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535話

「・・・終わった」

(ああ。終わりだ)


自分の中にわずかに残った、未来の自分。

ロラちゃん達がくれた物と、未来の俺が捧げたすべてで、ようやく終わった。


・・・俺の感覚だと、ほんのわずかな出来事だったと思う。

でも、そうじゃないのだろう。

長い間、悩んで苦しんだ結果なのだ・・・彼らにとっては。


そんな存在が・・・今、本当に消えようとしている。


(まぁ今の俺も所詮は残骸・・・わずかばかり残した未練みたいなもんだ)

「未練?」

(ああ。すまんが・・・もう少し付き合ってくれ)


















「・・・ッ!!」

「終わったんか!?恭輔。恭輔は!?」

「・・・勝った」

「え?」

「勝ったのだわぁぁぁぁ!!!」

「いや恭輔!恭輔は!!」

「無事ですけど?」

「ほんまかってえぇぇぇぇぇぇ!?!?」

「おすおっぶ」


あれ。タイミングミスったか?

フミを目印に瞬間移動したら。今まさに勝ちを女神が感じた瞬間だったようだ。


背後に出てきて、無事を自分で伝えたら驚きながら抱きしめられた。

嬉しさと驚きで行動と言葉がおかしなことに。

・・・胸おっきいよなやっぱり。


「ふはんはひっはいははひへ」

「きょうすけぇぇぇぇぇぇ」

「・・・おっふ」


駄目だこりゃ。すまん未来の俺。

お前が消えるまで離されないかも。


(いや困るんだが!?)

「ああっえうああっえう」

「あん!・・・きょ、恭輔ここではそういうんは・・・///」

「ちげぇよ」


ようやく離された。


「恭輔ちゃん・・・やったn「すまん女神後で!!」・・・(´・ω・`)


完全に話を遮っちゃったけど今は時間ないんだすまんな。


向かうのは、俺達の為に戦ってくれたみんなの所。

その中の・・・彼女の所だ。


(・・・変わってくれるか?)

「おう。ちゃんと話せよ」

(分かってるよ)

「・・・恭輔?」

『悪いな。今は俺だよ』

「・・・未来の方なん?」

『少しだけ、変わってもらってな・・・ニホリ』


倒れている人形。

服はボロボロで、体も損傷がひどい。

体力の譲渡と、今までの負担が表に出てきたのだろう。

代わりに、人型が大した傷を負っていないのは・・・彼女の意地か。


そんな人形に・・・ニホリに声を掛ける。


『ニホリ』

『・・・ウー』


掠れている。声を出すことも、殆ど出来ないようだ。

未来の俺が表に出ている時。

俺は体の中で視界だけ共有しているような状態だ。

何を考えているか、分かるわけではない。それに、自分の意思で体も動かない。

・・・だが、徐々に体のコントロールが戻ってきているのも分かる。

未来の俺が消えていっているのだ。俺への一体化が進んでいる。


(時間がないぞ)

