537話
最後のエピローグにあたる物が2話分あるのですが、これは年明けの投稿になります。
その間はおまけが・・・いくつか投稿出来たらいいですなぁ・・・
白い世界で、女神と人型だけだいる。
女神が人型の腕を取り、状態の確認をしている。
「・・・うん。大丈夫なのだわ」
「心配無用」
「もう!・・・心配したのだわ」
「問題ない」
「大有りなのだわ。ヨミちゃんから聞いてるんだから」
「・・・」
「目を逸らさないの!」
状況が悪いと思ったのだろう、人型が女神から目を逸らす。
それを顔を手で押さえて無理やり自分に向けさせる。
体には、何の傷も残っていなかった。
彼女と共に戦ったあの少女・・・未来のニホリがそれだけ頑張っていたと言うことだろう。
戦いの様子を、女神は凡そ把握していた。
常に距離を取られまいとしてのインファイト。
1撃殴られたら殴り返す。そんな無謀な戦いをし続けいてことを、女神は知っていた。
最後に自分の力をニホリに託そうとする時など、ヨミが近くにいることを知っていなかったら、状況を考えずに飛び出ていたであろう。
「・・・でも、それだけ大事だったのね」
「・・・うん」
始めて、人型が女神の前で感情を見せる。
「・・・はじめての感情だった」
「そうね」
「うらやましかった」
「そうよね」
「ニホリは・・・私の友達?」
人型の中のには、未来の記憶がはっきりと残っている。
その記録に引っ張られるような形で、ニホリと友達になったなどとは思ってはいない。
だが、それでも不安なのだ。
自分のこの感情が、本当に自分の物なのかと。
未来の自分の記憶から影響を受けただけで、本物ではないのではないんじゃないかと。
その答えを、人型は女神に求めた。
自分を生み出し、文字通りすべてを知る己の母に。
だが、女神は期待した答えを返してはくれなかった。
「それは、私には分からないのだわ」
「・・・え?」
「ふふ。確かに、貴方の事は全部分かるわ・・・分かっていると思っていたわ」
「???」
女神も、似たような不安はあった。
人型が、未来の記憶を手に入れたとして、人型は、自分の事を親として見てくれるのかと。
彼女の中にいる、親と言う存在が、未来の存在になってしまったのではないかと。
だが、人型からしたらその不安は杞憂だ。
なにせ、記憶は手に入れたがほぼ記録の様な物。
それは、女神も知っていたはずだが・・・
「うん。知っているわ。でもね?不安にもなるの」
「何故?」
「何ででしょうね~・・・でも、多分そういうことなのだわ」
「・・・」
「案外、ひーちゃんの不安も大したことないと思うのだわ」
「・・・でも」
「それでも不安なら、直接聞きに行っちゃいましょう!」
「え」
「私も恭輔ちゃんと話たいことあるしね」
「お邪魔するのだわ~」
「あらいらっしゃい―」
「あ、美智子ちゃん久しぶりなのだわ!」
あれよあれよという間に家まで連れてこられてしまった。
まだ心の準備は出来ていない。
不安で落ち着かない。
それが動きに出ていたのだろう。
それを感知して、ニホリが玄関までやってきた。
「うー?・・・う!」
「あ・・・お邪魔します」
「う?・・・うっう」
「・・・うん」
「・・・うー?」
「ふふふ。後は任せたのだわ」
「???うー」
ニホリはよくわからないが、とりあえず任されたのは分かった。
ならば任せておけ、よくわからないけど。
そんなてきとうな思考を恭輔が察知して、何してんだと呆れているが別の話だ。
リビングに来ると、何故か誰もいない。
どうやら庭に他の全員がいるようだ。数が随分と増えているようだが・・・?
「うー?」
「あ・・・」
「・・・う!」
「あ、ハイ」
人型は、ニホリに自分の不安の内容を伝えることが怖かった。
自分は、彼女の事を友人と思っている。
だが、この感情が、自分の物で本物なのか、未来の自分のに影響されてのものだとか。
そして何より・・・ニホリは、自分の事をどう思っているのか。
恭輔は、ニホリは自分の事を友人と思っているとは聞いているが・・・直接聞いたことは、今まで1度もなかったのだ。
まごまごしていると、ニホリから強めに言われてしまった。
それに押されて、つい話してしまう。
自分が、本当にあなたと友達なのかという不安を・・・
それを聞いて、ニホリは
「・・・う~?」
「そんなこと・・・?」
呆れたように、なんだ~と言うではないか。
まさか、考えることもないと言うことなのだろうか・・・
人型は、自分の目に涙を浮かびそうになる感覚を始めて知った。
そして、そうなると慌てるのはニホリだ。
「う!?」
「な、なんでもない・・・」
「ううーうー!うーうー!!」
「・・・え?」
ニホリは、急いでちゃんと答える。
自分は、人型を友達だと思っている。
それに、自分は未来の存在は恭輔とコロちゃんしか会ったことがないのだ。
逆に、今のあなた以外の人型と言われても困ると。
「うーうー♪」
「・・・」
言うまでもないとは、そんなこととはそういうことなのだ。
そんな心配なんて、不要だとニホリは言いたかった。
ニホリにとって彼女は・・・大事な友達だと。
「ううーうー」
というか、そうでないとあんなにおもてなししないよ?と、ニホリは何てことないように言う。
確かに、毎回遊びに来るたびに色々なお菓子や料理を貰っていた。
ニホリは、頼まれたからやってたわけではない。
自分が、友達にそうしたいと思っていたからそうしたのだと。
「うーうー・・・う?」
「・・・うん」
あなたの気持ちも、本物とか偽物とかない。
今まで、自分と一緒に遊んだりしてたのは、間違いなくあなただ。
だから、悩むことなんてない。
「う?」
「・・・うん!」
未来のあなたも、私の事が大事だった。
未来の私も、あなたの事が大切だった。
大切な友達だった。
だから、体が壊れようとも、存在が過去に消えようとも戦ったのだ。
その感情は・・・決して疑うような物ではない。
「『ありがとう。私の大事な友達』」
「ッ!・・・うん・・・『うん!!』」
彼女達しかいないはずの部屋にある影が4つ。
その影は何故か・・・お互いに支えあう様に、手を繋いでそこにいた。
人の形を与えられた者は、生まれて初めて子供の様に声を出して泣いた。
「・・・お疲れ様。私の自慢の娘達」
「・・・貴方もね、女神ちゃん」
「ふふふ・・・さぁて、恭輔ちゃんはどこかしらねぇ~」
「今なら、庭で皆を洗っているはずよ~」
「あら~まぁ増えただろうしね」
「私もやりにいこ~」
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