65話
「まぁわりと戦えてる?」
「そうだと思いますけど」
「「「キュウ」」」
「ちゅ」
「クゥ」
「君ら後方系でしょ・・・ねっさんは違うのか?」
「ちゅちゅ」
爆発系はポジションじゃない。
モグラ三兄弟の戦闘能力はまぁそこそこ。スキルなしで戦う分、自分たちの素の能力で戦うことになっているが、ここの敵相手なら十分なようだ。
ここで戦えても下で戦えるかとか、上のボスに勝てるかとかは別の話ですけど。
あと、モグちゃん達以外にも収穫があった。
「ちゃんと調整できてるな」
「うー!」
「今のが『強化』ですか」
「はい。いまでの大体1.3倍くらいですかね」
そう、ニホリが『強化』の調整に成功したのだ。今まではゼロか100かのどちらかしかできなかった。
全力で使わせるたびに魔力をなくなって人形に戻るとかを繰り返していると効率悪いし。なにより、これでまた戦力強化ができたわけだ。
「全力だと・・・今どうなんだろ」
「うー?」
「まぁ今はいいや。今日はモグズと三崎さんメインで」
「クル!」
「バン君は後ろねー」
「クルル!?」
いや、バン君は流石に・・・噛みつきとかは出来そうだけど、それ以外が・・・。そこまで速いわけでもないし。連携がとれるわけでもないでしょ?。
モグラーズは三匹で連携完璧だから戦えてるってところはあるし。じゃないと強化ありでもちょっと11層は早いよなぁ。
「スキルが何かあれば別だけど、ないでしょ?」
「クルル~」
「本当は使ってあげたいんですけど・・・」
「まぁなかなか手に入らないですからねぇ。俺も最近はさっぱり」
本当に手に入らない。最後って多分・・・『悪魔化』のスクロールか?
なんか時間が経つにつれ入手確率が下がってるような・・・
「レベルとか関係あるのかな・・・」
「レベルですか?」
「あー、推測ですけど。スキルスクロールの入手確率ってレベルが上がると下がるんじゃないかなぁって」
「なるほど。ありそうですね」
「う!」
「・・・違うそうです」
「・・・みたいですね」
一瞬で否定された・・・。いや、間違った推測なら言ってくれるのはありがたいし、いいんだけどさ。
「そういわれると聞きたくなってしまうわけで」
「恭輔さんはニホリさんに聞かないんですか?」
「え?聞きませんけど」
「どうしてです?」
「えーあー。なんていうか・・・」
「なんていうか?」
「個人的な趣味?」
「ええ・・・」
「いや、だって。聞かなくてもだれも困りませんし・・・」
「困らない・・・いやまぁ確かに?」
「確かに俺の仕事はダンジョンを調べることですけど、最初から聞いたってろくに活かせない情報ばっかりですし」
「確かに・・・」
「だったら、俺が一から調べてもいいかなって。こういうの好きですし。聞いちゃったらネタバレでしょ?」
「ああ、なるほど」
聞かなくても困らないって言うのはあれだ。先の事を知らなくても、現状俺が持って帰ったものの研究とかで手一杯っていう意味もある。
これ以上来たらパンクしかねない。
「そんなに大変なんですか」
「大変っていうか。何が使えて、何が使えないのかがわからないから、全部調べてる状態でして」
「それは・・・」
「それに俺も調子いいと短期間で一気にいろいろ発見しますし」
今だとしーちゃんの毛とかな。あれも通常の羊の毛とは違うらしい。丈夫なのは聞いた。
「魔石一つとっても、エネルギー関連と医療とかが盛り上がってますけど、他に使えないの決まったわけじゃないですし」
「だからあんなに大量に必要なんですね」
「ぶっちゃけ。ほとんど民間に流してない分、少なくていいはずなんですけどねぇ」
おかげで俺の仕事はへらない。ていうか、藤岡さんたちが来たのにたいして変わってない。なんでだ
「モンスターの素材なんて、それこそ一個一個見てたら終わらないですけどね」
「この角もですか?」
「それもですよ。それ、鉄より硬度は高いんですって」
「うそぉ!?」
「本当ですよ。他の国じゃ、軍事利用も考えてるとか」
まぁダンジョンである程度レベルを上げた人間なら、大抵の兵器を無視できるだろうが。
俺がその典型例。状況にもよるだろうが、俺は一人で何百人って戦力に勝てる。
「だから、できるならもっとダンジョンに注目してほしいんですけどね」
「そうすれば、人が増える」
「そして、俺たちだけじゃ手が回らない部分にも手が回るようになる」
俺も最初は反対してた。普通の人がダンジョンに潜ったって死ぬだけ。
俺はすごく運が良かっただけだ。たまたま、すらっぴが来てくれた。たまたま世界で初めてになった。
