525話
ついにここまで来ました
12月31日。
本来なら、いつも通りに年越しを迎える所だ。
家でのんびりしながら、テレビ見たりコロちゃんと遊んだりしてぐーたら・・・するために頑張るのだ。
厄災の花に、動きがあった。
海上から飛び出した光の花の様な部分が、徐々に開くように動いているらしい。
それに同調しているかのように、魔力が大きく動いている。
花の動きを親父から聞いた時、すぐに女神が迎えに来てくれた。
俺達と、一番近い陸地に連れて行ってくれるそうだ。
女神に瞬間移動で連れられたそこは港だった。
「・・・マジか」
「・・・こら。確かにシャレにならんわ」
花のいる場所から、今いる港までかなりの距離がある。
そのはずなのに、今目の前にいる感覚に襲われる。
「無理もないのだわ。あれが星中に根を張っているのなら、ある意味でそれは正しいのだし」
「ここにいるのにここにいないってか」
「マジでバカみたいな魔力やな。よくもまぁこんだけ蓄えたわ」
「無限に膨らむ風船のような物なの。それこそ星が枯れるまで吸収を続けるでしょうね」
「それが。ようやく本領発揮と?」
「ええ。恐らく後数十分であの花はなくなるわ」
「なくなる?」
「揺り籠から赤ちゃんがいなくなったら、もう必要ないでしょ?」
「ああ。そらそうだわな」
後数十分・・・それまでは待機か。
そう思った時に、彼は現れた。
他の皆はどこにいるんだ?
『・・・来たか』
「ん。まだ時間あるみたいだけどな」
『・・・いや、今から仕掛けるぞ』
「うん?今はまだ倒せないんじゃ」
『逆だ。今出かかってるからこそやるんだ』
「・・・そうね。確かに今がチャンスかも」
「大丈夫なのか?」
『ああ』
扉が完全に閉じている状態では、攻撃しても閉じこもってしまい意味がない。
中から別の入り口に向かって逃げ出す可能性すらある。
それを回避するために、わざわざ相手が完全に成長しきるまで待っていたはずだ。
だが、未来の俺と女神曰く、今はその扉が開いている状態らしい。
「それなら。私が逃がさないくらいは出来るのだわ」
「だったら」
『ああ。始めるぞ・・・まぁ準備が必要なんだが』
「何をするんだ?」
『・・・その前に、時間を貰うぞ』
「??ああ・・・」
未来の俺は、現在のハクコちゃんとフィニちゃんの所に向かう。
・・・待て、未来のハクコちゃんとフィニちゃんはなんでいないんだ?その理由は?
理由は、すぐに分かった。
未来の俺が、懐から取り出したのは白い珠と赤い珠。
フミ達は、分からないだろう。
だけど、俺達はそれを見た瞬間に、それが何なのかわかってしまった。
あれは・・・あの子達だ
「・・・グゥ」
「チュン・・・」
『ああ・・・あいつらが選んだ道だ・・・』
「・・・全員か」
『ああ。気が付いたら、皆な』
「そっか」
そういうことなのだろう。
皆がいまこの場におらず、未来の俺は珠を取り出した。
ここにいない理由は・・・そういうことなのだろう。
『これにお前らが触れれば、その時点でお前らの物だ』
「ガウ」
「チュン」
『先にお前らだ。後・・・なぁ』
「なんだ?」
『あいつらから貰った宝玉はあるか?』
「う!」
『ニホリが持ってたのか・・・ありがとうな。おい人型』
「・・・何」
『これはお前のだ』
「私?」
「俺のじゃないのか?」
『元の予定ではお前のだったけどな・・・必要なくなったからな』
「は?どういう」
『うわぁー本当にこうなるんだね~』
『はぁ・・・全くもって。無駄にならんだけマシかのぉ』
「お前ら!」
龍と亀が、海中から現れた。
2体とも、口調こそ変わらないが、今まで以上に真剣なまなざしをしている。
『おう。久しぶりだな』
『そうでもないわい・・・お主は、満足そうじゃな』
『まぁな。今まで生きてきた甲斐はあったと思ってるよ』
『・・・僕は、君のそういうところは嫌いだったよ』
『ハッハ!悪いな・・・すまんが頼むぞ』
『任せておけい』
「おい。分かるように説明を!」
