第百二話 世代交代
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――皇帝学院、野球部グラウンド。
甲子園から帰ってきた彼らは、ユニフォームを着て集合をしていた。今日は三年生の引退式だ。西京学園との試合に負けた事により、次の世代へ交代する。これは三年生から代替わりの儀式のようなものだった。引退する三年生の向かいに一、二年生が整列している。
「お疲れ様です」
三年生を代表して、キャプテンの宮西が前に出て話し始めた。
「ようやく掴んだ甲子園だったが、恥ずべき結果となってしまいました」
一、二年生は黙って話を聞く。
「一、二年生にはグランド内外で、沢山のサポートして貰ったのに、本当に申し訳ない」
宮西が頭を下げ、他の三年生もそれに続いた。
一、二年生はその姿に驚き、顔をあげて欲しいと考えてはいたが、それを伝える勇気は誰にもなく、ただ黙っていることしかできなかった。
「お前たちなら、来年も必ず甲子園に行けると信じている。打倒西京を目標に頑張ってください」
「そして今回の結果を踏まえ、次のキャプテンについてだが――」
二年生の顔が強張る。キャプテンになるということは良くも悪くも、チームの顔になるということである。
結果を出せることが出来ればその後の野球人生がいい方向に転がる。しかし結果を出せないとOBに後ろ指を刺され、後輩からは反面教師にされてしまう。
「太刀川、お願いできるか。三年生総意でお前を推薦させて貰った」
太刀川の心境は複雑だった。しかし、断ることを許されない雰囲気が彼の腹を括らせた。
「わかりました。とんでもない目標まで提示されてしまいましたが、頑張ってみます」
太刀川新キャプテン就任を受けて、拍手が巻き起こった。ただ、素直な気持ちで手を叩くものもいるが、受け入れ難く考えているものも少なくなかった。
太刀川も、己のキャプテン就任は賭けということは分かっていた。
過信ではなく自分が一番野球の技術があること、発言力があることは自覚している。ただ一部の人間から面白く思われていないことも理解している。
一年生の時から試合に出て、プロ野球のスカウトが何人も自分に会いにきている。先輩相手にも恐れず意見できてしまう性格。知らぬうちに周りと壁ができるのも納得だった。
――だが、このチームが勝つにはこれが最善。仲良しチームでは西京に、と言うよりあの化け物一年生コンビと白川に勝つことは絶対にできない。勘ではなく確信を太刀川はもっていた。
引退式が終わり、現役生は各々お世話になった先輩の元へ挨拶に向かっていた。太刀川は持ち場から離れず、これからのことを考えていた。
「負けた先輩方に話すことはないってか? いい御身分だな」
すれ違いざまに捨て台詞を吐いた峰は、相変わらずのゴマスリモードで三年生の元へ歩み寄っていた。
きっと彼こそ、キャプテンの称号を取りたくて仕方なかったのだろう。実際問題、チーム内の人望は峰がトップだ。
だが最終的には、峰という人間は自分の進路だけを考えていることを太刀川は知っている。彼がキャプテンになっていたら、甲子園出場以上の成果をあげることはできないだろうと考えている。
「キャプテン、何か考え事ですか?」
神崎が問いかけていた。
「いつも通り太刀川さんでいいよ。今後のことを少しな」
太刀川は続けた。
「それと――お前にどうしても言わなきゃならないことがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「今日この後医者に行け。それで――しばらくボール投げるのは禁止な」
「え……」
太刀川からの突然の指示に、神崎の頭の中は真っ白になった。
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