61話
一話だけです
「え、呼ばれた?」
「ああ、どうも。落ち着きがないらしくてな」
「ん~。落ち着きがない・・・みんながってこと?」
「そうみたいだ。だからお前が呼ばれてるんだが」
「動物園の話で俺が呼ばれるって何よ今更だけど・・・」
恭輔が動物が何を言ってるかわかる、ということを知っている人間はそこそこいる。
まぁ外国にもそういう人はいるし、すごいな。程度で終わっているのだが。
そんな関係で、時々動物園から呼ばれることがある。初めは親の付き添いで行ってただけだったが、最近は恭輔の能力を見込んで直接指名が来る。
本来の恭輔は高校生。平日に呼ばれないようにはなっていたのだが、学校をやめたのを聞いたのだろう。ここ最近、一気に呼ばれるようになった。
ダンジョン関係ないんだけどなぁとは恭輔の言葉だ。
「まぁ行くのはいいか。誰連れてこ」
「まぁ特に指定もないみたいだし。誰でもいいんじゃないか?」
「じゃあコロふーにほりんで」
「つなげるな」
流石にモンスター的見た目の子は連れていけないし。バトちゃんはすらっぴが残りなら残るだろうし、ピッちゃんは今日は部屋の片付け。ねっさんは母さんに何か頼まれ庭で何かやっている。
どっちにしろ、このメンバー以外連れて行けそうにないんだが。
「あ、しーちゃんは行けるか?」
「・・・でかくないか?」
「・・・そういや、何気に俺と同じくらいだし無理か」
いくら今回呼ばれたのがふーちゃんを引き取ったあの動物園だからと言って無理があるか。
普通の道を大きい羊が歩いているのは流石にマズイと思う。・・・今度確認するか。
「まぁ行くか。ほれ!。お出かけですぞー!」
「う!」
「ワン!」
「クゥ!」
「お久しぶりですね。恭輔君」
「お久しぶりです先生」
「うー?」
「この子が噂のニホリちゃんですか?」
「噂?」
「近所の皆さんが楽しそうに話してましたよ。可愛い、いい子だって」
「ああ、爺様がたか・・・」
園長先生も何気にそうとうなお年。親父も母さんも先生って呼ぶし。もしかして本当に先生やってたのかな。
すくなくとも、俺の先生ではある。俺に動物のあれこれを教えてくれた人の一人だ。
「それで、みんなが落ち着きがないって聞きましたけど」
「ええ、どうにも変でしてね。いらだっている様子はないのですが」
「うーん。全員だとなぁ・・・」
これが誰か一匹だけとか、夫婦と動物がーとかなら話は簡単にわかるんだが。みんなが変だと本当に何かあったのかもしれない。
「とりあえず、聞いてみますね」
「気を付けてください。特にあの子は・・・」
「・・・あの子?」
もしかして・・・
普通、動物園では檻の外から世話をすることの多い子だが、特別に俺だけ入れてもらった。
俺の目の前には一匹の子が座っている
「おう、やっぱお前か」
「・・・」
「ん?お前は普通だな。危ないって聞いてたけど」
「ガウ」
「俺だから?俺だと平気なのか?」
「ガウ」
「他の連中も大丈夫・・・。んん~?」
今話を聞いてたのはライオンだ。この動物園に一匹しかいない雄ライオン。立派な鬣はまさに百獣の王。
過去に俺を野生のイノシシから守ってくれたイケメンライオン。奥さんは二人。
まぁその話はいつかするか
「誰に聞くのが早い?」
「・・・?」
「え、わかんないってお前。どういうこと?」
「ガウ」
「しいて言うなら梅子?それって馬じゃん。なんでお前が一番荒れてたんだ?」
「ガウゥゥゥ・・・ガウ!」
「ん!?何かいる!?コロちゃん!」
「ワン!」
「足元?。だったら!」
地面の中にいる何かを土ごと持ち上げるイメージで一気に引き上げる。
そこそこ大きな塊が何個か浮かんできたが・・・。
「お前達が変だったのってこれか?」
「グゥゥ」
「微妙って。どういうことなんだか」
「う!」
「クゥ!」
「そうだな。とりあえず出してやるか」
土の中に閉じ込めた何かを外に出してやる。
小さな動物。サイズ的にはふーちゃんと同じくらいか?
