第百五十二話 思わず笑ってしまった件
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「嘘だろ……」
「あのサボり魔の東雲が……百五十二キロ!!」
東雲の最速、百五十二キロのストレートで四番の神崎を抑えられ、明らかに皇帝ベンチは動揺していた。
そんな中、神崎がベンチに戻ってきた。なぜか彼はとても嬉しそうな顔をしていた。
「ドンマイ神崎。そら全球ストレートとか言われたら力むよな」
「そうだよ! そう言って逆に変化球を脳裏にチラつかせるなんて、本当にセコいやつ!」
ベンチに戻った神崎を同級生メンバーがフォローしていた。
「お前ら……あの東雲がそんな策士に見えるか?」
「……それは」
「アイツは本気だ。マジで俺をストレートだけで抑えるつもりだし、自信もあるんだろうよ。俺はそれを確信して思いっきりスイングしただけ。完敗だよ」
そう言いながらも、変わらず神崎は嬉しそうだった。
「お前……なんでそんな笑ってんだよ。悔しくないのか」
若林が神崎に問いかける。
「はは……悔しいに決まってるだろ。球種が分かっているのに、四番の俺が二打席凡退。情けないし示しがつかないよな」
神崎は続けて口を動かす。
「ただ……皇帝の管理野球に合わず腐っていた東雲が、今は自由気ままに進化した姿で皇帝に牙を剥いている。自主性がたった一年で奴をあそこまで成長させたんだぜ」
「……確かに。去年より、特に下半身が一回りも大きくなっている気がする」
若林は一理あるなという感じで返答した。
「アイツがいれば西京の……あのバケモノ二人にもう少し善戦できたかもしれないな」
神崎は去年の、夏の甲子園を思い出していた。
名門、西京学園野球部に彗星の如く現れた、無名の一年生コンビ。彼らに完敗した時の回想だ。
ピッチャー黒江には満足にスイングすらさせてもらえなかった。
カーブと百四十キロのストレート。たったこのニ球種しか操らないが、抜群の制球力と巧みな投球術で簡単に調理されてしまった。試合後半で、多少甘く入ったストレートをシングルヒットにするので精一杯だった。
そして四番の紫電。彼のスケールの大きすぎる野球センスには脱帽だった。
高校から野球を始めたとのことだったが、天性のスイングスピードと、そして背景に何か大きなものを抱えている様なメンタルの強さ。彼が将来野球界のトップに君臨する確信を持つのに、そうは時間がかからなかった。
彼の放ったバットの音は、未だに神崎の耳に残っている。
そんな心境を察してか、若林が神崎の肩に手を回した。
「今年こそアイツらにリベンジするんだろ。頼むぜ皇帝の至宝」
「勿論だ」
神崎と若林はグータッチで締めくくった。
四回表 途中 ツーアウト三塁
皇帝 ゼロ対一 明来
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