第百三十二話 バッティング練習が鬼キツい件
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――リリリリリリ!!!!
グラウンドに設置していたタイマーの音が鳴り響いた。
「ハーッ……ハーッ」
「も……もう握力が……」
カラカラァーン!
青山と風見の手からバットがこぼれ落ちた。そして二人はその場で倒れ込んだ。
「はーいお疲れ様。二十分休憩していいよー」
ロングティーを行う為にトスをあげていた瑞穂が二人に手早くドリンクを差し出した。
「さ……流石に……五分ロンティー耐久を交互に……一時間もやるのはキツすぎっしょ……」
「ロンティーを……していない間も……一人で置きティーを打ち続けるからね……」
二人は一瞬で貰ったドリンクを喉に流し込んでいた。
「二人の課題はバットをしっかり振れる事だからね。かなりの荒療治だけど、試合中どれだけ疲労が蓄積してても甘い球をしっかり捉えられるようにして欲しいの」
「そりゃそうだけど……」
青山の少し不満げな表情を見て、瑞穂が咳払いをして例え話を始めた。
「少しだけ辛いことを言うと、二人は基本的に下位打線だと思うの。仮に自分がピッチャーで試合中盤、疲れが見え始めたとするよ。相手は下位打線、同じく疲弊している。これまでの一、二打席をみて他の選手より明らかにバッティングが劣っている。自分なら何を投げる?」
「……甘いコースに、一番コントロールできる球?」
風見が答えた。
「正解。ストレートやカーブ、スライダー……、自分が一番ストライクを簡単に取れるボールを投げてくるわ。なぜだと思う?」
「打者が疲労して初球からは振らないか、振ってもスイングが鈍く、打ち取れるから?」
今度は青山が答えた。
「その通り。悔しいかもだけど、これが省エネピッチングに繋がるの。高校野球みたいにピッチャーの枚数が多くないほど、こうした力配分は必須になるの」
二人は二杯目のドリンクを飲みながら話を聞いている。
「だからこそ、二人にはそんな気持ちで投げられた甘い球を捉えられるスイングを作って欲しいの」
瑞穂の話を聞いていた青山が突如涙を流していた。
「えぇ……、いくら悔しいからって泣かなくても……」
「ちげぇ……ちげぇよ瑞穂ちゃん」
青山の涙の意味がわからず、瑞穂が首を傾げる。
「瑞穂ちゃんが、そこまで俺のことを思って考えてくれてたなんて……男泣き系だわ」
瑞穂と風見は大きく溜息をついた。
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