エピローグ
「・・・zzzz」
「・・・うー!」
「うぼ!?・・・おはようお姉ちゃん」
「う」
「あーい」
ある一軒家の中で、1人の10歳ほどの少女が、姉のチョップで目を覚ます。
寝ぼけていようだ。目を擦りながら、姉に返事を返す。
どうやら、既に朝食が出来ているようだ。
「ふわぁー・・・ロラちゃんもおはよ」
「」(zzz
「・・・私も寝ていい?」
「う」
「ごめんなさい」
抱えながら寝ている黒い大きな兎の様な生き物は、まだ寝ているようだ。
大きさな人間の子供くらいの大きさがあるが、全く重くないように、それを抱えながら部屋を姉と一緒に出る。
階段を下りる・・・いや、浮きながら危なくなく降りている。
2人ともだ。歩くことしていない。
リビングに入ると、多くの生き物がいた。
それぞれくつろいでいたり、朝食の準備を手伝ったりしている。
「おはよみんな~」
「うーうー」
2人がリビングに入ると、突如として騒がしくなる。
全員が、朝の挨拶をしているのだ。
姉も妹も、それらの言葉が分かっているかのように返事をする。
人間はいないはずなのだが。
「パパとママは?」
「う」
「あらまぁ。忙しいねぇ」
彼女の両親は、多忙なようで既に出かけているようだ。
元々、あまり家にいないことが多い親だが、彼女は寂しくない。
というより、家に居れば他の家族が常にいるのだ。そんなことを思う暇もない。
そんな彼女たちに近寄る、一際大人な雰囲気を纏った子犬がいる。
「相変わらずお寝坊ですね」
「おはーポヨネ~」
「はい。おはようございます・・・いつまで抱えてるんです?」
「ずっと」
「・・・邪魔だからご飯の時は降ろしなさい」
「はーい」
ポヨネと呼ばれた子犬は、普通に人間と同じ言葉を喋った。
だが、それが普通なのか誰も驚かない。
「今日のご飯何?」
「う!」
「オムレツ!!」
「うーうー」
「はーい!」
ニホリと呼ばれた少女は、そのままキッチンに向かって飛んでいった。
後の準備を手伝ってねと妹に言い含めて。
好きな物が献立にあったおかげで完全に目覚めた彼女は、ロラちゃんをゆっくりと降ろしてお皿を並べたり準備を手伝う。
「う」
「うん?2枚多くない?」
「うーうー」
「うん???」
ニホリは、お皿と箸を2セット分多く要求してきた。
何故かは分からないが、まぁそう言うならと特に聞き返すことなく言われた数をテーブルに置く。
ニホリは、その並べられたお皿に向かって、フライパンの上にあったオムレツを飛ばす。
見事にお皿の上に形を崩さずに落ちる。随分と手慣れているようだ。
その後も、他の献立も次々と用意が済んでいく。
テーブルの上に、4人分のセット。そしてその周囲に、様々な食べ物が置いてある。
家族たち・・・ペットたちのご飯だ。
肉や野菜、果物などがそれぞれのさらに大量に盛り付けられている。
庭に目を向けると、大量の藁が積んであり、その前には数匹と羊と馬が並んでいる。
あちらは既に食べ始めているようだ。
じゃあ私もさっそく・・・と、箸を持とうとしたところで、姉に止められる。
「う」
「ええ~?誰か来るの?」
「うー・・・うっう」
「え?5秒?」
姉が5秒待てと言う、まぁ大人しく待つかと待っていると、誰もいなかった はずの向かいの席に2人の男女が現れた。
「よしぴったり!」
「便利やなぁこれ」
「パパ!ママ!!」
「うー!」
「おう。ただいま。そしておはよう」
「おはようさん2人とも」
彼女たちの両親だ。
何もない空間から、突如として現れた。
これもいつも通りの光景のようだ。
どんな家族なのだろうか一体。
「ん?待っててくれたのか?」
「うん。お姉ちゃんが5秒待てって」
「あっはっは。それくらいやったらええのに」
「うーうー」
「だって~」
「相変わらずだな・・・おう、コロちゃんおはよう」
「ワン」
現れた男女の周囲に、家族が集まる。
いつもの光景だ。幸せが、形になったようだ。
その光景をお腹を空かせて眺めていると、何故だろう、親の姿がタブって見える。
「ほえ?」
「うん?」
「どしたん?」
「いや・・・」
タブって見えるそれは、何故か今の親より年上の様な感じに見える。
隣を見ると、姉も同じように見えるではないか。
それだけではなく、他の家族・・・コロちゃんと呼ばれた狼もだ。
これは、何なのだろうか。
「・・・うん?」
「何か見えるのか?」
「うん・・・何か、もっと大人のパパとママたちが・・・」
「・・・へぇ。そいつらはどう見える?」
「どうって?」
「そうだな・・・お前の思ったことをそのまま言ってくれ」
「えっと・・・何か、幸せそうに見える」
笑っているのだ。
今この状況が、とても愛おしい物のようだ。
恭輔も、フミも、ニホリも、コロちゃんも、その光景を、幸せそうにして見て・・いや、そこにいる。
