第八十五話 瑞穂の悪い予感
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太刀川の左腕にボールが直撃した。
一瞬、球場全体が静寂に包まれた。ただ次の瞬間、周囲は混乱へと変わっていった。
「デッドボール!!」
審判は大声でコールした、のだろう。
しかしその声を聞き取れる者は誰もいなかった。それだけ球場全体から大声があがっていた。
「テメー!! このクソピッチャーがオイ!!」
「太刀川が怪我したらタダじゃおかねぇぞ一年坊!!」
太刀川の心配や、チャンスが拡大した事による皇帝の応援より、守の背中を後押しする明来の応援より、高校野球ファンや皇帝野球部のファンからの罵声が何よりも大きかった。
ただ、ぶつけられた太刀川自身は、顔色一つ変えず、ゆっくりと一塁に歩き出した。
彼は左腕に着けていた肘当てを外し、上に掲げた。これに当たったから大丈夫だという事だろうか。
守は一塁に歩く太刀川に向け、帽子を外して頭を下げた。ただ、太刀川が守の方を向くことはなかった。
その直後、守は右足に触れながら倒れ込んだ。その姿を見て明来ナインは一目散にマウンドへ駆け出した。
「千河! 大丈夫か!?」
氷室がすぐさま声をかけた。
「だ、大丈夫。足がつっただけだよ」
守は額に汗を流しながら右足を伸ばし、精一杯笑って答えた。
「この暑さだもん、無理もないよ。私もストレッチ手伝うね」
瑞穂がドリンクを手に持って、マウンドへ走ってきた。守の手にカップを渡した次の瞬間、そのコップは地面に落下した。
「あ……ごめん」
守の震える手を見て、瑞穂は悪い予感が的中している事を悟った。
「……ヒカル、手を思いっきり握ってみて」
「え、なんで?」
「いいから早く」
瑞穂の真剣な口調に、守は驚きながらも言われた通りに瑞穂の手を握った。
「……これで精一杯?」
瑞穂の問いかけに守は無言で頷いた。
「ダメ……握力がまるで無い。これ以上は投げさせられない」
瑞穂の言葉に明来内野陣は緊迫した表情となった。
「そんな、大袈裟だよ。僕なら大丈夫だから……」
「勝手なことを言わないで!」
瑞穂は、守の言葉を遮るように声をあげた。
「ずっと昔からヒカルのプレーを見てきたからこそ分かる。これ以上投げたら故障しちゃうのがね」
守にその自覚はあった。先ほどから、普段感じないほど身体中のハリ、左肩、肘の疲労感があったのだ。それを誤魔化す様に、痛くないフォームを模索していた。それが瑞穂には見破られていた様だ。
「監督とは既に話しています」
瑞穂は続けて口を開いた。
「――ヒカル。 ピッチャー交代だよ」
六回裏 途中 ツーアウト満塁
明来 一対ゼロ 皇帝学院
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