第百五話 競走なしにチームの向上は図れない件
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守は今でも覚えている。瑞穂が甲子園から帰ってきて、西京学園の凄さを熱弁していた姿を。
ニュースやネット記事、動画サイトでバズりまくっていたから、映像では見た事はあるが、それだけでは伝わらない凄さがあったとの事だった。
一年生で四番を張る紫電は、なんと大会最多タイの六本塁打。打率も五割を超えた。
同じく一年生で実質エースの黒江は、甲子園で三失点しかしていない。物凄い安定感だ。
守たちは、そんな怪物たちと同世代。勝ち進めば必ず彼らと対峙する。
恐ろしい選手たちだが、何故だかいつか対戦するのだろう、そんな予感を守は感じていた。
そんなことを思い出しながら守はブルペンの横で地道にチューブを引っ張っていた。徐々に左腕の内側の筋肉が暖かくなっていることを感じる。
チューブは、所謂インナーマッスルを鍛えるトレーニングである。肩肘のケガ防止だけでなくスピードアップにも繋がる、ピッチャー必須のトレーニングだ。
――スパァァン!
「ナイスボール、東雲」
不破が乾いた捕球音を響かせていた。
この寒い時期にも関わらず球が速い。百四十キロはゆうに超えている。地道なトレーニングの賜物だろう。春以降どこまで球速が伸びるのだろうか。
守は内心焦っていた。東雲が公式戦に出られる様になったら、エースは誰になるのか。勿論守は誰にも譲る気はないし、結果を出している自負もある。
ただ、東雲の総合力は守を超えている自覚はある。コントロール以外は全て東雲の方が上だろう。
「焦っちゃダメ。次はトレーニングルームに行くよ」
守の内心を察したか、瑞穂が守の腕を引っ張り、トレーニングルームに連行した。
この環境は、恐らく相互のレベルアップを図る為に監督と瑞穂が用意したのだろう。守も薄々勘づいてはいた。
自分には東雲や他のピッチャーが奮闘する姿を見せてエースの座を譲らない様にさせ、東雲には夏大会までにどれだけチームから信頼されるか、結果を出す様に促す。競走なしにチームの向上は図れないのだ。
「私も負けてられないな」
守は一呼吸おいて気持ちを高め、ゆっくりとトレーニングルームの扉を開けた。
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