「恭輔ちゃん・・・ダメよ」
「・・・死ぬ気かあいつら」
『流石にそこまではさせないよ。てか、ハクコちゃん達もいるしな』
「ガウ!」
「チュン!」
ハクコちゃんとフィニちゃんが、それぞれの珠に触れる。
その瞬間、彼らの神力があふれ出た。
テイムの繋がりを通じて、彼らの思いも流れてくる。
「こ、これは・・・」
「・・・ガゥゥゥ」
「・・・」
変化は一瞬で終わった。
一瞬だが、長い変化だった。
今ここに、2体の神の獣が生れた。
『・・・ガァァァ!!!』
『キュェェェェェェ!!』
天に向かって吼える白き風虎と赤き炎鳥。
そこに、蒼き水流と黄褐色の地亀が並ぶ。
『では・・・参るぞ!!』
次の瞬間。彼らの姿は消えていた。
「・・・行ったのか」
『時間稼ぎだ。無理はさせないように言い含めてある』
「そうか・・・」
『次だ・・・どうする?』
「・・・行く」
「ひーちゃん・・・」
「・・・ごめんなさい・・・行ってきます」
「!!・・・ええ。絶対に帰って来るのよ!」
次に、人型がいなくなった。
渡された宝玉を手に持ち、覚悟を決めた表情で向かっていった。
『次だ・・・皆』
「ワン」
「ぴ」
「きき」
「ちゅ」
「くぅ」
「るる」
「めぇ」
「!!」
精霊を除いた俺の家族たち。
彼らが、今ここにいる。
俺達の家族が、そこにいる。
『そうか。お前らはもう準備出来てたか』
「ワッフ」
『はは。そっか・・・頼んだぞ』
「ワン」
「コロちゃん」
「ワフ?」
「・・・約束1つ」
「・・・」
「全員で帰るぞ」
「ワン!!」
最後に、コロちゃん達が向かっていった。
『最初に神獣達。次に人型。最後にコロちゃん達だ』
「ニホリは、ここでサポートか?」
『ああ。多分戦場じゃ集中できないだろうからな。女神』
「分かっているのだわ。繋げるのと送るのは私の分野だもの・・・でも」
『わかってる。それでも時間を稼げて長くても1時間程度だろうな』
「・・・そこまでか」
『完全体じゃないとは言え、格が違うわな。星一つを食える怪物だぞ』
「・・・なぁ」
「『うん?』」
「ハモるんかい・・・いや、うちもやっぱり」
『ダメだ』
「けど・・・」
『お前が出たら、未来と変わらなくなっちまう』
「フミがいない状態で勝つ・・・それが条件か」
『最低条件だよ。それに加えて暴走も出来ない・・・しないための俺だけどな』
「まぁそういうことだな」
「・・・ハァ。ままならんなぁ」
この場で最も戦いの場に出たがっているのは、恐らくはフミだ。
守られているだけでは気が済まないと言うのもあるだろう。
だがそれ以上に、自分の為に皆が危険な目にあうのが嫌なのだろう。
それでも、我慢してもらわないといけない。
もしできなければ、すべてが水の泡だ。
「最後だ・・・俺は何をすればいい」
『・・・分かってるだろうが、今から俺との融合を始める』
「それは分かってる。だけど、何に時間が掛かるんだ?」
未来の自分との融合に、時間が掛からないのは分かっている。
ハクコちゃん達もそうだったし、コロちゃん達に至っては既に終わっていた。
だから、俺の時だけ違うの言うのは・・・おかしな話だ。
『・・・俺の場合はというか、今の俺の状態が問題だ』
「お前の?」
『・・・俺の体がボロボロなのは知ってるな?』
「あ。ああ・・・ロラちゃんが言ってたな・・・うん?ロラちゃんどこだ」
いつの間にいなくなったんだ?家の時は近くにいたのに・・・
だが、ロラちゃんを探す間もなく話が進む。
『まぁ端的に言うと・・・内部からエネルギーが漏れ出そうな状態なんだ。今の俺は』
「・・・何を取りこんだ」
『察しが良くて何よりだ』
「・・・待って、まさか貴方」
『ハハ・・・まぁ・・・そういうことだ!!』
「なっ!?」
「恭輔!!」
未来の俺が突き出した腕
それは、突如として俺の胸に突き刺さった。
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