71話
トレントの群れを抜ける。
それは簡単なことではなかった・・・。三崎さんとバン君にとっては。
「気持ち悪い・・・」
「ぅぅぅ・・・」
「飛ばしすぎたか・・・」
「めぇ・・・」
「しーちゃんは悪くないぞー」
しーちゃんの最高速度は馬より速い。まぁレベルあるし当然っちゃ当然ですけど。
それでもコロちゃんやバトちゃんの速度には追いつかないが、競馬何かで走ってる馬より速いのだ。
そんなしーちゃんに固定具なしで乗っているとどうなるか。なお、しーちゃんは攻撃と回避をするためにかなり激しく動き回るものとする。
「まぁこうなると」
「ううう。恭輔君。なにか袋って・・・」
「その辺でいいんじゃないんすかね」
「それは・・・おぇ」
「あーはいはい。これどうぞ」
ダメみたいですね。まぁ今はダメになってくれてた方がいいかな。
そもそも、トレントは奥に存在しているなんやらが送り出してきていると俺は推測した。
それをニホリも否定しなかったし、あっているんだと思う。
何が言いたいか。
奥についてもいないのにトレントが出てこず、こうして話ができるレベルで落ち着ける空間が存在しているのはなんでだってことだ。
「とは言うものの、簡単だわな」
「くるぅ?」
「いやな?こういう場所があるってことは、お約束だとボスの手前に来れたってパターンが多くってな」
「くる!」
「でもそれは都合よく考えた場合でな?最悪はまだ遠いとかある」
「くるる!?」
「今回は二つとも違ったけどね」
「??」
「下がっときな。ニホリ、しーちゃん。後は・・・すらっぴ!」
「う!」
「めぇ!」
「ぴ?」
「下がってバン君たちの護衛な。何かあったら迎撃。最悪は無理やり動かせ」
「・・・うん?恭輔君?」
「いいから下がっててくださーい」
遠くから音が聞こえる。何かが地面から出てくる音と引きずられる音。両方とも巨大な何かから発せられる音に聞こえる。
視界の範囲にも少しづつ見えてきた。まだちょっと距離があるか?。
「恭輔君・・・あれって」
「そろそろマジで下がらないと危ないですよ?」
「無理です・・・あれは!」
「超ビックなトレントってわけですねぇ」
あれが、今まで俺たちにトレントを送り付けてきた張本人ってわけだ。
サイズは今までのトレントとは比べ物にならないサイズ。いや、ダンジョンで見た中でもっとも大きい。
高層ビル程のサイズと言われても納得がいく。
それでまだ完全に地面から出てきてない。今でちょうど半分か?。
「勝てっこありません!」
「まぁサイズ的には見たことないですね」
「クゥ!」
「だよなぁ。見た目はただの木だけど」
枝一本に込められた魔力が尋常じゃない量になってる。
ワイバーンと同じくらいかそれ以上。本体・・・というか、幹の部分にはその倍くらいの魔力がある。
魔力量を見ても今までと比べ物にならない強敵であることがわかる。
「ワン」
「どうだった?」
「ワン!」
「そうかそうか」
「何かわかったんですか?」
「あいつが反応するかどうか見てきてもらいました。全くコロちゃんには反応してなかったみたいですけど」
「・・・でも、それがわかっても」
「いやぁ、結構大事ですよ。ふーちゃんねっさん。いける?」
「クゥ!」
「ちゅ!」
「ふーちゃんは結構頑張ってもらったけど。こっからが本番ってね」
「何をするんですか・・・?」
「いや、出てきてる途中で、反応ないなら今のうちに準備しちゃおうかと」
「・・・はい?」
敵の準備を待ってやる必要もないですし?。最大火力で一気に殺る。
「念のための護衛は残しますんでねぇ。・・・行ってきます!!!」
「恭輔君!!」
「ワン!」
ふーちゃんとねっさんの攻撃は普通のトレントにはかなり相性がいい。
その分。コロちゃんと俺は敵の全体を攻撃しないと倒しきれない分時間がかかる。