『分かってるよ・・・なぁ、ニホリ』

『・・・ウ』


見ないでほしいと、ニホリは言う。

人型が俺に見せたくなかったのは、これの事だったのだろう。

このニホリを・・・狂って狂って。どうしようもなくなってしまったニホリを、俺に見せたくなかったのだ。

それは多分、ニホリの願いだ。


そんな自分を、家族に見られたくないって、人型に願ったのだろう。

それを守るために、わざわざ1人で戦ったのだ。


勝手に出て行って、心配かけて・・・こんなボロボロになって。

本当なら、親として叱らないといけないのだろう。

でも、今これだけは分かる。

俺は・・・そんなことを言いたいんじゃない。


『ありがとうな』

『ッ・・・ウーウー』

『んなことないよ。お前と人型が頑張ってくれたから、俺は間に合ったんだ』


人型とニホリが稼いだ時間は、俺達の予想を大きく超えていた。

それだけ、頑張っていたということだ。

激しい痛みの中でも、それは良く伝わってきた。

こんな風に、ボロボロになるまで・・・

そんなニホリに。自分の、自慢の娘を叱るなんてするわけがない。


『どんなふうになったって、ニホリはニホリだ。だからな』

『・・・』

『・・・俺の為に、ありがとうな』

『・・・ゥァ・・・ゥゥゥゥゥ』

『お前が泣くところ・・・久しぶりに見るなぁ』


ニホリの体を抱きしめる。

小さな体で、ここまでよく頑張った。

幼いその心に孤独を抱えて、今までよく踏ん張った。

友を亡くしてでも、俺の為に・・・歩いてくれて・・・


『ありがとうなぁ・・・ニホリ・・・』

『うぁぁ・・・うぁぁぁぁぁぁ!!!』


ようやく、帰って来たな。


ニホリは、すぐに泣き止んだ。

そのまま俺から・・・いや、『恭輔』から離れて、今度はニホリの元に。


『う!』

「・・・うー?」


こっちのニホリはニホリでボロボロだなおい。

まぁダメージはないみたいだけど・・・めっちゃ疲れてるな。

コロちゃんに全エネルギー持ってかれたみたいだし。力なく地面で寝転んでいる。

そんなニホリに、『ニホリ』が話かける。


『うーうー?』

「う?うー」

『・・・う!』

(・・・何言ってるんだ?)

『力を上げなくてごめんねだってさ』

(はい?)


ニホリも『ニホリ』も、お互い笑顔だ。

『ニホリ』は、ようやく夢が叶ったから。

ニホリは、そんな『ニホリ』を祝福するように笑っている。


(・・・『ニホリ』の、最後の願い?)

『・・・俺の中に、フミがいるのは知ってるな?』

(暴走を止める為に・・・だったな)

『ああ。そして、その俺も、今はお前の中にいる・・・だから』

(・・・ああ、そういうことね)

『また耐えてもらうことになるが・・・』

(構わん構わん。ドンとこい)


そうか、そうすることにしたんだな。

未来の俺は、ニホリを置いていくと思っていた。

今の時代の俺に託して、新しい家族と共にって。


でも、それは辞めたらしい。

やっぱり、家族とは一緒にいたいしな。


『ニホリ』が、最後に俺の元にやってくる。

既に、俺と『俺』は入れ替わっている。


『うーう』

「遠慮すんなって。お前くらいなら、軽い軽い」

『・・・う』

「そら。俺だからな」


恭輔は、いつまで経っても恭輔・・・か・・・ふふ。


『ニホリ』が、俺に手を伸ばす。

すると、少しずつ、ニホリの魔力が俺の中に溶けていく。

『ニホリ』が、完全に俺と・・・『俺』と1つとなっているのだ。


痛みはない。当然だな。

なんせ、自分の娘だ・・・目に入れても痛いわけない。

それが、自分の為にずっと頑張ってくれた娘なら猶更だ。


最後に、ニホリはフミの方を向いて一言。


『・・・う!』

「なぁ///!?!?」

『うー』

「ははは・・・頑張るわ」


そうして、人形は動かなくなった。

完全に魔力が消えた・・・俺の中に、ニホリと俺がいる。

そして、俺は1つ思いもよらない物を残してくれた。


(ああ、そうだ。ロラちゃん達だけど・・・)

「は?・・・え?これマジか」

(はっはっは。最後に贈り物ってな・・・じゃあ・・・俺も行くよ)

「・・・おう。皆で仲良くな」


テイムの繋がりがあるから、コロちゃん達とも会えるだろうからな。

まぁ寂しくはないだろう。結局全員集合だしな。


(本当にな・・・おい)

「あん?」

(ちゃんと。幸せになれよ)

「・・・おう」


そうして、未来から来た彼らは全員消えていった。

今の俺達に、すべてを託して。


「・・・よし!帰るぞ!!」

「いや・・・恭輔?」

「ん?どうした?まだ何かあったっけか」

「いや・・・皆動けへんから、うちらが運ばんと」

「・・・あー」


しまらね~


























『・・・う?』

『ニホリ?・・・ってここは』

『なんやぁ?ずいぶん遅かったやん』

『・・・へ?』

『うー!!』

『えへへ・・・ずっと見とったよ。頑張ってたやん2人とも』

『・・・あはははは!そっか。俺頑張ってたよな!』

『うーうー!』

『せやでぇ?・・・これから、ずっと一緒やな!』

『そうだな・・・なぁフミ』

『うー』

『ん?どしたん?』

『・・・』

『・・・』









ただいま、フミ

うー!

・・・えへへ。お帰り!

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― 新着の感想 ―
[一言] 消えるニホリの最後の台詞はきっと、お幸せに、って感じのなんだろうな、もっと生々しい感じだったかもしれないけど、フミの反応から言って…
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