茶色の毛皮。長い鼻。小さい目は暗いところに住む動物の特徴だ。爪はそこそこ長い。土を掘るように出来ている。
「モグラじゃん。久しぶりに見たかも」
「キュウ」
「ああ、ごめん。・・・いや、なんでここいたの?」
「・・・キュウ」
「穴掘ってたら来たってか。まぁそりゃ仕方ないのか?」
普通じゃないのは確かなんだが。それにしたってこんな浅いところにモグラ?。何があったらそんなことに・・・てかこの辺にいるの初めて知ったんだけど?
「先生は知ってた?」
「いえ、私も初めて知りました・・・」
先生も驚いた顔をしている。マジで知らなかった顔だな。
「お前らどこから来たの?」
「キュ」
「わかんねぇ。どっちから来た?」
右左で先に選択肢を示しておく。そうすれば選択肢が限られているので簡単に答えがわかる。
「キュ!」
「右・・・山の方か・・・ダンジョン?」
ダンジョンが出てきたせいでこっちに逃げてきたのか?。でもちょっと前の事だぞ。今更引っ越し?
考えづらいが・・・ありっちゃありか?
「動物園に来たのは・・・餌か」
「キュ~」
「ああ、みんながくれたのか。じゃあなんで変だったんだ?」
モグラの存在を知ってて。みんなが餌を分けてたのなら別におかしくなく要素ないでしょうし・・・。
なんでこいつはいらだってたの?
「ガウ」
「ああ、寝不足。・・・お前らはこれの近くは通らない方がいいぞ」
「キュウ。キュキュウ」
「ガウ」
「よし、とりあえずこれで解決か」
「グゥ」
「え、違うの?」
夜にモグラが騒いで寝れないって話じゃないんかい。
え、お前限定?他の子はみんな違う理由?
「・・・もう梅子のところ行くか」
「ハァァァフ」
「大欠伸やん。寝な寝な」
「・・・ガウ」
「お休みー」
モグラ三匹を抱えて外に出る。園長先生は外にいてもらったが、別に来てもらっても問題なかったかも。
「とりあえず、こいつはただの寝不足ですわ」
「みたいでしたね。ぐっすり眠ってますよ」
先生も苦笑いだ。まさかモグラのせいで寝不足とは。
「じゃあ次は梅子のところ行きますか」
「梅子・・・ですか?」
「ええ、あれの言ってたのが正しければ、梅子がいろいろ知ってると」
「そうですか・・・」
「どうかしたんですか?」
「いえ、実はですね。あの子、今妊娠しているんですよ」
「おめでたですか。相手は・・・太郎?」
「そうです。ただ、体調が思わしくなくて・・・」
「それは・・・それでか?」
ここの動物たちは、むっちゃ仲がいい。檻が遠いのもいるのにどこの奴が今どんな感じだか知っている。
普通、人間に飼われようが何しようが、大人の動物は他の動物ととても仲良くなることはあまりない。
小さいころから過ごしていれば別なんだが。ここにくる子は大体大人だ。もちろんここの出身の子もいるが。
そういうわけで、誰かの体調が悪いと皆心配する。
「まぁ、会ってみるか」
「お願いします」
「・・・ワフ」
「ん?どったの?」
「クゥ」
「・・・ん?」
「「「キュウ~」」」
「・・・あ。まぁいいじゃんか」
「「「キュウ!?」」」
モグラ抱えたままだった。
ちょっと土っぽいけどまぁいいや。魔法で土は払えるしね。