第百四十四話 チームメイト対決な件
前回の続きです!
今回もよろしくお願いします♫
●初めての読者様●
この度はアクセス頂きありがとうございます!
少しでも楽しんで頂ける様、一生懸命書いております!
よろしければ第一話から読んで頂けると、より楽しめると思います。ぜひご覧下さい!
「さぁーて、かかってこいよ中谷っち」
左打席に立つ駄覇は、右手でバット立ててピッチャー中谷の方に向けた。
そして左手で右肩の袖を内側に引いてからバットを戻し、構えを取った。駄覇が毎回行うバッティングルーティンである。
「チッ……ガキがイチローの真似かよムカつくな」
東雲の愚痴を守は聞こえてないふりをしてスルーした。今はランナーコーチャーの仕事に専念することだけを考えている様だ。
マウンド上の中谷は何度もサインに首を振っていた。たまらず若林はタイムをとった。
「どうした? カーブもストレートも首振って」
若林が問いかける。
「すいません若林さん。球種というか……ストライクを投げることに首を振っています」
「……わかった。じゃあ初球は際どい所を投げて、そっから内外を上手く使って抑えるぞ」
そう言って若林は中谷の背中を叩いた。ただ中谷の表情は固いままだった。
「いえ若林さん……。義経……いや、あのバッターには歩かせていいかな、と思ってます」
中谷は恐る恐る口を開いて想いを伝えた。
「はぁ!? 初回ツーアウト一、三塁だぞ!! 歩かせて満塁にしてみろ、もうフォアボールは許されないんだぞ!!」
「いえ……でも俺は彼を抑えられる気がしません」
「ウルセェ!!! 二軍とは言え試合のスタメンを任されてるんだ。テメーも皇帝の先発ピッチャーっつー自覚を持って勝負しろよ!」
若林は怒りながらホームベースに戻って行ってしまった。
――その後、中谷はストレートの制球が定まらず、ツーボールとボール先行になった。思惑を崩された若林があからさまに怒りを露わにしていた。
「逃げんな!! 腕を振れ!!! ここに投げろ!!!」
若林はミットをバシッと殴り、構えを取った。中谷は観念したのか、すぐに投球フォームに入った。
「甘ぇよ」
――スカァァァン!!!!
ストレートを捉えた駄覇の打球はレフトの前に落ちた。芸術的な流し打ちで先制のタイムリーヒットとなった。
「くそ! これが中学MVPのバッティングかよ!」
若林は悔しそうに駄覇の方を見た。
次の瞬間、若林は恐ろしく冷たい視線を感じ、そちらに目を向けた。マウンド上の中谷だった。
「……たのに」
「あ? 何だよ中谷、聞こえねーよ」
「だから言ったのに!!! 打たれるって!!!!!」
突然中谷が若林に向かって大声をあげた。
「お前……先輩に向かってその言い方はねーだろ」
「うるさい!! だから俺は逃げるって言ったのにアンタのせいで打たれた……打たれたんだよぉぉぉ!!!!」
一塁ランナーコーチャーの守はこの異様な光景を見て動揺していた。
「うわあ……今日の試合もうメチャメチャだよ」
「あーあ、中谷っち、バーサーカースイッチが入っちゃったっすね」
何とも厨二くさいセリフが駄覇から発せられた。
「なにそれ」
守は思わず駄覇に問いかけた。
「中谷っち、試合序盤は自信がなくてオドオドしています。ただ、試合中何かがきっかけでヤケクソになるんです」
「え、それダメなやつじゃん」
「普通ならね。ただ中谷っちの真の実力は、このヤケクソ状態から発揮されるんす。だから基本的にはスロースターターなの」
その話を聞いた守は、中谷から禍々しいオーラを感じる様な気がした。
「こうなった中谷っちは厳しいっすよ。思ったよりずっと起動が早い……初回、最低でも三点は欲しかった所っす」
「そ……そんなにすごいの?」
「みてればわかるっすよ」
駄覇はなぜか嬉しそうに、マウンド上の中谷を見つめていた。
一回裏 途中 ツーアウト一、二塁
皇帝 ゼロ対一 明来
今日もご覧頂きありがとうございました。
毎週土日に更新しております。
もし少しでもこの作品が面白ければ、ブックマークして頂けると励みになります。
高評価やコメントなども、絶賛募集中です……!
初めてご覧頂いた方は、宜しければ第一話からお読み頂けるとより楽しめます!
この作品が、少しでも皆様の楽しみになれますように。