第五十二話 キャプテンが灯す、紫の炎
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「一色と十文字がゲームメイクしてくれたこの試合……俺たちバッター陣は何してやがる」
円陣の中心にいる八城は声を大にしてメンバーに問いかけた。
「落ち着けよ。あんな遅い球、三巡目にもなったことだし楽勝だろ」
誰かがそう発した瞬間、八城は声を荒げた。
「舐めたこと言ってんじゃねぇぞ!」
普段さわやかで怒ることのない、チーム全員から慕われているキャプテンの叱責に全員が震え上がった。
「そのコントロールだけのピッチャーに! 俺たちは無失点に抑えられているんだぞ!」
「あの明来のピッチャーはなぁ! 俺たちに勝つ為に持てる力を出し切って投げて! 怪我を恐れずランナーとしての仕事もしたんだぞ!」
「このグラウンドに立ちたくても、立てなかった三年生も沢山いるんだぞ! そいつらに失礼だろうが!」
「俺たちの三年間を! 油断で終わらたい野郎は今すぐグラウンドから立ち去れ!」
八城は息を切らしながらキャプテンとしての発言、役割を全うした。
沈黙ののち、他のメンバーがポツポツと声を発した。
「俺だって……負けたくねぇ」
「勝ちてぇよ、八城」
「八城さん、まだ俺たちやれますよ!」
メンバーが次々と目の色を変え、お互いを鼓舞し合った。それをみて八城は爽やかに笑った。
「お前ら、腹から声出せよ」
円陣を囲う全員が、息を大きく吸い込んだ。
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
「らあああああああああ!!!!!」
「逆転するぞォォォ!!!!!」
「ッしゃァァ!!!!!」
円陣を組んだ全員が目一杯声を出し、腹の底から叫んだ。
色々な学校もこうした円陣の声出しをやっているが、気迫がまるで違う。南場実業のメンバー全員が紫の炎に包まれているように錯覚するほどだ。
「一番、セカンド、四宮君」
アナウンスが流れ、四宮が打席に向かう。
「そろそろ役割見せてくれよ四宮ァァ!」
「四宮出ろ! ぜってぇ八城に回せェェ!」
今までを遥かに超える大声の応援が南場実業ベンチで行われている。さっきまで観客席からの応援が凄すぎて気にも留めなかったが、この回は本当に声が出ている。
守も南場実業の変化を直感的に感じ取った。この回の彼らは何かが違う――そう思わざるを得なかった。
「ボール」
低めのスライダー、際どいコースだが慎重に見送られた。球速がないが故に、先ほどまでなら多少強引にスイングされることもあった。それだけにこの見送りは違和感を感じる。
「よっしゃぁ! 低め見たぞォ、見たぞォ!」
「一球変化球貰ったぞ四宮ァ!」
一球ボール球を見送っただけでこの声だ。出塁なんて許した時にはムードが一気に上がってしまう。それだけは許してはいけない。
――スパーン!
「ストライク!」
「ナイススイング! 当たれば行ったなオイ!」
「そんな鋭いスイングされたらたまんねーな四宮ァ!」
空振りをとってもこの有様だ。ポジティブな言葉がポンポン出てくるところが、南場実業のチームワークを感じられる。
――ギンッ!
打球はサードへのゴロだ。
「走れ四宮! 走れェェ!」
四宮は全速力で走り出す。
「……ぐっ!?」
打球はサード氷室の手前でイレギュラーし、グラブを弾いてしまった。氷室は前に転がったボールを素手で取り、そのままファーストへ投げた。
ズサァァ……!
――パシッ!
全速力の四宮は一塁へヘッドスライディングをした。そして同タイミングで青山は送球をキャッチ。セーフかアウトか、かなり際どいタイミングだ。
全員が固唾を飲み、一塁塁審に視線を送る。
一塁塁審は両手を横に広げた。そして同時にエラーを表すEのランプが点灯する。
「セーフ!」
「うおおおおおお! ナイスラン四宮ァァ!」
「きたぞきたぞ! 大チャンス!」
「初球から走って良いぞ四宮!」
南場実業のベンチから歓声があがる。出塁をもぎ取った四宮もベース上で雄叫びをあげた。
明来ナインはこの試合、最大のピンチを迎えようとしていた。
六回裏、途中。ノーアウト、一塁
明来 二対ゼロ 南場実業
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