今は反応がないとはいえ、いつ動き始めるかはわからない。そのため、比較的回避と防御のある俺とコロちゃんは前にでるのだ。
後ろでふーちゃんは魔法のチャージ。ねっさんは分身を貯めて突撃する準備をする。
ほかのメンバーは三崎さんとバン君の万が一の護衛だ。
距離にして大体一キロ。歩いても10分くらいだが、俺たちが走ればもっと短い時間でたどり着く。
「いや、それにしても反応ないな」
「ワン」
「魔法はもっと遠くから使えるし、ここならコロちゃん。切って戻ってくるのに一秒もいらないでしょ」
「・・・ワフ?」
「ちょっとやってみるか。出来るまで攻撃効かないとかだったらふざけんなって話だけど!」
最近気がついた俺の『土魔法』の使い方なんだが。土を出して形状を作っていくのではない物だ。
形状の指定は複雑なのはできないが、元々あるものを操作して使うやりかた。
「根っこなら切れるだろ!」
トレントは基本は木だ。それがいくら巨大になろうとそれはかわらない。
だから、こいつにも絶対根っこが存在する。地面に埋まったままの根っこが。
地面の中にある根っこの探知で一つ。その根っこの周辺を一気に圧縮する魔法で二つ。
これを同時に複数個所で使用して根っこを何本か切る。
手ごたえ的には成功。間違いなく何かを切った。
「・・・うん?」
「・・・ワフ?」
「反応ないね」
「ワン」
「まだ出てくるね」
「ワン」
「・・・とりあえずみんな攻撃開始!!」
戦闘は熾烈を極めた。って感じではないが長引いた。
まったく動かず、ただ上に出てくるだけの巨大トレント。
その巨体からこっちの攻撃が全く効いていないように見える。
ふーちゃん以外の攻撃は小さすぎて効いてる印象がない。
それでもちびちび魔法で攻撃。燃やして切って爆発させて貫いて。
なんと驚きの一時間。
ようやく。その巨体が倒れたのだ!
「おおおおおおおおおお!!!!」
「クゥゥゥゥゥン!!」
「ぴぴぴぴ!!!」
「・・・ワフー」
「きき~」
「ちゅ~・・・」
「長い!!!」
すらっぴもこっちに呼んでしまったよ・・・。まぁ実際に反撃はなかったし。
トレントも何もしなかったわけではない。途中で全身が出てきたのだ。ただその時点でトレントの体は穴あきだったり根っこは切り刻まれてたり、葉は全部燃えてたりと大惨事。
ようするに、出てきた時点で既に弱っていたのだ。じゃあなんで一時間もかかったか。
単純にこいつの体力というかなんというか。それが多すぎるのだ。何もできないのはあくまでもこちらが抵抗の手段を先に潰したからで。
あ、トレントの攻撃手段はその枝を鞭みたいに振り回す攻撃と、葉っぱを飛ばしてくる攻撃ね。
「なんだろう・・・この疲労感は・・・」
時間かかるだけかかってどうなんだろうかこれ。完封は出来てるからレベル的には足りてるんだと思うけど。
なんかこう・・・スマートに倒したかったって感じ?。
「てか周りにドロップ品がすごいことに」
「・・・ワン!?」
「ちゅ!?」
「いや流石に持って帰らないからな!?」
持って帰れるかこんな量!
軽井沢にありそうな別荘何個分よってくらいあるぞ。
「恭輔くーん」
「あ、三崎さん。・・・しーちゃんを乗りこなしてる・・・だと・・・?」
「そこですか!?」
「あ、怪我無いですか?」
「先にそこ聞いてくださいよぉ・・・」
「なんかすいません」
「うー!」
「おおう。ニホリー。めっちゃ時間かかったぞー」
「う?」
「え、何それ」
ニホリ曰く、コアを壊せば一発だよ?
・・・・え、何それ。
なんの一時間だったの?
「うー!」
「あ、ああ。そ、そうだな・・・。宝箱取るか」(震え声
「え、何言われたんですか?」
「ナンデモナイヨー」
「絶対何か言われてますよね!?」
「ナンデモナイヨー」
おうち帰る!!!!