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第二百十三話 予告ストレート三振の件

 前回の続きです!

 今回もよろしくお願いします♫


●初めての読者様●

 この度はアクセス頂きありがとうございます!

 少しでも楽しんで頂ける様、一生懸命書いております!


 よろしければ第一話から読んで頂けると、より楽しめると思います。ぜひご覧下さい!

「一番、キャッチャー、麻布君」


 ツーアウト、ランナーなしの場面で麻布は打席に入った。


 麻布は明来バッテリーの配球を完璧に盗めている。ただ、当のピッチャーである東雲がサイン無視を決め込んでいて、それが彼を苦しめていた。


『クソが……俺様がようやく見つけたこのクセを、東雲のラッキー自己中で無駄にさせるかよ』


 麻布は、その心中とは裏腹に、審判へ一礼しながら左打席に入った。


『……ストレート』


 麻布はこれから投げられる球種を予知した。


「オラァァァ!!!」


 ――ギュィィィィィィ!!!!


 ――ギンッ……!!


「ファウル!!!」


 初球打ちしたボールは一塁線のファウルとなった。


『クッソ……ストレートって分かっていても、このデタラメコントロールじゃあ打ちにくいんだよ』


 麻布の思考通り、不破が構えていたアウトコースと逆、インコース寄りのストライクゾーンに今の球は投げ込まれていた。


『ウチにだって速い球を放るマシンは置いてある。ウチの練習嫌いのバカ共を煽って凌牙のストレート対策は行ったつもりだ』


『だが……何だこいつのストレート。バカみたいに伸びるし、球威もありやがる』


 麻布は痺れた手を見つめながら舌打ちをした。


 二球目のサインを東雲が覗き込む。彼は首を何度も振っている。そしてようやくサインに頷いた。


『……次もストレートか』


 二球目も麻布は球種予知をした。そして普段よりもバットを短く構えた。


 投げられたボールは先ほどと一緒の、インコースであった。


 だが、麻布はボールが到達するかなり手前でバットが出てしまい、バットは空を切った。そして同時に膝をついてしまった。


 ――バスッ……


 不破はかろうじでチェンジアップを捕球した。


「ストライクツー!!!」


「カカカ。んだよそのダッセーキャッチングはよ。バッター含めてダサすぎんだろ」


 東雲は上機嫌な様子でボールを受け取った。


「おいヘタクソ」


 東雲は麻布を指差した。


「あん……?」


「優しい俺様が教えてやる。次はストレートで三振を狙いに行くぜ」


 ざわ……ざわ……


 東雲のストレート三振宣言に、球場内はざわめいていた。

 予告ストレート自体は皇帝戦でも行っていたが、今回は公式戦の舞台である。当然周囲の反応も様々である。


「舐めんじゃねぇぞ凌牙」


 麻布は殺意に満ちた様な鋭い眼光を東雲に向けている。


「お前らがシコシコと球種を盗み見てるから、こっちから教えてやったんだよ。感謝しろや」


 東雲の、一連の発言には、球場内からさまざまな声が上がっていた。


「東雲ェ!! 高校野球舐めてんじゃねぇ!!!」


「おもしれーじゃん。ど真ん中ぶち込めや東雲!!!」


「三振!! 三振!!」


「てかサイン盗みして伝達って反則じゃね?」


「んなセコイ事されている中で煽るとか東雲のメンタル、パねぇ」


 東雲は観客席の声を気持ちよさそうに聞いていた。応援の声も、非難の声も彼にとってはモチベーションを上げる要因となっている様だ。


「一つアドバイスだ。拳一個分バットを短く持たないと、次のボールに触れることすらできねーよ」


「人を舐めるのもいい加減にしろや!! さっさと投げろ!!」


 東雲の言葉に反発するかの様に、麻布は普段以上にバットを長く持った。グリップエンドに小指をかけ、東雲の投球を待った。


「折角教えてやったのに。まぁいいや。行くぜヘタクソ」


 東雲は大きく振りかぶり、そして左足を大きく上げた。


「無様に三振しろや」


 軸足である右足がピンと立ち、膝が折れずにそのままお尻からゆっくり前に左足が向かって来ている。左膝も内にしっかり残っている。


『エグいボールが来る』


 東雲の一番良い状態のフォームとリンクしている事を理解している不破は、下半身にグッと力を入れた。


「ッラァァァァァァァ!!!!」


 ギリギリまで開きを抑えられていた胸元が、左腕をグッと引き込んだ際を現れた。そしてその反動に釣られて右腕の振りが一層加速する。


 ――シュゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!!


 東雲から放たれたストレートは、轟音の様な回転音を鳴らしながら空気を切り裂き、浮き上がるかの様な軌道でキャッチャー不破へ襲い掛かって来た。



 ――スパァァァァァァァァァァ!!!!


 


 東雲のストレートは、麻布のバットより速くミットへ吸い込まれた。


「ス……ストライク!!! バッターアウッ!!!!」


 審判も一瞬固まってから、ジャッジを下した。


 審判が目を疑うのも無理はなかった。バックスクリーンに表示されている球速表示は百五十四キロを計測していたのである。



 五回裏 終了


 明来 二対二 蛭逗

 今日もご覧頂きありがとうございました。


 毎週日曜日に更新しております。


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 高評価やコメントなども、絶賛募集中です……!

 

 初めてご覧頂いた方は、宜しければ第一話からお読み頂けるとより楽しめます!

 

 この作品が、少しでも皆様の楽しみになれますように。

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