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80話

今日はここまで

「え、待って。なんで蹴り飛ばされた?」


「ぶるる」


「追撃やめい!!」



もう一発いくか?と言わんばかりの動きをしているのでなんとか姿勢を戻してなだめる。



「どうどう」


「・・・ふん」


「よし落ち着いた・・・」


「・・・?」


「ああ、大丈夫・・・」



我ながら馬に蹴られて無傷ってすごいなと思わんでもないが、よく考えてみるともっと強い攻撃受けてるもんなぁ・・・。



「ってそうじゃないわ」


「うー!」



ニホリの猛抗議。しかし梅子は子供に夢中で聞いてない



「うー!」


「はいはい。お前も地団駄踏まないの」


「ワン」


「え、俺が悪いの?」



コロちゃんは梅子が俺を蹴っ飛ばした理由がわかっているようだ。

ていうか、梅子どこから来た。



「る~」


「クゥ!」


「お前らか」



どうもふーちゃんとピッちゃんが連れてきたらしい。場所知ってたのか?・・・いや、コロちゃんも共犯か。



「ワフ」


「話を聞く?いや、聞くけどさ」


「・・・」



梅子に近寄ると、子供の方はコロちゃん達の方によって行く。一対一で話をさせてくれるようだ。



「・・・」


「・・・」



何から話すべきか、子供の事か、俺を蹴った件か。悩んでいたが、梅子の目を見て話すのは辞めた。

こいつは、特に俺を恨んでいない。自分の子供が、自分の言葉がわからなくなってしまった原因である俺をだ。

話は聞いていたようだ。その上で恨んでいない。


梅子にとって、自分の子供は子供なのだ。それにつきるのだ。



「だから蹴ったのか」


「・・・ぶるる」


「そっかぁ・・・」



余計なお世話だと、私の子供への愛は変わらないと、言葉が伝わらない程度、何が問題なのか。お前が謝るようなことは一切ない。



「そりゃ・・・俺が悪いわな」


「・・・」(ツンツン


「どうした?」


「・・・」(フンス


「・・・ははは。そうだよな。梅子は優しいもんな」



子供にも言われてしまった。

本当に、余計なことをしてしまったようだ。



「うん。ならもう謝らない。これでいいか?」


「ひひーん!」


「・・・!!」


「わかったよ。次は気をつけるさ」



本当に、いい連中だよ。












「なんかすいません。いろいろ」


「いや。いい物を見せてもらったよ」



梅子たちは自分たちの部屋に戻っていった。道中のカギはピッちゃんが開けていくようだ。

ふーちゃんとコロちゃんも一緒だし、まぁ大丈夫だろう。



「でもまさか、梅子に蹴られるとはなぁ」



あれは俺が悪いから全然いいんだけどね。



「怪我はないのかい?」


「大丈夫ですよ。あれくらいなら問題なしです」


「あれくらいって・・・梅子、かなり力持ちなんだけどねぇ」



とはいってもオーガ以下だしなぁ。先生に説明するのは難しいし、そもそもしちゃいけないんだけどさ。

ともかく、馬の蹴りくらいなら問題はなし!。

まぁ飛び蹴りとかが顎に当たったら多分ダメかな・・・さすがに気絶しそう。



「それで、あの子は大丈夫なのかい?」


「ええ、魔力も問題なく流れてますし、身体的にも・・・、あぁこっちは先生の方が詳しいでしょう」


「確かに健康面はこっちでも見たけれどねぇ。やっぱり心配じゃないか」


「いろいろ謎ではありますからね」



親父が来るのが明日。いきなり何か起こるとは考えづらいけど、念のため今日はここにいた方がいいかもしれない。

俺の魔力の影響を考えるのならいない方がいいのかもしれないが、何かあった時に動ける状態にしておいた方がいい。

何かあっても、親父が来るまで時間がかかるだろう。そもそも、普通の人の手に負える範囲なら俺はいらないんだが。



「何かあるかもしれないと?」


「俺の影響を、本当に受けているのなら、念には念を入れた方がいいかもしれません」



とは言うものの、おそらく大丈夫だろう。少なくとも、周りの人間に危険があることはない。

