第七十三話 過度な高揚
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四回表、明来の攻撃。ノーアウト一塁、二塁のチャンスでバッターは四番の氷室。
ネクストバッターボックスに控えている守は、これ以上なく気持ちが高まっていた。
『いける……いけるよこの試合』
守は心の中で高揚し、バットを一層強く握りしめた。
前回皇帝と試合した時は、一年生チーム相手に十四点も取られた。
どこに、何を投げても打たれてしまった。
今まで培ってきた守のピッチング全てが否定されたかのような感覚を今でも覚えている。
感じたくはなかったが、あの日ほど男子と女子の身体能力やパワーの差を感じる事はなかった。
中学までとは違い、高校では技術だけでは通用しない。だからこそ守は更に努力した。
最も重視したのはストレートに球威を上げるために筋力アップ、配球の見直し、より力の入るフォームの模索……やれる事は全てやっている。
努力の甲斐あって、スピードは五キロあがり、百二十五キロまでは出るようになり、東雲から教わったチェンジアップとの組み合わせで緩急が使えるようになった。
その結果、皇帝のスタメン相手に三回まで一人のランナーも出さない快投を続けている。
――キィン!
氷室のバットから快音が聞こえた。だが打球はあとひと伸び足りず、レフトフライとなった。
「キャー! 千河くぅーん!」
打席に向かう守に向かって、黄色い声援が大量に届けられた。
守は相変わらずチアからの人気が絶大だった。勿論守の正体が女子というのは誰も知る由もない。
守は上杉監督からのサインを見た。サインはヒッティングだった。
このケースならどうするか、守なりに配球を考えて打席に向かう。
『私含め、五番以下の明来打撃陣のバッティング能力は大きく下がる事は、皇帝なら必ず把握しているだろう』
『相手の理想は私で三振かゲッツー。デッドポールでの出塁は避けたいから外中心で、なるべく少ない球数で攻めてくるはずだ』
『狙いは外のストレート、これ一本だ』
守はバットを短く持ち、打席に入った。
神崎はセットポジションから投球を始動した。羨ましいくらいに仕上がっている身体全体のパワーを、リリースの一点に集中されている様だ。
――キィン!
『ッ――!』
完全に差し込まれたが、打球は三遊間の面白い所に転がっている。進塁打は充分考えられるコースだ。
「ッしゃぁ!」
――だが、皇帝のショート峰が打球にうまく対応し、二塁へ送球した。
「アウト!」
二塁ベースで送球を受け取ったセカンドは、山神のスライディングを鮮やかに避け、一塁へ転送した。
「うおおおおお!」
守は雄叫びをあげながら一塁にヘッドスライディングをした。
――しかし塁審の右手が上がり、アウトを宣告された。ダブルプレーにより、明来は追加点のチャンスを逃してしまった。
四回表 終了
明来 一対ゼロ 皇帝学院
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