88話
「うー・・・」
「おはようニホリ。早速だがこれに着替えてくんない?」
「・・・う?」
「ワン!」
「ぴぴ?」
「クゥ!」
「きー!」
目をこすりながらニホリが二階から降りてくる。
階段を降り切ってから扉を開けて視界に飛び込んできたのはみんながあわただしく動く回る姿。
正確には、みんながおもちゃをどこかに運ぶ姿だ。
「ほれ、なんでもいいから着替えてけれ」
「うー」
明らかにまだ寝ぼけてやがる。あの調子だと、また夜更かしか・・・。
「ワン!」
「おう。後はニホリだけかな。ピッちゃんは?」
「る!」
「おお。よくまとめたな」
最近いただいた持ち運び用のピッちゃんハウス。軽く、折りたためるのが便利な商品だ。かなりコンパクトにまとまるのでかだつけるのも簡単かつ便利。
「他のみんなも・・・まぁおもちゃくらいか」
「きー!」
「ああ、お前は木もあったな」
「クゥ!」
「ちゅー!」
「クッションは・・・あ、そうだな。持ってかなきゃな」
あっちにはうちみたいにクッションが大量にあるわけじゃないし。
「う!」
「おう、着替えたな。顔も洗った?」
「う」
「よしよし。じゃあ準備完了かな」
「う?」
「ん?言ってなかったっけ?」
「うー」
「ワン?」
「う」
「今日はじいちゃん家に行きます」
「・・・うー」
「会えばわかる」
基本的に近所の老人衆と変わらんからな。
俺の祖父の家まではちょっと遠い。うちは東京だけど、あっちは静岡だ。
車だと大体・・・混んでなきゃ2、3時間くらい?
「うー・・・」
「そっか。ニホリは高速道路も初めてか」
「興味深々だな」
「でも危ないからちゃんと座れ」
「う!」
「コロちゃん。ニホリがちゃんと座ってなかったら座らせてね」
「ワン」
今は車に乗ってるならシートベルトをしなきゃいけないしな。してるとは言え、あんまり身を乗り出したりしていると強制的に人形に戻すまである。
あ、ちなみにしーちゃんとユニちゃんはお留守番だ。そもそも母さんも留守番組だし。仕事が忙しいってのもあったが、流石にしーちゃんたちを乗せらる車を私用で使うのはな。
「zzz」
「zzz」
「zzz・・・クゥ」
「zzzz」
「こっちはこっちで興味なさすぎじゃね」
「ワン」
「るー」
「いやどうせ遠いしな。寝てた方がいいか」
じいちゃん家は田舎だ。なんせ、田舎に住みたいとかで前に引っ越ししたし。
その前は都内にいたから楽に会いに行けたんだけどな。
高速降りてもしばらく走るし。駅からも遠いから地味に不便。本人曰く、それがいいとかなんとか。
「俺は田舎暮らしはむりそうだなぁ」
「そうなのか?」
「だって買い物も不便だろあそこ」
「ああ・・・コンビニとか閉まるの速いしな」
田舎あるある・・・なのか?よく知らんが、少なくともあそこの地域はそうだな。前にじいちゃん家に行った時、夜に飲み物買いたくて行ったら閉まってた。
初めてコンビニが閉まってるところ見たよ。都内は頑張ってるよな。飲み物はさらに遠い自販機で買った。
「その分空気やらはあっちの方がいいけどさ」
「にゃ?」
「あらふーりんちゃん。出したの?」
「る!」
「そーかそーか。ほれ危ないからこっち来な」
「にゃー」
「うーん。お前の触り心地も不思議だよなぁ」
猫みたいに柔らかいんだが、それ以上にフワフワ?って感じ。
元が魔力だからこれが魔力の感触なのか。でもちゃんと体温を感じるのだ。
「にゅわー」(グニャ
「やめなさい」
「にゃ」
「る!」
「自由度の高さは認めよう」
最近のぴっちゃんとふーりんちゃんお流行りはふーりんちゃんの形状変化らしい。
猫にくくらずにいろいろ試すことで様々な状況に臨機応変に対応できるようにしたい・・・らしい。
俺はただ面白いからやってると思ってたんだが。
今も俺の腕輪みたいにぐるっと体を一周させてたしな。猫離れが進む。まぁ厳密には猫じゃないしいいのか?
「恭輔、ガム取ってくれ」
「ほーい」
「る!」
「え、危なくね?」
「るる!」
「・・・にゃ?」
「んーじゃあふーりんちゃんに指示出す練習ってことで」
ふーりんちゃんも自分なら何があっても大丈夫って自覚があるから運ぶ?と聞いてくれた。
ピッちゃんは小さいし飛んでるからあんまり車の影響を受けないんだけど、それでも物理無効なふーりんちゃんに比べちゃうと安全に対する信頼度が違う。
練習と思って頑張ってくれ。
「ついでに口に入れてやれ」
「にゃあ」
「お、ありがとうな。そろそろ富士山も見えてくるぞ」
「あ、もうか。じゃあ起こさないと」
「る!」
「じゃあそっちよろしく」
俺もシートベルトしてるから動けないが、俺の場合はこれがある
「いでよミニゴーレム」
「」
「るー」
「・・・にゃあ?」
「これなら危なくないだろ」
遠隔操作可能なゴーレムなら俺は安全だし。
「ほれほれ起きろー」
「zzzz・・・?」
「・・・きー」
「ちゅ!?」
「う・・・」
「だれがミニサイズだ」
ねっさん俺とゴーレムを間違えたな?
「そろそろ富士山見えるぞー。テレビで見て楽しみにしてただろう」
「・・・ぴ!!」
「きき!」
「ちゅちゅ!」
「うー!」
「さぁ右と左どっちかな?」
「・・・ワン?」
「お前は何回か見てるしなぁ」
あ、そうだ。留守番組のお土産も用意しなきゃな。
でも何かあったか?しーちゃんとユニちゃんが貰ってうれしい物・・・とりあえず富士山の写真は撮るか。
あとは・・・うーん。母さんしかお菓子食べない・・・
「ワン」
「ああ、山菜か。どうせ運動がてら山には行くし。取っていいなら取りに行くか」
許可が取れたらだし、そもそも時期的にあんまり種類は多くないけど、その分は珍しい物ってことでちょうどいいだろう。
山菜って基本2月から4月のイメージ。実際山菜を出してる料理店なんかではこの時期は出さないか、保存していた物を使うかのどちらかだろうし。
「いや、たぶんすぐにいいって言われると思うぞ」
「だろうとは思ってる」
「なんなら周囲の人たちから貰いそうじゃないか?」
「・・・ああ」
忘れてた、この流れは近所の老人衆と同じ流れが生まれるやーつ。
「そういや、吉助は元気だろうか」
「ワン!」
「そりゃ元気だろうな」
じいちゃんの家にいる秋田犬、吉助。じいちゃんの家にいる犬だけあり犬的にはもうお年寄り・・・ぎりおじさん?
「ワフー」
「楽しみだよなぁ」
「コロにとっては兄のようなものか?」
「うーん。どうなんだろ」
コロちゃんはほとんどを俺と過ごしてるから兄って感じじゃないだろうかな。
なんだろう、たまにある仲のいい従弟?
「また絶妙な・・・」
「そんなものでしょ。あ、見えた!」
「う!」
「ぴ!」
「き!」
「ちゅ!」
「る!」
「にゃー」(クシクシ
「・・・ワフ」
「クゥ!」