あるとしたら、あの子自身の問題だ。



「いくら魔力に適応して、普通の馬から離れたとしても、急な成長で何かないとは言い切れません」



特に魔力への適応のせいでそうなったのならまずいことになる。

一度近距離で触れてしまった以上、何かあるかもしれないし、ないかもしれない。俺の魔力が関係ないにしてもだ。

一応、魔力の抑え方なんかはすでにコツをつかんでいる。



「しーちゃんがいてよかったわ」


「めぇぇ」


「・・・暖かいのかそれ」


「めぇぇ」


「気持ちいいんだな」



俺と梅子たちが話してる間もずっと事務所内のストーブであったまってるし。

羊って毛が多いから寒さにはそこそこ強いはずなんだけど・・・いや、今は確かに普段より毛が減ってるけども。


この様子からは想像できないが、魔力の扱い方に関して、しーちゃんはうちで一番だ。

魔法の威力って点ではふーちゃんも負けてないんだが、それは俺と一緒に戦ってきた経験の長さによるスキルの強さが関係している。

しーちゃんがうちに来たのはふーちゃんに比べたらつい最近。特殊なモンスターであることを引いてもスキルの強さ的には差がある。

それを魔力の扱い方で埋めているのだ。・・・っていうニホリの解説がさっきあった。



「まぁ細かい所は省くとして、俺がいた方が万が一にも対応できるので」


「わかりました。でも、仮眠室くらいしか、ここには用意が・・・」


「それがあれば十分ですよ」



最悪、寒ければしーちゃんの『増毛』で物理的に羊毛布団ができるわけで。



「では、食べ物はこちらで買ってきますね」


「ああー。すいません。さすがにこいつら置いていくわけにはいかないので」


「それくらいなら全然大丈夫ですよ」


「後で何食べるかは教えますんで」



ぶっちゃけ大体はここにいる動物の食べる物を同じだと思うからほぼ俺とニホリの買い物なんだけど。

うん。逆に申し訳ないな、これ。



「・・・恭輔君。ひとついいですか?」


「はい?」



改まって先生が問いかけてくる。一体なんだろうか。



「あの子の話です」


「梅子の?」


「ええ、正直に答えてください。このままあの子をうちに置いておくことは可能でしょうか」


「それは・・・」



出来ると言えばできるだろう。魔力の扱いにたけ、なおかつ動物の世話の出来る人間が常駐するのなら。

どっちか片方を満たすことは出来るが、両方できるのは・・・・おそらく俺だけだろう。

だが、俺がずっとここにいるわけにもいかない。

そうなると、何かあるたびにここに俺が来ることになるんだが、それも難しいだろう。ダンジョンに潜ってたり、遠出してたらその時点でアウトだ。

健康状態もさることながら、身体能力や他の検査も必要になるのは間違いない。

そうなると、ここにずっといるのは現実的ではない。



「そうですか・・・やはり・・・」


「なにせただの新種ってわけじゃないですし。ダンジョン関連だとどうしても・・・」


「・・・ここの子は、全員私の実の子供みたいなものです」


「ええ・・・」


「できるのなら、ずっといてほしいのですがね」


「現状じゃ・・・どうしても・・・」


「ええ、わかってます。だから、お願いがあるんです」


「・・・お願い?」



いや、なんとなく察しがつく。自分が面倒を見切れないのなら、見れる人間に預ければいい。それも出来る限り自分が信用してる人に。



「あの子を、恭輔君のところにお任せしてもいいですか?」


「やっぱり?」


「ええ、今の恭輔君なら、心配なく任せられます」


「そりゃあまぁ。一応先生の教え子ですし?」


「それだけじゃありませんよ?」


「はい?」


「言ったでしょう?今の恭輔君なら任せられると」


「うん????」



先生は笑顔でそういった。ちょっといじわるそうな顔をしているが、同時にとてもうれしそうだ。


え、でも、どんな理由だ?何があって俺なら?

全くわかんねぇ・・・

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