5話
「あら。コロちゃんがんばったのねぇ」
「ワン」
「ぴー!」
「きー!」
「二人も頑張ったの?なら今日はお祝いね」
「ワン!」「ぴー!」「きー!」
「うむ、流石大門家の一員だ」
「それでいいのか、我が家は」
ダンジョンから帰ってきたその日の夜。父さんたちはそろって帰ってきた。正直、またしばらく帰ってこないものだと思っていたが。
「よくかえって来れたな」
「ああ、まだほとんど何もわかってなくてな。俺が持って行った土のサンプルやらなにやらが一番の成果だったな」
「それなら猶更、帰ってこれなさそうだけど」
「俺たちの話を聞いて、どうも中に自衛隊が入ることになったみたいでな、その結果待ちになったんだ」
「ふーん」
よくわからんがそうなのか。自衛隊だと、姉ちゃんも行くのかな?親父の娘だし志願しそうではあるけど。
「そういや、結局うちのダンジョンの話はしたの?」
「いや、してないが」
「よくバレなかったな」
「どうしてだ?」
「いや、だって。土とか中の情報とか持ってったんだろ?どこで調べたか聞かれなかったのかよ」
「なんか、今度から危険かどうかも分からない場所に行くのはおやめくださいって言われたな」
「ああ、そういう・・・」
勝手にどっかのダンジョンに入ったのかと思われたのか・・・。他の人たちのもそんな風に思われてるのか。どんなことしでかしたらそんな印象が・・・。
「ご飯どうする?」
「時間も時間だし、出前でいいんじゃないか?」
「ピザがいいです」
「ぴ?」
「あら?すらっぴちゃんはピザ知らないのね。ならピザにしましょうかぁ」
「いえーい」「ぴー!」
「コロちゃんとバトちゃんは大きいお肉ね」
「ワン!」「きー!」
「・・・さすが美智子だ」
何に感心してるんだ親父は。基本的に我が家の食事事情は母さんが握っているので逆らうのは死を意味するんだぞ。それを理解すればこうもなるわ。
そもそもオオカミにコロちゃんなんて名前を付けるんだからモンスターだろうが何だろうが気にしないだろうよ。
「あ、そういえば追加で報告あったわ」
「何か新発見か?」
「コロちゃんがテイムできたのと、ボスっぽいネズミどもと戦った」
「詳しく」
『テイム』を試してみたらできてしまったこと。どうもモンスターと動物で違う判定になっていること。ダンジョン内に大きな扉があり、その扉がある空間に踏み込んだら戻れなくなり、ネズミが大量に出てきて倒したこと。
それらすべての説明をしたところ、親父の顔が何か考え込むような表情で固まった。
「ネズミか。テイムしてきた?」
「したらとっくに言ってるよ。やる暇もなくコロちゃんが無双しちゃってほとんど戦ってないし」
実質、何もしてないしな俺たち。コロちゃん一匹で勝てたよあれ。
「そもそもコロちゃんにスキルを上げられるのも初耳なんだが」
「言ってなかったけか。まぁいいんだよ。
とりあえず、ダンジョンを誰が探すにしろ、大量の敵に囲まれたり、退路をふさがれたりってあるみたいなんだわ」
「うーん。報告はするべきだな。無駄な犠牲を出すわけにはいかない」
「よろしく~」
電話をしにいったのだろう。リビングから出ていった。自室で連絡するのだろう。
「頼んで来たわよ~。あら?パパは?」
「ちょいと電話だと。俺の新報告の話で」
「あらあら、大変ねぇ」
「いや、母さんも大変になるんだと思うんだが・・・いいか。その時が来たらしっかりするだろうし」
母さんはスイッチの切り替えが激しいからな。家で絶対仕事しないし。
「コロちゃんは一応仕事の一環よ?」
「心を読まないでくださいお母さま」
てかコロちゃん仕事だったのか・・・。完全に飼い犬だと思ってたけど。
「それより、恭輔?」
「はい?」
「怪我はない?」
「ないよ、そもそもモンスターに触ってすらないし。むしろ今日はコロちゃんの心配してよ」
「それでもよ。私、お母さんだもん」
「・・・まぁ、怪我したらちゃんと言うわ」
「そうしてね~」
・・・一瞬真面目な顔したと思ったらこれだもんな。だからコロちゃんもモンスターのはずの二匹もすぐなつくのかもしれないけど。
「そういえばパパから聞いた?あのダンジョン?世界中で見つかってるそうよ」
「それは聞いてないな。結構ある感じ?」
「いま見つかっているのだけで、100個は超えてるそうよ。広い国だとまだ調べられてないみたいだけど」
「まぁ、土地が広いとどうしてもな。しょうがないでしょ」
「早く、いろいろ調べたいわ~。恭輔も怪我しない範囲でいろいろ見つけてね」
「俺がやるのか・・・ぶっちゃけそんなに本腰入れる気ないんだけど」
「え~、だって恭輔こういうの好きそうじゃない?」
「好きだけど、それはあくまで本で読むのが好きなので、自分がかかわるとなると別よ」
「そうなの?」
「そうなの」
今は特に危険もないし、コロちゃん強いから大丈夫だけど、危険そうならすぐやめるな。
「まぁ怪我しないのが一番だから」
「わかってるよ」
「コロちゃん達もね?」
「ワン」「ぴ!」「きき!」
「いい子ね~」
ま、気が向いてる間はちょくちょく頑張るかね。
そんな会話をしているうちに親父も電話が終わったようで、階段を下りる音が聞こえる。
「おかえりー」
「出かけてはないんだけどな。すぐに終わって楽だったのはあるけどな」
「また聞かれなかったのか」
「今回はあくまで予想ってことで伝えたからな。息子のやってたゲームみたいだってとこから伝えたから。
何があってもいいように注意はしてくれるだろう」
「あ、そうしたのね。別にいいんだけど。・・・姉ちゃんがいたら力ずくで解決しそうだけど」
「いや、流石に・・・」
「行けそうだな」
「そうだな」
「ピザ来たわよー」
「「早」」
「なんかすいてたみたーい」
「早い分には問題ないか。ほら頭から降りろ。動け、飯だ飯だ」
「きー」
「コロちゃんとバトちゃんはこっちね」
「すらっぴは・・・俺が取るから隣で」
「ワン」「ぴー」
「お話はあとでねー」