だが、状況は変わった。ダンジョンは、本当の意味で別世界だ。まだ見ぬ発見が多すぎる。
「もし、どこかで大発見があった時に、乗り遅れましたじゃすまないですから」
「でも、やっぱり危険じゃ」
「そりゃまぁ。しょうがないですよ」
そういう場所だしな。
「どっかの国じゃ、もう一般人でもダンジョンに行けるように法案を作ってるって話ですし」
「もうそこまで!?」
「実際、俺もうちに来ないかって誘われてますし」
「・・・え?」
「いやまったく、どっから漏れたんだか」
確かにテレビにはでたが、それでも俺と判断するは無理なはずだ。大体、俺は基本的に家のダンジョンしか潜らない。
外のは新宿か所沢、後は山だけ。ということは
「大変ですねぇ本当に」
「うちですか・・・」
「もう違いますけどね」
俺の顔を知ってるのなんて、自衛隊か政治家くらいなものだが、ただの政治家じゃ俺の動きを追えない。
そうなると、自衛隊、あるいはその関係者が犯人になる。
「実際、俺が会ったのも新宿の帰り道でしたし」
「大丈夫だったんですか?」
「まぁ大丈夫ですよ。その前から気がついてましたし」
「え!?」
まぁ実は会わないようにすることもできたんだ。しなかった理由は、単純な興味とちょっと知りたいことがあったから。
「知りたいこと?」
「相手が俺をどのように想定してきているか。相手の国はどれくらいの戦力なのか」
「・・・えっと」
「ああ、自分で言うのもあれですけど。俺って今世界で一番強いと思うんですよ」
「・・・間違いないかと」
「だから、そんな俺に会うのに、護衛の一人も付けないのかなって思って」
「ああ!!」
「そういうことです。まぁ、拍子抜けでしたけど」
事実、俺と会話した人間はそこそこのお偉いさんだったようで。何人か周囲に護衛の人間がいた。それもレベル持ち。おそらくスキルも持っているだろう。
ただ弱すぎる。あの時はまだ俺も20層を超えてなかった。それでも、俺相手を想定しているのにオーガ程度の探索者を集めてもしょうがない。
実際、話してた本人は終始気がつかなかったようだが、周りの人間はそれはもう怯えていた。
まぁしょうがない。相手が悪いとしか言いようがない。目の前に、どうやったって勝てない存在がこちらに注目していたらそうもなる
「あ、皆さんの時はちゃんと抑えてますからね」
「そんなこともできたんですね」
「コロちゃんの真似ですけどね」
狼人間が転びながらも逃げていく姿は哀れだったな・・・。
「あれが最高戦力とは思いませんけど、平均で高くてもあれを少し超えたくらいでしょうし」
「ちなみに私たちと比べると・・・」
「皆さんのほうが上ですけど、国として見ると日本はかなり探索者の人数も戦力も低いんじゃないですか?」
だって真面目に潜ってるのが俺と三崎さんたちだけ。あとは研究目的で浅い所を動いてる研究所メンバーくらいか?。
実際他の自衛隊員はだいぶダンジョンから離れてるみたいだし。仕方ないっちゃしかたないけどさ。
「自衛隊はあくまで防衛が仕事で、未知の探索は管轄外ですからねぇ」
「まぁそうですけど。不味いですかね?」
「さぁ、そっから先を考えるのは政治家の仕事ですし。親父には報告してあるんで近々なんかあるんじゃないですか?」
なかったらマジでダメな可能性もあるんだがな。
まぁその場合でも、うちの一家は、というより、研究所の人間は問題ない。
なんせ、どこの国でも好待遇だろうしな。愛国心がなければぶっちゃけどこに行くのも自由だ。
「恭輔君は・・・」
「いや、俺は今のところはよそに行く気はないですよ?」
「本当ですか?」
「そりゃあまぁ。今だって十分無茶苦茶な条件でも飲んでもらってますし。あ、でも」
「でも!?」
「いや、うちの子に何かするようなら出てってやりますね」
もし、誰かが俺の近くから離れるようなことが国のせいで起きたのなら
「その時はまぁ、大いに後悔してもらいますけど」
「・・・これ、伝えていいものなんでしょうか」
「むしろ伝えてくれた方がいいですね。その方が余計なこと考えないでしょう?」
俺の首輪嵌めたいならもっと前にやるべきだった。今の俺たちを物理的に止められる人間はいないのだから。
「ていうか、伝えてくれないかなって思って話してますし」
「え?」
「ただで来てくれるなんて初めから思ってませんよ。親父がどう考えてるのかは知りませんし興味もありませんけど」
「・・・恭輔君。頭いいんですね」
「まぁ俺、頭脳派を自称してますし」
最近は肉体派に偏ってるのが悩みかな・・・