不思議と、それを見ていると心が軽くなる。
自分も、すごく幸せな空間にいると実感できるのだ。
「そっか・・・なら、いいかな」
「知ってるの?」
「ああ。俺とフミの恩人だな」
「私会ったことある?」
「あるで。てか、ずっと会っとるで」
「え?」
「ふふ。いつか話したるわ」
「えぇ~!!」
「うーうー」
「だな。今はご飯だよ。今日は雪ちゃんとダンジョン行くんだろ?」
「あ、そうだった!!」
「だったら早く食べて準備しないとな」
「うん!!」
「じゃあみんなで・・・せーの」
「「「「いただきまーす」」」」
朝食も食べて、元気いっぱい。
急いで準備を整えて、今日一緒に来てくれる子を見に行く。
「今日は誰が来てくれるの?」
「クゥ!」
「きき!」
「ふーちゃんにバトちゃん!!・・・だけ?」
「「「キャン!!」」」
「お、お主らも来るのか~?モフモフ要員め―」
「・・・き?」
「クゥ~」
彼女のこれは血だろうかと、バトちゃんは呆れる。
だろうねぇと、雑に返事を返すふーちゃん。
そして、そんな彼女たちの様子を見ている、少し変わった子がいた。
その子は、植物が人間になったような姿をしていた。
鉢の中に入り、羨ましそうにみんなを・・・彼女を見ている。
自分も、あの中に入りたいと思っているが、どう声をかけていいか分からないのだ。
だが、彼女は親の才能を強く引き継いでいる。
故に、自分の家族にことならすぐに気が付くのだ。
「・・・あ、皆。ちょっと待ってて」
「??・・・クゥ」
「きき」
彼女は、その彼女に駆け寄る。
それを見て、逃げようとするが彼女は鉢に入っているため動けない。
すぐに、目の前まで来られてしまう。
「・・・アノ」
「・・・一緒に行こ?」
「ア・・・ウン!」
よっこらしょと、鉢事彼女を背負う。
この為に、鉢には最初から背負う為の固定具が付いている。
これで、準備完了だ。
「よし!みんなもいい?」
「クゥ!」
「きき!」
「「「キャンキャン!!」」」
「イイヨ!」
「よっしゃ!パパ!ママ!お姉ちゃん!行ってくるねー!!」
「そういうのは一回こっち来て言えよ」
「聞こえへんかったらどうするねん」
「うー」
「ワッ」
「いきなり出てこないで!みどりちゃん驚いちゃうでしょ!」
「あ、すまん」
また急に現れた親と姉に、みどりちゃんと言われた背負われた植物の少女は驚いてしまったようだ。
それにぷんすかという音が出そうな怒り方で、父親を怒る。
「もう!気を付けてよね!」
「あはは・・・いや、マジでなんでそうなったんだか」
「なに?」
「何でもないでーす」
「うーん?」
「あははは」
「うーうー」
ちょんちょんと、みどりの頬を突くニホリ。
彼女の記憶にある存在に似ているが、ここまでか弱くなかったなーとか思ったり思わなかったり。
フミも同じことを思ったのだろう、笑うだけだ。
「ぷんぷん。いいもん、もう行っちゃうもんね~」
「あー。悪かったって」
「忘れ物ないんか?」
「大丈夫!」
「う」
「あ」
お弁当の忘れ物はあったようだ。
さて、これで準備は完了だ。
「じゃあ。行ってきまーす!」
「「行ってらっしゃい」」
「うーうー!」
「・・・ふふ。大きなったなぁあの子も」
「10歳だからなぁ・・・そうか、あれから10年か」
「懐かしいなぁ・・・すぐに子供・・・美代を生めるとは思わんかったけどな」
「うれしかっただろ?」
「めっちゃくちゃ嬉しかったわ」
「うーうー」
「というか、俺的にはあの精霊があんなひ弱になってるとは思わなかったんだけど」
「ほんまやな。性格も変わっとるみたいやし」
「まぁそれは寄生する必要がなくなったことによる変化なんだろうけどな」
「余裕から来たちゅうことやな」
「生きるんだったら、何かから奪う必要ないしな」
「まぁええことやん。あの子の友達にもなってくれたしな」
「・・・俺的には、俺を数倍パワーアップさせたあの子の友達て不安なんだけど」
「それ恭輔が言うんか」
「う」
「俺は最初からこうだったわけじゃないからな?」
10年・・・俺は、あの厄災の花で起きた一連の出来事の間の時間を長いと思っていた。
それは、すごく正しい感覚だったと後になって分かった。
この10年間。娘が生まれて、家族が増えたりとあっという間だった。
気が付いたら、自分の娘は俺と同じ能力を持ってたし、何なら外であのみどりと名付けられた精霊を拾ってくるし。
親父達曰く、あれはまさしく俺達の娘だそうだ。
親父達は、今も変わらずダンジョンの研究所で働いている。
てか、ダンジョンに潜る人間が10年前と比べて大量に増えたから、新しい発見も大漁で大変なことになっているらしい。
実際、俺達もさっきまで手伝いに行ってたしな。
女神達も、あんまり変わらないかな?
