという異名が付けられ広まってしまっていた……誰が妖怪じゃい!!
というわけで、どこもかしこも私の熱意は二の次、三の次で、とにかく戦闘関連の業務をさせようとしてくる。そして昨日も『戦闘要員としてならウチで雇っても良い』と言われてしまった。
ため息を吐きながら、私は今日も今日とて面接に向かう。次のギルドが最後だ……これがダメなら別の仕事を探そう。
「ええと……今日の面接は、《ノベルギルド》ね、あんまり聞いた事のないギルドだけど……」
その後、頭の中で面接のシミュレーションをしながら歩き続け、ノベルギルドへとやってきたのだが……
「えっ……これが……?」
私の目の前にあるのは、ギルド……というより、少し大きめの掘建小屋みたいな粗末な建物だった。
思わず地図を再度確認していると、ギルド(?)の建物から白のTシャツに青のジーパンというラフな格好をした筋肉ムキムキでスキンヘッドの若い男性が出てきた。
「あっ、もしかして本日面接予定の方ですか?」
「は、はい!!」
「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
……どうやら、ここがノベルギルドらしい。この男性がギルドマスターなのだろうか?
応接室に通されると案内してくれた男性がにこやかに話しかけてきた。
「面接に来てくださってありがとうございます、申し遅れました。私はノベルギルド職員の《テストマン》と申します、主に色々なテストの仕事をしています」
何ちゅう名前だ!? テストって一体何の……? というか、この人はギルドマスターじゃないのか?
疑問は尽きないが、とりあえず挨拶はきちんとしなければ。
「御掛 しおりです、本日はよろしくお願いします」
「今、ウチのギルドマスターを呼んで参りますので」
そう言うと、テストマンさんは応接室を出て、1分もしない内に一人の男性が入ってきたのだが、その人物を見て、私は言葉を失った。
大福餅のようなまん丸の顔に、真珠のような丸い瞳、あとそれから……いや、どんな文豪でも、彼の顔を表現するのにこれ以上の適切な言葉は見出せないのではなかろうか。彼の顔立ちを表すとすれば、そう……
『かっこなかぐろさんなかぐろかっことじ』……実際に文字に起こすと、(・3・)だ。
何だコレ!? 何か全身真っ白だし、テストマンさん以上に筋肉ムキムキだし、そもそも人なの!? まさかとは思うが……この変態じみた得体の知れない人 (?)がギルドマスターなんて事は──
(・3・)〈どうも、ノベルギルドのギルドマスター、やっ太郎です。
マスターだったぁぁぁぁぁーーーっ!? ヤバい、コレはヤバい。ru_paskoお母さん、しおりはこれから酷い目に遭わされるかもしれません……
(・3・)〈ええと……あの?
「はっ!? み、御掛 しおりと申します!! 本日はよろしくお願い致しますッッッ!!」
しまった、熱心な就職活動の成果を反射的に出してしまった!! いっその事、ここからダッシュで逃げ出してしまおうか? いや、ここで不審な動きを見せたら、取り押さえられて、対象年齢設定を『R15(※残酷描写有り)』とか『R18(※性的描写有り)』にしなければならないような事態になるかも……どうする!?
(・3・)〈ん? 御掛さんって、もしかしてあの『黒き旋風』とか『狂乱の戦乙女』とか数々の異名を持つ、あの御掛しおりさん?
ゲェーッ!? 知られとるーーー!?
(・3・)〈奇遇ですね、私も『神秘的なおはぎ』とか『手巻き寿司怪獣』とか『ゴリラ味のまんじゅう』とか、いろんな異名を持っているんですよ。
一体何をどうすればそんな珍妙極まりない異名が付くの!?
だがここで私に天啓が降りてきた。私の異名や経歴を知っているのであれば、『本の管理とかの仕事をしたいです』と言えば、他のギルドみたいに『戦闘要員じゃないなら残念ですが……』となるはずだ。
そうと決まれば、善は急げだ。私は元気良く言った。
「私は本が大好きなので、本の管理の仕事がしたいですっ!!」
(・3・)〈良いですよ、もしウチに来ていただけるのなら是非!!
「……ソウデスカー、ソレハ残念ダナー……え?」
あれ? もしかして今、『良いよ』って言った?
「え? あの……今、『良いよ』って言いました……?」
(・3・)〈はい、言いましたけど
「戦闘要員ではなく……?」
(・3・)〈さっき本の管理の仕事をしたいとおっしゃっていたので……戦闘要員の方が良いですか?
「よ、良くないです!! 本の管理がしたいです!! でも……本当に良いんですか、その……」
(・3・)〈『何が出来るか』は勿論大事ですけど『何がしたいか』も同じくらい大事だと思うので……
「は、ハイ……!!」
(・3・)〈面倒臭いものです、自分のやりたい事に限って才能が無かったり、自分にとって大して重要じゃない事に才能があるせいで、周囲がそっちの道を押し付けようとしてきたり……あー、俺もプログラミングの才能が欲しいなー!! 誰かくれ!!
最後のはよく分からないが、この人は思ったより、悪い人ではないのかもしれない。何よりここでなら自分の望む仕事が……いや、でもこんな今にも潰れそうな掘建小屋みたいなギルドで……ちゃんと給料は出るのかしら……
“コンコン”
私が逡巡していると、誰かがドアをノックした。ドアの向こうから『お飲み物をお持ちしました』という、子供のような声がして、マスターが『ありがとう、入ってください』と声をかけると……ドアの向こうからとんでもないものが現れた。
大きくてまん丸な瞳に、一筆書き出来そうなシンプル極まりない、白くて薄い四角のボディ、そして短い手足に赤い靴!!
「ああああああの……こっ、こちらの方は一体?」
(・3・)〈依頼書君です。
ホントだ、胸に『依頼書』って書いてある!! 正直、マスターの言葉は全く説明になっていないが、そんな事はどうでも良い!! 大事なのは依頼書君が死ぬほど可愛いという事だ。私は生唾を飲み込んだ。
「あ、あの……もしかして、ここで働けば毎日依頼書君に会えるんですか!?」
(・3・)〈え、ええ……まぁ、シフトは組んでいるので、毎日誰かはいると思いますが……
複数!? 依頼書君は複数いるの!? 依頼書君がいっぱい!? 希望の仕事ができる上に、依頼書君がいっぱい!?
「ここで働かせてくださいッッッ!!」
気付けば、私は深々と頭を下げていた。
しおりさん が 仲間になった!!
〜〜〜〜〜 続く? 〜〜〜〜〜
(・3・)〈いかがでしたでしょうか? ちなみにしおりさんのお母様によれば、苗字の御掛は『読みかけ』から取ったとの事でございます。素敵ネーミングッッッ!!
機会があれば、テストマンや依頼書君や受付嬢ちゃん(仮)編もやるかもしれません(笑)
(・3・)〈果たして、機会以前に需要はあるのか!?(笑)




