7話
「ねっさんも洗えばなかなかかわいらしいのでは?」
「ちゅ~」
「・・・ワン」
「なに?お疲れって」
そんな強引に洗うわけないだろう。
一度家にテイムしたネズミを連れ帰ったところ、母さんが一目見てねっさんといったのでそれに決定した。
あと土で汚かったので風呂桶に水を貯め、軽くシャワーを使い洗った。これで家に入れるな。
「まぁ、その前にダンジョン行くんですけど」
本当は昼飯も食べてくか?とも思ったがよく考えるとまだ10時にもなってない。さすがに時間がもったいないので地下二階の扉まで戻ってきた。
広場にはまだ入ってないので何も出てこないが。
あと、少し変なことがあった。最初にこのフロアを回った時は見なかったのだが、今回はスライムをちらほら見かけるのだ。
たまたま見なかっただけか、何かしらの条件を満たしたから出てきたか。まぁ、何もしてこないしほっておくんですけど。
「すらっぴさん、そこらへんはどうよ」
「ぴ?」
「わかんないよなぁ」
流石に期待してなかったけど。
あ、ねっさんどうするか。今回戦わせてないからレベル上がってないし、スキルも何も持ってないんだよな。危ないかな?
スクロールは一本持ってきてはいるけど、使っちゃうか?どうせ五分で一回のボスを倒せばいいだけだしな。・・・・使うか。
「はいはい今回はー・・・『分身』?」
いつも通りの声が脳内に聞こえたところで、ちと考えようか。分身・・・効果はそのままだろうけど、
「いや、今回はねっさんに使うと決めてたので」
コロちゃんに使ったらどうなるんだと思ったが、今回はねっさんに。コロちゃんの強化はまた後日だ。
「こうなるともっといっぱいスキルスクロール欲しいな」
何を隠そう、俺はゲームではトロコンよりレベル上げ、隠し武器とかよりレベル上げを優先するタイプだ。だからこのダンジョンも母さんたちから頼まれたからいろいろ探しているし考える。が、本当はレベル上げしたいので無心で周回したいのだ。
「先に進めばそれだけボスと戦える。条件満たせばスクロールってわけだ」
気合の入り方が違いますよ。あ、ねっさんのスキル見ないと。
・・・予想通り増えたな。一気に3匹になった。まさか実体があるわけ・・・あるな。
「ちゅー!」
「これはなかなか良いのでは?」
分身だけ突っ込ませてかく乱とか悪用の方法はいっぱいあるな。
「よし、行くか!」
「ぴー!」「きー!」「ワン!」「ちゅー!」
扉のある広場に足を踏み入れる。かなり広いな。一階がバスケットコートの半分くらいだったのが、今回は完全にバスケットコートくらいある。
ちなみに、今回も想定通り退路はふさがれました。地下から地面がせりあがってくる感じね。
「うわぁ、蛇だ」
「ぴ?」
「苦手ってわけじゃないけど、純粋に戦いにくそうで」
細い、速そう、噛まれたら終わりそう、と三拍子そろってる。それに、あの形状だとコロちゃんも活躍しづらいか?
数も五匹でこちらの数と同じ。
「ワン!」
「ちゅー!」
「え、任せろって?鉈も使う?考えがあるなら試してもいいけど・・・」
危ないのなら無しでって言う前に、ねっさんの分身が蛇に走っていった。
正直、そんなに速いわけではないのであっさりつかまってしまうが、噛まれた瞬間に分身が消える。蛇は、噛んだはずの獲物が消えたことに驚いたのか、声をあげて動きを止める。
その隙ができた瞬間、コロちゃんが口にくわえた鉈を、上から高速でたたきつけた。
「うわぁ」
「ぴぃぃ」
「ちゅ!」
鉈はそこまで切れ味のよいものではない。たたきつけて木を折ったり、切れ目を入れた薪を地面にたたきつけて割るとか、そんな使い方をする。
しかし、コロちゃんの高速移動によって生み出された速さが乗せられた攻撃により、蛇の一匹はあわれにも頭と胴体が分かれてしまった。
「ワン!」「ちゅー!」
「自慢げだなー。いつ打ち合わせしたんだか」
しかしかなり助かった。これであと四体。同じ手順でもなんでも、隙ができればコロちゃんがやってくれるわけだ。
・・・またコロちゃん頼りになってるな。帰ったらご褒美をあげよう。
「俺たちも行くか」
「ぴ!」「き!」
やるのは魔法連打ですけど。
ポーン
『世界で初めて二層のボス討伐を確認しました。スキルスクロールを送ります』
『ボスの五分未満での討伐を確認しました。報酬を送ります』
「あれ?スクロールじゃないの?」
たまたまなのか、このフロアはそうなっているのか。もし後者ならスキル集めが遅れるな。
あと地下二階じゃなくて二層なのか。
「今は宝箱あけるか」
「ぴ!」
「開けたい?どうぞどうぞ」
すらっぴがぴょんぴょん跳ねて宝箱に触れる。一層のと同じように、ひとりでに開いていく。
今回の中身は・・・同じ宝石?と、あれ?スクロール?
「こっちで出るのか」
だから五分未満で違うものがもらえたのか?てかもらえるやつってどこに・・・あ、コロちゃんの前か。俺がトップなのではなかったのか。
「何これ、手袋?」
蛇皮の手袋・・・ていうか籠手か?肘くらいまでを覆える大きさだ。人間用だし俺しか使えないな。
良い物なのか悪いのか。試してみたいけど、先進むか?
「行く?」
「ワン!」「ちゅー!」
今回の功労者二人は行く気満々のようだ。とりあえず、スクロールはバッグにしまって。籠手はつけれるか?・・・意外と簡単な構造だな。サイズもちょうどだ。
「ちなみにドアの先は・・・やっぱり階段。いくぞー」
「道が広くなったな」
今までの道は、大体大人4人が並んだらもう一杯になるくらい。今は7人くらいいけるか。
「さてさて、何が出るかな?」
蛇だな。蛇だろうな。今までの流れ的にテイムの流れだけどどうするか。これ以上増えても面倒見切れないし・・・帰って親父たちに聞いてからでもいいか。
「じゃ、索敵よろしく」
「ワン!」「ちゅー!」
「あら?ねっさんも?分身を進ませる?・・・本当に便利ねそれ」
おまかせしますけど。ところで、ねっさんのご褒美ってチーズでいいのか?
「広すぎやしないかここ!!」
「ぴ~」「き~」
「お前ら乗ってるだけでしょ。疲れるのはコロちゃんとねっさん。あと、お前ら持って移動してる俺な」
かれこれ2時間近く歩いてるか?もちろんその間にも戦闘はあるのでずっと移動しているわけじゃないがそれでも広い。
あ、敵はやっぱり蛇でした。3匹くらいしか出てこないからボス戦より楽だ。
「よし!みんな!」
「ワン?」「ちゅー?」
代表で返事したのか、二人だけの返事だった。
「おなか減ったし帰ります」
「ワン」「ちゅー」
「賛成か。そりゃな。そうだよな」
帰って飯食うか。もう一度は・・・その時に決めよう。
コロちゃん?最短ルートでよろしくね。