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第百六十七話 チャンスを投資に回す件

 前回の続きです!

 今回もよろしくお願いします♫


●初めての読者様●

 この度はアクセス頂きありがとうございます!

 少しでも楽しんで頂ける様、一生懸命書いております!


 よろしければ第一話から読んで頂けると、より楽しめると思います。ぜひご覧下さい!

 守は汗を流しながら、駄覇の出したサインに静かに頷いた。

 少しばかり緊張しているためか、指先が気になり、ロジンパックに手を触れた。


 ロジンから出る粉が、白い煙のようにマウンド上に舞う。彼女は指先いっぱいにまぶした粉にフッと息をかけた。


 ふと視線を感じ、ネクストバッターサークルに目を移すと、神崎が強い眼差しで守を見つめていた。


 場面は九回表、ツーアウトランナー無し。明来は四点のリードをしっかりキープしている。

 八回にシングルヒットを一本だけ許すも、それ以外のバッターは完璧に抑えていた。


 守個人的な感情とすれば、もう一度神崎と対戦したい気持ちはある。ただ駄覇は三番バッターで打ち取る気満々だった。


 先ほどベンチで発した駄覇の言葉が、いまだに守の耳に残っていた。



――「九回、三人で抑えられれば、四番神崎サンと勝負せずに済むんでチャチャっと押さえましょ」


「……うん、そうだね!」


 守の返答に、駄覇は首を傾げた。


「ん? 何すか千河サン。何か引っかかる感じ?」


「いや、勝つ為にはそれが一番だしね!」


「――神崎サンと勝負したいんスか?」


 駄覇の確信をつく一言に、守は静かに頷いた。


「……うん。こんなチャンスは滅多にないから」


「練習試合だし、良いバッターと一度でも多く対戦したい……と」


 駄覇は腕を組み、守の意図を言葉にした。


「勝敗も勿論大事だけどダメ……かな? 点差も多少余裕あるし」


「はぁ〜っ……」


 駄覇はため息をついた。、


「千河サン。聞きたいんスけど、千河サンの目標はなに?」


「勿論甲子園に出て、それで優勝することだよ! 当たり前じゃん」


 守は即答した。


「そうスよね。じゃあその為には同地区の皇帝学園とは、ほぼ必ずどこかで当たるスよね。ガチメンのコイツらに勝つ必要あるスよね」


「そうだね。だからこそ打たれてもリスクのない練習試合で少しでも経験値を……」


「甘ェ!!」


 突然、駄覇はボリュームを五段回くらい上げた。


「甘ェよその考え方! この試合、神崎サンには嫌な手答えのままで終わって貰うんだよ! 夏大で勝つ為に!!」


「……どういうこと?」


「神崎サンは今日ノーヒット! しかも内容も悪りィ! 仮に最後に打たれて、アイツを気持ちよくさせて何のメリットがある!!」


 言葉遣いは悪いが、駄覇の言っていることは最もであった。


「今日ノーヒットで終われば、そのモヤモヤした感情を持ったまま公式戦に入る! そして俺たちとの対戦の時、イヤでも今日のことを思い出す!」


「た……たしかに」


 守はオドオドしながら答えた。


「仮にホームランでも打たれてみなよ。俺はいつでも千河ヒカルを打てるって心構えでぶつかってくるぜ? だからこそ、今日は手答え無しのままゲームを終わらせる必要がある」


 守は黙って話を聞いていた。


「練習試合の対戦チャンスは投資に回せ。それが公式戦を有利に戦えるという利益を生む」――


 

 守は強く腕を振り抜いた。



 ただボールは彼女の力強いフォームとは裏腹に、打者の手元でブレーキがかかり、沈んでいく。



 ――キィィッ!!!



「山神!!!」

 


 力ない打球が、ショート山神の前に転がっている。


 一般レベルのショートなら、打球が弱い為内野安打のリスクもあり、最後までハラハラする。


 しかし山神の守備は、そこに打たれただけで安心してしまうほどに、チームメイトから絶大な信頼を得ていた。


 山神は素早く打球に回り込み、そして流れるように一塁へスローイングした。



「アウト!!!」



 一塁塁審の声がグラウンド全体に響き渡る。



 守はその場で雄叫びをあげた。




 試合終了 


 皇帝 ゼロ対四 明来

 今日もご覧頂きありがとうございました。


 毎週土日に更新しております。


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 高評価やコメントなども、絶賛募集中です……!

 

 初めてご覧頂いた方は、宜しければ第一話からお読み頂けるとより楽しめます!

 

 この作品が、少しでも皆様の楽しみになれますように。

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