今も変わらず、親子でダンジョンを管理している。
地球の管理方面を俺に任せたから、その分は楽になったみたいだけど。
あ、でも変わったことはあるか。
俺が紹介した男性・・・てか、俺の元同級生で友人。
それと付き合う様になった。そこまで行くのに、軽く数年はかかったけどな。
主に女神が日和ったせいだ。
一番変わったのは、姉ちゃんたちと雪ちゃんだろう。
姉ちゃんたちは、研究所の所属ではなくなり、一般冒険者という枠組みになっている。
稼ぎは頑張った分だけって話だから、その分は儲けているらしい。
あ、彼氏は出来たってさ。俺会ったことないけど。
一般の冒険者は、活躍した分世間に名が売れる。
元の見た目が良いから、テレビ出演とかも多くなっているようだ。
三崎さん何かは、世界的にも珍しい『テイム』スキル持ちってことで、動物番組にも多く出ている。
雪ちゃんは、元が病弱だったとは思えない程に元気だ。
どれくらい元気かと言うと、全世界でナンバーワン冒険者の呼び名が付くくらいに元気だ。
冒険者になる事僅か数か月でその称号を手に入れ、そのままずっとそのままだ。
その陰には、明らかにヨミというチートな存在がいるのは明白だが・・・まぁそれが気にならないくらいに本人が強くなった。
まともに人間だった時の俺と比べても、いい勝負が出来るんじゃないだろうか。
そして、俺とフミの間に出来た娘。美代。
あの子は今、雪ちゃんと共にダンジョンに潜っている。
本来なら年齢制限に引っかかり入れないはずなのだが、そこはまぁ俺達の子供ってことで。
例外で許可を得ることに成功した。
冒険者になった当初は、世間を騒がせた・・・当然悪い意味でな。
まだ子供なのに、ダンジョンという危険な場所に潜らせるのかってな。
そんな声を、美代は力づくで黙らせた。
そもそもあの子の実力は、10歳にして既に大人を・・・階層にして50層より下で戦えるほどなのだ。
下らない大人の声は、美代に届く前に黙ることになった。
その辺の冒険者では、話しにならないレベルの成果を短期間で上げたからな。
流石、俺達の娘と言う感じだ。
最後に俺達だが・・・あんまり変わらない。
ダンジョンに気が向いたら潜って、親父たちの手伝いをしてだな。
あ、でも引き取り手のいない動物達を片っ端から引き取ったり保護したりはしている。
家の他にも、ダンジョンが近くにある土地を買ってそこで育てているのだ。
実はダンジョンの中事改良したりもしているんだけど・・・これは別の話だな。
まぁ幸せな日々が続いていると言えると思う。
未来の俺達がくれた未来を、ちゃんと幸福に過ごせているだろう。
「・・・なぁ恭輔?」
「どうした?」
「今・・・幸せ?」
「・・・ああ。当然、幸せだ」
「ニホリも?」
「うー!」
「えへへ。そうやな・・・んじゃ報告なんやけど」
「うん?」
「う?」
「・・・もう1人、出来たわ」
「・・・ほぁ!?」
「う!?」
遠いどこかか、俺達の中か。
分からないけど・・・見てるか?
俺達は、ちゃんと幸せだぞ
『たっく。見てるっての』
『えへへ~次の子はうちらが名前決めたいなぁ』
『うー』
『・・・いやどうやって?』
『出来へんの?』
『う?』
『・・・はぁ。頑張りますよっと』
俺達も幸せだよ
この話でこの作品は簡潔になります。
投稿を始めて約一年での簡潔になりました。
今まで感想を送ってくださった皆様、評価をしていただいた皆様。
そして何より、今までこの作品を読んでくださった皆様には感謝の念でいっぱいです。
まことにありがとうございました!
また別の作品を投稿することもあるかと思われます。
その時はまたよろしくお願いいたします。




